百貨店のブランドラインナップが今後ショッピングモールと同質化しそうな気配
2020年10月15日 トレンド 0
先日、ファッション専門学校生がこんな質問をしてきた。
「もうすぐオープンする心斎橋パルコにどうしてABCマートが入っているんですか?商店街の歩いてすぐの場所にも大きな路面店があるのに」
とのことで、確かに疑問ではある。
3年くらい前の某コンサルなら「ドミナント戦略だ!」の一言で片づけることだろう。(笑)
理由としては
1、どんどん出店できる資金力のある企業が限られてきている。ファーストリテイリングやABCマートはその代表で、だからどこのファッションビル、ショッピングセンターにも入店している。必然的に商業施設の同質化がさらに進む。
2、ワールドやオンワード、三陽商会、TSIなどの百貨店・ファッションビルアパレルが経営難でどんどん退店していてスペースが埋まらないから。
という2点が最大の理由だといえる。
百貨店やファッションビルのスペースが埋まらないというのは、この記事にも象徴されている。
ワークマン、紳士服量販店を頼る百貨店の異変
大量閉店が相次ぐアパレルにはもはや頼れない
https://toyokeizai.net/articles/-/380899
要するに百貨店が、紳士服量販店(青山、アオキ、はるやま、コナカなど)やワークマンにまで出店交渉をしているという内容の記事である。
この夏、ある紳士服量販店のもとに、地方百貨店から急な依頼が舞い込んだ。5月に経営破綻したレナウンなどが紳士服売り場から撤退、その後に入居するブランドが決まらないのだという。
同じく「コロナ以降、百貨店から出店オファーが来るようになった」と明かすのは、ワークマンの土屋哲雄専務。
とのことである。
まあ、百貨店・ファッションビル向け大手アパレルが3年くらい前から大量閉店を続けているので、大都市旗艦店はまだしも、地方郊外百貨店や小型支店はいよいよフロアスペースが埋まらなくなってきているというのは、事実である。
大丸は10年くらい前から柔軟に、百貨店らしからぬショップを導入している。
大丸梅田店にはユニクロ(現在閉店済)、ポケモンセンター、トミカショップなんかが出店していたし、はるやま、レイジブルーの店もあった。この傾向は心斎橋大丸も同様で、ポケモンセンターやジャンプショップなどが出店している。
他の百貨店は大丸とは一線を画していたが、そうも言っていられなくなってきた。小型店や地方店は洋服にこだわっている限りにおいては、フロアスペースが埋まらなくなってきている。
結局、この記事によるとワークマンは出店しなかったのだが、フランチャイズ店比率が96%以上もあるワークマンが百貨店に出店することは構造上不可能である。
依頼した百貨店はこれを知らなったのだろうか。知らないとすると随分と勉強不足な話である。
ワークマンはともかくとして、今後は大都市旗艦百貨店以外は、どんどんとこういう紳士服量販店やユニクロ、無印良品、ABCマートなどが出店し、ショッピングセンターとあまり見分けがつかなくなっていくのだろうと思う。
地方郊外だけでなく、そこそこの都心店だってこれまでは考えられなかったような出店が始まっている。
例えばこれだ。
名古屋名鉄百貨店にゲオが展開するオフプライスストア「ラック・ラック」が11月20日にオープンする。JR名古屋高島屋に押されて目立たないとはいえ、名古屋のど真ん中にある都心店にオフプライスストアが常設オープンするというのは、1年前までなら考えられなかった。
また、オフプライスというかバッタ屋も都心百貨店でポップアップ出店をしている。
以前にもご紹介したが、ショーイチが9月に小田急百貨店新宿店に期間限定のポップアップストアを出店した。
業界初、百貨店での期間限定オフプライスストア出店
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000060.000035187.html
㈱shoichiが商品提供を行い、有名アパレルブランドのオフプライスストアを期間限定で小田急百貨店新宿店に出店します。
■オフプライスストア詳細
出店期間:2020年9月1日~9月29日
出店場所:〒160-8001 東京都新宿区1-1-3 小田急百貨店新宿店 本館6階婦人服売場
とのことで、催事場ではなく6階婦人服売り場でのポップアップなのだから、驚く。さらにいうと、仮にも新宿という都心店でそれが行われたのも異例だといえる。
今後、百貨店でも新宿伊勢丹や梅田阪急、難波高島屋などの超大型旗艦店を除くと、都心店でも低価格チェーン店やオフプライスストア、バッタ屋などの出店が相次ぐと考えられる。もちろん都心ファッションビルは言わずもがなである。そしてイオンモールなどの郊外型ショッピングセンターと限りなく同質化するのではないかと考えられる。
衣料品、ファッションを最上のコンテンツと規定し(勝手に)、それを主体として百貨店という企業を存続させたいと考えるなら、これしか手が無い。特に地方支店や郊外店などの店舗網をある程度維持しようとすればこうするほかない。
しかし、その一方で、これによって、超大型旗艦店も含めて百貨店のブランド価値毀損はさらに進む。何度も書いているように、現在は、中元や歳暮、贈答品などは「中身は同じでも百貨店の包装紙でないと」と考える人は当方も含めて少なくないが、ショッピングセンターと同質化した暁には、その百貨店へのブランド価値も恐ろしく摩耗していることになるだろうと考えられる。
危険度は高いが、恐らく、今後百貨店はショッピングセンターとの同化に突き進むのではないかと見ている。