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南充浩 オフィシャルブログ

同じターゲットでも切り口を変えることは可能では?

2020年9月1日 ジーンズ 0

目下のところの業界内大流行はD2Cだったが、数年前までは「大人服」が業界内大流行だった。

数多くのアパレルから「大人服」が発売されたが、どれも同じような印象しかない。若年層の人口が減っているうえに客単価が下がっているから、比較的人口が多い団塊ジュニア世代に売り込まざるを得なかったのだろうが、発売された「大人服」のほとんどは同一テイスト、同一価格帯だったように見える。

そうなると、どれもこれも同じだから、選びにくいし印象にも残りにくい。

あっという間に「大人服」市場は飽和してしまったように見える。

 

先日、BMCがバイク用の服を開始することをこのブログで紹介した。ニッチな市場だが、その市場でそれなりの利益を稼げれば良いわけである。

ニッチな市場だが、ちょっとずつ異なるカテゴリーが存在する。

 

BMCよりも以前からバイク乗り向けに洋服を展開しているジーンズカジュアルブランドに「アイアンハート」がある。

 

狙っているゾーンもテイストも商品設計思想もBMCとは全く違う。

こちらは、18オンス以上のヘビーオンスデニムを使ったジーンズやデニムブルゾンなどを中心にアメカジのトータルアイテムを企画・販売している。

業界的には14オンス以上の重いデニム生地をヘビーオンスデニムと呼ぶ。ヘビーオンスデニムは分厚くて硬い。

ハッキリ言うと、体に馴染むまで非常に動きにくく不便だが、反面、通常の衣服に比べてかなり頑丈である。

 

以前にも書いたように、バイクに乗るには、頑丈な長袖・長ズボンが望ましい。

できればレザーの上下が良いらしいが(教習所でそう習った)、レザーの上下は手入れもめんどくさいし、バイクを降りて日常生活を送るには不便だし、汗も吸ってくれないから夏には適さない。

そうなると、レザーの上下よりもデニムの上下の方がまだ利便性が高いわけだが、ヘビーオンスデニムは、通常の14オンス以下のデニムよりも丈夫だから、バイクに乗るには望ましい。

 

アイアンハートの場合、中型自動二輪ではなく、ハーレーなどの大型自動二輪を乗る人が対象だが、ストレッチデニム素材を使用して動きやすさを重視したBMCとはまったく違うアプローチで洋服が企画されていることがわかる。

テイストもハーレーに適したアメカジスタイルである。

BMCは現代的ワーキングテイストである。

 

価格は高額なハーレーにふさわしく、アイアンハートの服は高価格帯に属するが、BMCは低価格から中価格くらいである。

 

BMCはこれからバイクウェアをスタートさせるが、何年も前から活動しているアイアンハートはハーレーのイベントに出店したり、ファンを集めての野外活動なんかも行っている。

BMCがどのようなファンづくりをするのかは今のところ不明だが、アイアンハートとは違った手法を採ることだろうと思う。

 

このように見ると、バイクというニッチな市場に対して、BMCとアイアンハートでは取り組む姿勢やターゲット、商品がまったく異なることがわかる。

バイクという特殊でニッチな市場で、さらにいうと趣味性が強い市場だからこそ、そこに特化した売り方、商品企画のやり方といえるが、工夫次第では「バイク」という狭い市場でもそれなりの違いは出せるということである。

また販売価格帯も一概に「安くしないとダメ」というわけではない。ハーレーに合わせた高価格帯でも構わないし、ワーキング業界的な低価格でも構わない。

要は、その市場で、自分が狙う消費者にどれだけ適した商品を提案できるかということである。

 

単に「大人服」というだけで、ターゲットやテイストに違いがなければ、消費者もどれを選んでよいのかわからない。同一化が行き着く先は価格競争やコスパ競争ということになる。

また、売上高目標の設計も現実味のあるものにしなくてはならない。

極端な話、「1ブランドで500億円を目指します」なんて考えてみたところで、いくら人口の多い団塊ジュニア向けでも実現することは不可能だろう。

「大人服」と言った場合、ここまで明確に趣味性は存在しないだろうから、どうしても同質化しがちであることはわかるが、もう少し独自の切り口が必要ではないかと思う。

 

それは過去に流行った「ライフスタイル提案型売り場」でも同じで、服に加えてリュックと靴を並べたら何でもかんでも「ライフスタイル提案型」と名乗っていたが、消費者からすると、どの店もあまり変わり映えがしないように見える。どのあたりが「ライフスタイル提案」なのかさっぱりわからない。

そのうちに、どんどんと取扱品目を増やしていき、結果的にブランド側の管理が杜撰となり、収益性を悪化させることにつながってしまった。

また並べている靴やバッグもどの店もほとんど同じブランドから引っ張ってきており、どこを見てもニューバランスみたいな状況に陥ってしまった。消費者からすれば「そこまでニューバランスが欲しいなら、ニューバランスのオンリーショップに行くよ」ということになる。

 

同じバイクでもアイアンハートとBMCみたいにまったく違う売り方は可能なのだから、他のジャンルでも工夫できる余地があるのではないかと思うがどうだろうか。

 

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