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南充浩 オフィシャルブログ

都合の良い新入社員を求めるのが企業

2011年1月12日 未分類 0

 就職氷河期なのに…新入社員半数以上が「退職検討中」のワケ
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20110105/dms1101051612016-n1.htm

という記事が掲載された。

従業員200人以上の企業に、2010年度に入社した社員の半数が退職を意識しているというアンケート結果が発表された。

これに対して「青い鳥症候群」だとか「若者の我慢が足りない」とか「せっかく就職できたのにもったいない」とかの意見が目立つが、どれもあまり適切ではないと考えている。

昨年4月に入社した新卒者というのは、就職氷河期にも関わらず就職できるほど能力的に優秀である。バブル期以前の入社組とは雲泥の差であろう。どちらが泥かは言うまでもない。
そして、企業は海外進出に向けて「語学堪能で、チャレンジ精神旺盛で上昇志向のある学生、専門性のある学生」を求めてきた。その結果採用されているのだから、企業が掲げた人物像に当てはまっている場合が多いだろう。

しかし、冷静に考えれば、語学堪能でチャレンジ精神旺盛で、上昇志向のある学生を、従来通りの管理職、経営者が使いこなせるだろうか。
リーマンショック以前の日本企業は「オールラウンダーになりえる従順で明るい男子学生」のみを採用してきた。
過去数十年間の採用基準である。
愛嬌と従順さのみで採用された人間が管理職・経営陣として、前述の学生をうまく使いこなせるはずがない。

さらに言えば「専門性の高さ」を基準に採用しているにも関わらず、自分たちがされたようにオールラウンダーになるための仕事をさせられることに対して、新卒者は不満を抱いて当然である。

また、上昇志向の強い新卒者が、明確な昇進基準さえない日本企業に愛想を尽かすのも無理はない。

自分は6社転職したことがあり、従業員200人以上の会社には1社しか所属しなかった。94年入社なのだが、この会社でも昇進基準などなかった。人事コンサルタントの城繁幸さんが著書で書かれているように「日本企業は昇進基準が明文化されていない」を地で行く企業だった。
入社1年後はほぼ、誰でも店長になるが、その後の基準がわからない。「店長として連続24カ月売上予算を達成すれば、次はエリア長になれる」という具体例は一切ない。
そして店長になっても手当ては増えず休日は減るので、いわば「名ばかり店長」だった。

おそらく多くの企業がこんな感じなのだろう。城繁幸さんのご出身である富士通も明確な昇進基準がないという。大企業、富士通ですらこうなのだから、あとは推して知るべしである。
こういう勤務環境で「語学堪能で、チャレンジ精神旺盛、上昇志向あり、専門性高い」の新入社員が満足するはずがない。

海外進出に向けて、外国人にも負けない精神性を持った学生を採用しながら、運用する管理職・経営陣が旧態依然とした日本式なのだからお話にならない。
いわば「仕事のやり方は外国人並みだけど、日本式の運用には従順な学生」が欲しかったのだろうが、そんな都合の良い人間は世の中に存在しない。

若者に「世の中を舐めるな」というが、オッサン連中の方が世の中を舐めている。

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