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南充浩 オフィシャルブログ

猫も杓子もDtoC(笑)

2020年7月22日 トレンド 0

アパレル業界は、基本的に流行り物に弱い。

もともとファッションには「トレンド」という物があり、それを無視してはビジネスとして成り立たないという体質がある。マスを狙うにはトレンドを取り入れなくてはならない一方で、ニッチ市場やコア層に向けて「あえてトレンドを取り入れない」という手法もある。

あえて取り入れないわけだから、トレンドそのものは意識も認識もしていて、その上でそれに乗らないという選択をしているのである。

 

新型コロナショックで、2か月間の店舗休業が相次いだことで、ネット通販が以前にも増して注目を集めるようになった。その結果、DtoC(D2Cとも表記)がさらに注目を集めるようになったが、猫も杓子も業界メディアもDtoCという状況は「いつものアパレル業界らしさ」満載である。相変わらずである。

そういえば、一時期猫も杓子も業界メディアも毎日のように騒いでいたノームコアはどうなったのだろう?最近はさっぱり耳にしない。ノームコア的な生活スタイルを貫いている起業家や経営者が絶滅したわけではあるまい。にもかかわらず、猫も杓子も業界メディアも言及しなくなったということは、それほど美味しい商売にはならなかったということのほかに、彼らが「飽きた」のだろうと考えられ、この「飽き性」もアパレル業界特有の体質といえる。

 

DtoC支援企業続々 実績引っさげ、強み競う

https://senken.co.jp/posts/dtoc-200722

 

繊研新聞にこんな記事が掲載された。そうでなくても業界メディアには毎月何本もの「DtoC」関連記事が掲載され、読む方としては食傷気味である。

繊研新聞は他の業界メディア、経済メディアに比べると「変な煽り」が少なく、安定感・安心感がある。そのため、この記事も「変な煽り」は少なく、事実を報道する要素が大きい。

書き手の永松氏に対しても、個人的には信頼感がある。

 

店舗休業を余儀なくされたアパレルや、小売りに商品を卸せなくなったメーカーやOEM(相手先ブランドによる生産)、工場などが新たに開発に乗り出すケースが増えている。呼応して、DtoC支援の企業も続々出てきているが、その背景には、これまでのビジネスとは一線を画する手法が求められ、自社だけで事業を進めるのが簡単ではないという事情がある。なかでも、実際にECやDtoCブランド運営を自ら手掛ける実績のある企業に注目が集まっている。

 

とのことだが、ぶっちゃけ、いまだにDtoCの概念がよくわからない。正確にいうと、DtoCが乱立すればするほど概念が無限に広がっていき、何を持って「direct(DtoCはdirect to  consumerの略)」なのかすら理解ができなくなっている。

当方は、わざわざ「direct」と名乗っているのだから、製造加工場が自社開発商品をネットを介して消費者に直接売りつけるのがDtoCだと理解している。

もちろん、製造加工場が直接でなくても、オリジナルブランドやオリジナル商品を企画デザインし、それを製造加工場に製作依頼をして、ネットを介して売りつけるのもDtoCの範疇であるとも考えている。

 

しかし、1~2年前から、中国の広州市場や韓国の東大門市場で買ってきた商品のネームタグだけを自社のネームタグに貼り替えてネットを介して売りつける「自称DtoCブランド」も珍しくなくなってきた。これの一体どこが「direct」なのかさっぱり理解できない。directどころか思いっきり仕入れ業者だし中間業者でしかない。「仕入れ業者toコンシューマ―」とでも名乗ってみてはどうかと思う。

これに対して「DtoCはマーケティングの概念」という説明をなされることもあるが、正直なところ、当方の悪い頭ではさっぱり意味が分からない。

この辺りの面妖さや鵺的な何でもあり感は、つい先日にブームとなった「ノームコア」と似ていると感じる。

 

ところで、ノームコアの前に毎日のようにメディアで報道されてた「オムニチャネル」はどうなったよ?

その前の「ライフスタイル提案型」は?「コト販売」は?

 

で、世の中、需要が高まれば供給も高まるわけで、この繊研新聞の記事が書いているように、「DtoC支援企業」が雨後の筍、真夏の雑草のように次から次へと現れている。まあ、恐らくは玉石混交だろう。そしてその混交比率は圧倒的に「石」の比率が高いだろうと見ている。

 

そして支援企業だけでなく、「自称DtoCブランド」も新規参入が相次ぎ、真夏の雑草のようにどんどんと繁殖するばかりである。

それにしても、新規参入組にしても支援企業にしてもなぜ、DtoCと名乗れば成功する確率が高いと考えるのだろうか。その思考が不思議で仕方がない。

実店舗で売れないアパレル商品がなぜネットでならもっと簡単に売れると考えるのだろうか。そういえば、アホなアパレル経営者も「店では売れないがネット通販なら売れる」という思い込みを持っている場合が多い。

 

当然、実店舗とネットでは売れ方が異なる場合がある。だが、その差は恐らくは誤差の範囲内だろう。統計データなどはないが、実際にDtoCブランドとも接触した感触でいうと、実店舗であろうが、DtoCであろうが、ブランドビジネスとして収益化できる確率はあまり変わらないだろうと考えられる。

DtoCが盛り上がっているように見えるのはメディアの報道が続くからで、それこそクラウドファンディングでもアパレル製品が成功するのは一握りで、その下には無数の失敗が残骸のように転がっているのが実情で、恐らくDtoCの収益化も同様ではないだろうか。

最近は大手メディアでもDtoCブランドの成功例としてfoufouが取り上げられるが、2020年の売上高は4億円の見通しだそうだ。

成功と言われるブランドの売上高が4億円ということは、中堅や大手アパレルのアホな経営者が思い描く何十億円という売上高に到達するのは、いかに困難であるのかがわかるのではないかと思う。

店で売ろうが、ネットで売ろうが、呼び名や肩書を変えようが、そんなにイージーで美味しい商売はこの世のどこにもないということである。

 

 

この手の本や会社がDtoCを煽っている。

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