衣料品業界人が想像するよりも自分の服のサイズを認識していない消費者は多い
2020年7月2日 売り場探訪 4
今の世の中には、様々な「業界」があり、それが高度に専門化し細分化されているので、ジャンル外のことは詳細にわからないのが実情である。
当方は一応、繊維・衣料品業界にいるが、例えば食品業界のことはわからない。逆もまたしかりである。
新型コロナショックによる実店舗休業で、以前にも増してネット通販という販路に注目が集まったが、WEBやネットのことに造詣が深い繊維・衣料品業界人は数少ない。
世の中はそんなものである。
繊維・衣料品業界に長くいると、また衣料品が好きであると、そのことに関してはそれなりに知識が貯まる。
もちろん「基礎知識」と呼ばれるような事柄も含むのだが、この「基礎知識」を実は一般大衆は持っていないと思った方がビジネスは上手く行くと思う。
洋服を着用するにおいて重要なことの一つに「サイズ」がある。
自分の身体に比べて洋服のサイズが小さすぎると袖を通すことすらできない。だからそんな服は買っても意味がない。まあ、転売目的なら話は別だが。(笑)
で、衣料品業界人ならサイズに関しては事細かに知っているかどうかは別として、基本的なことは知っているはずである。
S、M、Lなどのサイズがあることや、9号、11号、13号という表記もあること。9号がだいたいMサイズ、11号がLサイズに対応していること、SサイズのSはsmallのS、Mはmedium、Lはlargeであることなどなど。
しかし、サイズについてのこんな基本的なことすら、大衆の中には知らない人がいる。それも相当数の割合でだ。
体感的にはだいたい2~3割弱の人は知らないという感じがする。しかも男性に比べて、洋服にはそれなりに興味が深いとされる女性ですら、この割合である。
何度も書いているように月に数回、天神橋筋商店街の在庫処分屋の店頭に立っている。正確にいうと立たせてもらっているというべきだろうか。ちなみにこの店は99・9%女性物しか置いていないため、購買客も99%は女性である。
そうすると、だいたい毎回、必ず1人か2人か3人かはサイズをまったく知らないというお客が来る。
先日はそういうお客が2連発でちょっとイラっとした。当方は基本的に短気なのでイラっとすることが多い。
正直に言うと、いろいろな身なりのお客がいて、ものすごく洋服に無頓着そうなお客もいれば、そこそこに上手くまとめているお客もいる。
無頓着そうなお客がサイズのこともわからないと、まあ、しゃあないなあと思うのだが、そこそこに上手くまとめているお客がサイズのことを知らないと、ちょっと驚いてしまう。
先日はそんなお客だった。
Mサイズと表記されているズボンだかスカートだかを持ってきて「私、穿けますか?」と尋ねてきた。
体格・体型を見ると、確実に穿けるとも穿けないともいえないくらいだった。言ってみれば、当方もそういう感じでユニクロの服でもMサイズで着用できることもあるし、Lサイズでないと着用できないこともある。
で、当方が「今日は何サイズのスカートを穿いておられますか?」と尋ねてみると、答えは「わからへん」である。
また、「いつもウエスト何センチくらいのズボンやスカートを買いますか?」と尋ねると、これも答えは「わからへん」である。
これにはイラっとするとともに驚かされた。
どうだろうか?衣料品業界の人や衣料品好きの人は、自分が買う服のサイズをだいたい把握しているだろう。ユニクロならMサイズとか無印ならLサイズとか。
また、ネット通販で買うことが増えた人なら、だいたい体の部位の数値も把握しているはずである。最近のネット通販は各部位のサイズ数値を細かく表示しているから、肩幅が〇〇センチで、身幅が〇〇センチだったら着られるとか、〇〇センチだと微妙だとか、そういう判断ができるようになっているはずである。少なくとも当方はだいたいサイズ数値の表記でどれくらいの大きさなのか理解できるようになりつつある。
しかし、そこそこに上手くコーディネイトしている、しかも女性が、自分が今日穿いているスカートのサイズもわからへんし、いつも買うスカートのサイズもわからへんのである。
これが大衆だといえる。
そして続いて「Mサイズってどれくらい?」と尋ねるお客が来た。下げ札には「ウエスト61~67センチ」と小さい字でだが表記されているのである。
ちなみに、老眼?で下げ札の小さい字が「見えへん」というお客も意外に多く、この辺りもアパレル業界人は留意した方が良いのではないかと思う。「表記していますよね?」とブランド側が主張したところで、実際は「見えてない」お客が相当数いるのである。こちらはサイズがわからへんお客よりも割合が高く、3~4割くらいは見えていないと感じる。
それにしてもそこまで「見えへん」ことを自覚しているなら、どうして老眼鏡なりルーペを持ち歩かないのか不思議でならない。服を買うときは除いたとしてもそれ以外の行動でも不便極まりないだろうに。
で、「61~67センチですよ」と答えて、「いつも何センチのズボンを買っておられますか?」と尋ねると、これまた「わからへん」のである。
ここまでサイズやサイズ表記に無頓着なことに対して、当方はまるで理解ができない。恐らくアパレル業界人や洋服好きな方も理解できないだろう。今まで何十年間もどうやって服を買って来たのか不思議で仕方がない。
しかし、わからへん・見えへんというのがマスの消費者なのである。
もちろん、洋服好きな人のためにニッチに小規模に売りたいというブランドはわからへん・見えへんなんていう客に対応する必要はない。
だが、できるだけマスに売りたいというブランドは、こういう「わからへん・見えへん」という客もしっかり集めて対応しないと目指す売り上げ規模には到達できないのである。
アパレル業界人や洋服好きな人は、自分の当たり前は大衆の当たり前ではないということを再認識した方が良いだろう。
そのあたりをもう一度見直してみてはどうか。
下げ札のサイズ表記が見えへん人はポケットルーペの携帯をお勧めしたい
comment
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イトウチュウ より: 2020/07/04(土) 1:57 PM
ファッション・繊維業界において、本当にサイズ表示(JIS範囲許容)を理解している人は少ないと言える。 先日もお客様(メーカー様)に忠告を入れた。紳士ショートパンツの下げ札にSサイズ(ウエスト80~100㎝)と記載がされているので丁寧に説明させて頂いた。 どうやら(ウエストゴム仕様)設計サイズのウエストサイズをそのまま記載したようだ、確かに間違いではない。だが親切ではない。 これが表示適切かどうか会社の稟議を得たものだが、だれも疑わずに通ったとは・・・ 無論訂正にて出荷には無事を得たが。 比較的女性は自分の体形を認識しているものであろう、常日頃衣料品にかんしてはサイズ確認多い為。 しかし以前からも声がでているが現代にJIS規格は全てを補えていない、規格も基準もまだまだ不完全なものが見受けられる。 日本はマシな方なのか、海外の方がルーズなイメージだが実際どうなのか。 結構興味が湧く。
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一般人 より: 2020/07/08(水) 7:29 PM
サイズ表記がいい加減な商品も増えてきていますね。
ネット通販などでは「小さめに作られているため通常より2サイズ大きいものをお選びください」と言ったような表記や「普段Mサイズを着ていますがこの商品はサイズが小さすぎて着られませんでした」といった商品レビューがここ数年急に増えてきたように思います。 -
BOCONON より: 2020/07/09(木) 8:42 PM
MかLかもわからない客,というのはさすがに相手をするのも一苦労でしょうが...
以前書いた無印良品のシャツのたぐいは細身短丈なのを知っているから,最初から僕は避けて通る。困るのは百貨店や AEON などで大人向けと思われるシャツやジャケットがそれだったりする場合。
いや,ジャケットなら試着するからまだいい。買ってみないと分からないものが案外あるのです。つまり入り混じっている。
逆に若い人向けな Right On などでは買ってみたら「流行のビッグシルエット!」のものだったりする。ユニクロの綿ヴェストも明らかにそれだったり。しかしそんな事はかなり洋服に詳しくないと客にはたぶん分からないと思う。なぜちゃんと分かるように表記して置かないのか,僕には不可解であります。
もしかすると,売る方もあまり分かっていないのかもしれない。「二つ釦の背広は上ボタンだけ掛ける」なんて事も知らないんじゃねえ・・・
先日、今の会社の同僚が「今履いてる靴がダメになったから新しいの買いたい」って言ってて「ほーん、じゃあ無印良品の靴が安くて歩きやすくてオススメですよ」って教えてあげたのですが、「自分の靴のサイズがいくつか分かんないし、そもそもちょうどいいサイズが分からない。その確認のしかたも分からない」って言ってて、衝撃的でした。
しかも聞いたところによると、前回靴を買ったのが5年くらい前だとか。
仕方がないので、会社帰りに付き添って、商品選び、サイズ選び、ちょうどいいサイズの確認までして差し上げました。
もともとアパレルで働いてた身からすると、そういう人がザラに居るのかと思うと、なかなか衝撃的でしたね。
もちろん、彼は自分の体にあった洋服のサイズも知りませんでした。
っていうか、次に買うまでに数年単位で時間が空きすぎて、前回買ったサイズを毎回忘れてるんだと思います。