イトキンの新リメイクブランドの行く末に注目したい
2020年10月7日 デザイナー 0
今回は予定を変更してこのニュースをご紹介したい。
また「サステかよ~」とちょっとウンザリする気持ちはあるが、注目したい点は2つだ。サステかどうかは個人的にはどうでもいい。
1、久しぶりのイトキンの話題
2、不良在庫を使ったリメイクブランド
という2点である。
イトキンが、インテグラルに買収されたのが2016年のことだから、それから早4年、もうすぐ5年が経過する。しかし、この4年間イトキンのニュースはほとんどメディアに報じられなかった。
イトキン側がメディアにニュースを提供しなかったという理由もあるのかもしれないが、逆にイトキンにも目立ったものがなく、メディア側も報道する理由がなかったともいえる。
当方はメディア側に立って仕事をすることが多いが、注目しなくてはならないような取り組みやブランドはまったくなかったと感じる。
また、以前にも何度も書いているが、アパレル業界というのは他社の噂話が死ぬほど好きな業界なので、すごくイイ話やすごく悪い話があれば、絶対に噂に上る。
しかし、この4年間、よくも悪くもイトキンの噂はほとんど聞いたことがなかった。
それほどにニュース性に乏しく、業界からも注目されていなかったということになる。
そして、身売りから大幅にリストラ・ブランド廃止・店舗撤退をしたため、イトキンの存在感は消費者にもあまり無くなってしまっていた。
そんなイトキンの久しぶりの話題であり、古い人間にとっては直接に関係はなくとも何となく嬉しさがある。
知人にはイトキンのOBが何人かいるので。
2点目である。
倉庫に眠る在庫商品を新しいデザインで生まれ変わらせるサステナブルマインドのブランド。イトキンオンラインストアに「リマイン」のブランドページを開設し、10月13日から販売を予定する。
20年1月期の売上高約447億円に対して最終消化率は85%超と、かつてに比べて20~30ポイント向上している。しかし、まだ改善の余地がある。
とある。
リメイクブランドという手法だが、これまで全くなかったわけではない。
だが、リメイクブランドは売り上げ規模を拡大しにくかったという経緯がある。
別に消費者の意識が低かったわけではない。要するに経済合理性が無い場合が多かったためである。
1、リメイクをすると工賃が必要となるため、そのコストを吸収しようとすると店頭販売価格が高くなる
2、デザインが奇抜になりやすく、デイリーユースにはしづらい。かといって晴れ着でもない
という2点がその原因だと個人的には見ている。
工賃コストが乗っかって店頭販売価格が高くならざるを得ないというのは、以前にも言及した「染め直しブランド」と同様である。
そして、そんなリメイク品に新品や最新商品よりも高額な価格を払いたいという珍しい消費者が一体幾人いるのかという話である。
だからよほどの少数の物好きにしか売れない。
次にデザインの問題である。これまであったリメイク品の多くは、つぎはぎやパッチワークや、大胆な色使いや柄行きのプリントを施したものだった。
だが、これではデザイン的に奇抜すぎて、これまた少数の愛好家やファッション変態みたいな人にしか買ってもらえない。
常人のデイリーユースには使いづらい。かといって、晴れ着としても利用できない。
そうなると、やはりなかなか買ってはもらえない。
この2点がこれまで、リメイクブランドがあまり成長できなかった理由だと思っている。もっとも、年商規模3億円くらいで仲間と3人楽しくやれればいい、というスタンスのリメイクブランドも多いだろうから、それはそれで何の問題もない。
問題は、その程度の規模では大手アパレルがわざわざ参入する意義が無かったという点である。
だから、個人的には、イトキンという中堅(売り上げ規模は縮小して中堅になった)企業が、これまで鬼門とされてきたリメイクブランドを乗せることができるのか、という点に大いに注目したい。
先に引用したように、現在の売り上げ規模は447億円である。買収前の15年1月期には952億円の売上高があったから、この5年で約半減したといえる。
企業規模が大きいことが良いこととは限らないから、黒字経営なら何の問題もないが、往年のイトキンを知っているジジイからすると、盛者必衰としか言いようがない。
身売り直後にイトキンOBから聞いた話によると、イトキンの倉庫には大量の不良在庫品があり、シングルハンガーラックに全部掛けたら、地下鉄一駅分くらいの長さになったとのことだった。
この時の大量の不良在庫はもう流石に処分しているのだろうと思うが、もし残っているなら、この新ブランドは「材料」をほぼ無料で手に入れることができる。
それはさておき。
ブランドの陣容だが、
55人ものパタンナーを擁する技術系子会社ジャスモードを管轄する内藤秀司EC事業部事業部長の下、研究開発を開始。この技術職のサポートを受けながら、社内公募で選ばれた30代の佐藤美保デザイナーと、入社2年目のウェブ担当者ら若手を中心にコンパクトなチームでプロジェクトを運営する。
とのことで、これもなかなか良い陣容ではないかと思う。特に55人ものパタンナーを抱える技術系子会社をいまだに維持しているところも良いことだし、それを全面に使うというのは、近年のODM丸投げブランドや韓国・中国の市場の買い付け商品をD2Cだと強弁するようなブランドよりは、よほどにまともな考え方である。
30代のデザイナーの技量は交流がないのでさっぱりわからないが、入社2年目の若手にWEB関係を担当させるというのも良い取り組みだと思う。
最近のアパレル不況で、老舗大手はもとより、若者にそれなりの人気がある有名企業でさえ、名称ロンダリングのつまらない「ピントのボケた安全パイ取り組み」しかできなくなっていることを考えると、イトキンのチャレンジ精神は評価したいし、これを記事にしたライターの松下久美さんも評価したいと思う。
そんなイトキンのミッシェルクランの商品をどうぞ~