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南充浩 オフィシャルブログ

生地の展示会をオンラインだけで開催する意味あるの?

2020年9月2日 企業研究 0

繊維・アパレル業界には「展示会」と呼ばれるイベントがある。

消費者に直接販売する形態なら、展示会を開催する必要はほとんどないが、BtoBの形態なら展示会の必要性は高い。

次シーズンの新商品を展示して、そこに仕入れ業者を多数呼んで、新商品をお披露目しつつ商談を行う。

アパレルなら当然、洋服を展示するわけだが、例えば生地問屋、生地メーカー、糸問屋などは生地や糸を展示するわけである。

それらをアパレルやOEM屋が見て受注を行う。

 

しかし、今春開催の展示会は新型コロナの影響で軒並み中止となった。

今秋の展示会は中止のところもあれば、開催するところもある。

早速9月の展示会の案内がいくつか手元にある。

 

展示会が中止になったため、オンラインで開催するというケースもちらほらと見かけるようになった。

ファッションショーもオンラインで行われることも増えた。

 

初のオンライン版パリメンズコレクション公式スケジュール発表、日本からはヨウジヤマモトなど11ブランド参加

https://www.fashionsnap.com/article/2020-07-01/21ss-pfw-mens-schedule/

 

7月9日から13日までオンラインで行われる2021年春夏シーズンのパリメンズファッションウィークの詳細が発表された。新型コロナウイルスの感染拡大による影響から今シーズンはデジタルプラットフォームで初めて展開し、開催中止となっていた2020-21年秋冬オートクチュールウィークもオンラインで同時期に開催する。

 

という具合である。

で、生地に関しても、オンライン展示会なるものがいくつか開催されているのだが、正直疑問しか感じない。

洋服の展示会、ファッションショーはオンライン化してもギリギリ成立すると思う。もちろん、洋服を構成している生地が固いのか柔らかいのか、分厚いのか薄いのかはオンラインではわからない。

どれほどオンラインの技術が進歩しても「触感」だけは実現できない。

しかし、洋服というのは重要な要素は生地の触感だけではない。形、シルエット、サイズ感なども重要なので、生地の触感は分からないが、洋服の形を見て仕入れ先は判断できる部分もある。

特にファッションショーなんていうのは、モデルが着て歩いて、それに対する評価というものができる。

 

しかし、生地展示会はそうはいかないと思う。

何せ、生地は洋服ではない。生地は触感がすべてである。

そして基本的に生地の展示会というのは、四角く切られた生地が吊るされているだけである。これをオンラインで流したところで見ている人には何も伝わらないだろう。

 

帝人フロンティア、2021年春夏展示会
初のバーチャル展を開催

http://www.apparel-mag.com/sbm/article/exhibition/1922

バーチャル展示会の開催に合わせ、新素材も発表した。毎回、展示会で新しい機能素材を提案している同社。今回は、2020年秋冬向けから重点的に強化している良き定番素材「SOLOTEX」(ソロテックス)の新しいバージョンを開発・提案する。

 

とのことだが、甚だ効果は疑問である。

オンラインのみで生地を注文する業者がどれだけいるのだろうか。

 

もちろん、新型コロナを警戒し、実際の展示会を開催しにくいからオンラインで開催しようというのは理解できる。だが、オンラインで画面越しに生地を見て、どれほどの人が仕入れ意欲をかきたてられるのだろうか。

これに対して、ある生地業者はオンライン展示会ではなく、生地を貼り付けた見本帳を何冊も作成し、上得意先すべてに送付したという。

結果は上々でこの方式に自信を深めているようだった。

 

生地ではないが、あるアパレルも展示会に来られない上得意先へ、製品サンプルを送付して対応しているという。

 

繊維・アパレル業界は一つの流行り物が出現すると、根がミーハーなのか、あまり深く考えずにそれに飛びつく習性を持った人が多い。

最近だと、ネット通販、D2C、クラウドファンディング、オンラインあたりだろうか。

しかし、そのどれもが「手段」であって「目的」ではないし、すべてを解決してくれる存在ではない。

 

ある人は、繊維・アパレル業界はすぐに「手段」を目的化してしまうと指摘するが、まあその通りだろう。

本来は、自社の商品を世に送り出すための「手段」だったクラウドファンディングがいつの間にか、「クラウドファンディングをやること」が目的化してしまっているような会社が多い。

ネット通販、D2C然りだし、オンラインの活用も然りである。

 

新型コロナで実際の接触がはばかられる部分があるから、オンラインを活用するという発想は至極当然だが、じゃあ、自分たちの販売する物がオンラインで見せただけで完結できるのかどうかというところも考える必要があるのではないかと思う。

別に帝人フロンティアだけに限ったことではないが、生地の展示会をオンラインだけで開催しても、それは技術を活用した事例にはなるが実売につながることはあまり期待できない。

オンラインという技術を活用した上で、どのようなプラスアルファの施策が必要なのかを考える必要がある。

そういう意味では、生地のサンプルブックを製作して各社に送るというのは、有効な対策ではないかと思う。

 

 

そんな帝人フロンティアの不織布マスクをどうぞ~

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