
洋服を値下げして処分販売することは「絶対悪」ではない
2020年6月30日 お買い得品 0
アパレル業界には「バーゲン悪玉論」的な感情論がいまだに横行しているような気がする。まあ、もしかしたら当方の被害妄想かもしれないが、今回は被害妄想を基準に話を進める。(笑)
例えば、この記事なんかも根底にはそれが流れているような気がする。
「セールのあり方」
https://senken.co.jp/posts/mete-200626
営業時間はES(従業員満足)の観点から短縮を望むショップが多く、短縮施設が増えてきた。コロナ禍を機に、さらに増える可能性が高い。セールについても同じ見方が成り立つ。セールに依存しないサステイナブル(持続可能)な物作りを重視する企業が広がるとすれば、長年議論されてきたセールのあり方も変わっていくのだろう。
とあるが、議論していたのは業界人同士だけで、多分、一般消費者は全然意識してなかったと思うぞ。
個人的にはGAPの日本上陸、ユニクロブームが起きて、これまで百貨店やファッションビルが堅持してきた「年二回のバーゲン・セール」というのは崩れ去ったと感じている。
どちらも大手SPAブランドだが、売れ残り商品の処分法は似ている。似ているというよりGAPが確立したSPAという手法を使っているのだから似るのは当然で、ユニクロブーム以降に拡大した各SPAブランドも同様だ。
GAPとユニクロの処分法の違いはアウトレット店があるのかないのかの差である。
GAPはなぜかアウトレット店があるが、ユニクロはない。
大手のSPA型ブランドは、どれも一様に、売れ残り商品を「年二回のバーゲン時期とは無関係」に随時値下げして販売する。例え「定番品」でも一定期間を越えれば値下げして販売する。
言ってみれば、年がら年中、値下げコーナーが店内にある。
90年代後半ならこうした売り方は「正統な」業界人からすれば「色物」に映ったことだと思う。一般消費者からすると「物珍しい」と映ったことではないかと思う。
しかし、98年のユニクロフリースブームからすでに20年以上が経過している。98年に生まれた人は今年22歳になっている。
ジジイからすれば98年なんて昨日のことのようだが、実際に22年という時間は相当に長いものであり、その期間に見続けた事柄には大多数の人は慣れてしまっている。
そして、常にセールコーナー、バーゲンコーナーがあるというブランドは最早、GAPとユニクロだけに限らない。アダストリアの各ブランドも同様だし、ストライプインターナショナルの各ブランドも同様である。ウィゴーだって同様だし、ジーユーも同様だ。
ストライプインターナショナルなんて、バーゲンコーナーどころか、毎日タイムセールで全品値下げ販売している。
欧米のラグジュアリーブランド、それに匹敵できるステイタス性を持つ数少ない国内ブランドはどうだかしらないが、それ以外の中間層と低所得者を狙うブランドは、すでにほとんどがSPA化しており、この20年間で常に店内にセールコーナーがあるようになった。
逆に旧態依然の百貨店とそれに付属したアパレルが「セール開催時期」にこだわって議論し続けているのを、奇異に見ていた一般消費者は多いのではないかと思ってしまう。
そこに来て、ネット通販の浸透である。
旧態依然の百貨店とそれにぶら下がっていた旧態依然アパレルが「セール開催時期の後倒しヲ~」とかアホみたいに叫んだところで、楽天やZOZOTOWN、Yahoo!ショッピングなどの大手モールは割引クーポン乱発と適宜の値下げを随時行っている。Amazonも同様によくわからない変なアルゴリズムのタイミングで値下げをする。
百貨店ブランドがバーゲンを遅らせようとしたところで、似たような商品、似たようなブランドがインターネット上では値引き販売されているのである。よほどその百貨店ブランドに思い入れがない限りは、インターネットの割引ブランドを買う人が増えるのは、当然の結果である。
値引き販売無しで売りたい気持ちはわからないではないがそこにコダワリすぎると、逆に企業の経営を毀損するのではないかと思う。むろんなるべく値下げせずに売るのが理想だが、実際に年間100型とか200型とかを展開する総合ブランドで、全型を完売させられるほどの高精度なマーチャンダイジングは不可能である。
絶対に1型や2型は読みが外れて売れ残りが生じる。先日紹介したfoufouのような年間売上高2億円の小規模ブランドならそれは可能だろうが、100億円とか200億円規模のブランドでそれをやることは不可能であり、実現できればどこぞのエラいコンサル先生ではないがまさに「神業」である。
となると、売れ残りが生じた1型はどのように処分するのが適切だろうか。
値下げ販売して売り切るのが最も適切である。じっと抱えていたところで株価ではないから、その売れ残り商品の値打ちが回復することはない。メンズならまだしも、レディースではシーズン遅れの売れ残り品など値打ちは下がり続ける一方である。さっさと損切して売り抜けて現金化してしまえばいい。
じゃあ、今後、バーゲンやセールはどうすればよいのかというと、売れ残りが生じたら、随時値下げして売り切ってしまうのが理想といえる。特に体力が弱っている旧態依然のアパレルには在庫を抱え続ける余裕も、現金を在庫として眠らせておくゆとりもないはずである。
もちろん売れ残りを生じさせないためにはマーチャンダイジングの精度を高める必要もあるが、10型や20型なら全型的中させることは可能だろうが、50型、100型になると人間では難しい。売れ残りが生じたら、すぐに値下げ処分販売をして現金化してしまうことをお勧めする。そう書くとAI(人工知能)ではどうだ?という人がいるが、アパレルがAIを使って需要予測を行い成功したという話はいまだに聞いたことがない。将来的にはどうなるのかわからないが、現時点では無駄だろう。その何千万円のカネで従業員全員に焼き肉をおごった方がはるかにマシである。
http://dwks.cocolog-nifty.com/fashion_column/2020/06/post-96cb2a.html
適品を気温にあわせて(適時)、
値下げを前提にしない顧客が求めるプライス(適価)で店頭提案する
不人気商品は早期に消化を図って換金(ECでもよし)、売場から一掃し、
できるだけ早く人気商品、新しい商品に入れ換え店頭鮮度を高める
正価のままで売り切り可能な人気商品はバーゲンになっても値下げしない
とあり、気温に合わせるのだけが適時だとは思わないが、基本的にこの主張が正しいと思う。梅雨時に夏物を値下げするのはおかしいと叫んだところで、定価で売れないんだったら値下げでも何でもやって売り切るしかない。くだらないバーゲン開催時期にこだわっているから旧態依然のアパレルと百貨店はどんどん没落していくのではないか。
それと今はネットで値下げされた洋服が年がら年中買えるようになっていることも、アナログな旧態依然アパレルと百貨店の皆さんはくれぐれもお忘れなく。
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