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南充浩 オフィシャルブログ

百貨店のネット通販が休業している理由

2020年4月20日 ネット通販 1

新型コロナがこれまでの不況やアクシデントと異なる点は

1、全国的に営業が自粛されている(4月18日以降)

2、日本も海外も同じ状況

という点にあって、実店舗での販売は全部ではないにしろほぼ効果が見込めない。

活路はインターネット通販しかない。

インターネット通販は特に日用生活品やゲーム、おもちゃ、食料品などは活況だそうで、運送は人手不足になっている。洋服も好調なブランドもあるが、すべてが恩恵を被っているわけではない。

 

いつも活用している実店舗が閉鎖されて必然的にネット通販で買う比率が当方も高まっているが、ユニクロとジーユーのネット通販を使う比率は低下している。

これは当方個人のセコい買い方なのでマスに当てはまるかどうかは分からないが、ユニクロとジーユーの通販はこれまでの強みが、今回のコロナではまったく阻害されてしまっていると感じる。

 

ユニクロとジーユーはネット通販は少し違う。

ユニクロは何万円買ってもポイントは貯まらないが、ジーユーは貯まる。100ポイント貯まれば100円引き、300ポイント貯まれば300円引きである。

共通点としては

1、買い物合計が5000円以上でないと送料無料にならない

2、500円引きクーポンが送られてくる時があるが、総額5000円以上でないと使えない

3、店舗受け取りは5000円未満でも送料無料

という3点がある。

 

しかし、今回の新型コロナでは店舗受け取りで送料無料という方法がまったく効果を発揮できなくなっている。

なぜなら多くの店舗が休業になっているから、受け取りに行きたくても行けない。

で、5000円以上でないと割引が使えないというのは、ユニクロなら容易いがジーユーで1回につき総額5000円以上買おうと思うと、なかなかの枚数が必要になるため、ちょっと難しい。

今月誕生日なので、ジーユーからもユニクロからもオンライン専用5000円以上で500円引きクーポンが送られてきているが、ジーユーのは使わずに終わってしまう可能性が極めて高い。

ユニクロはもしかしたら月末までに使うかもしれないが、こちらも可能性はそんなに高くない。

 

今までの災害だと日本全国が同時に被害を被ることはなく、どこかの地域はダメだが、他の地域は動いているということがほとんどだった。

また世界的に見れば「日本がダメでも外国で」ということもできたし、その逆に「外国がダメでも日本で」ということもできたが今回はそれも難しい。

こういう状況は世界大戦くらいではないかと思う。そういう意味ではまさに「戦争状態」ともいえる。

 

恐らく、王者ファーストリテイリングといえどもこういう事態は想定していなかっただろうと思う。店舗受け取りにすれば、店舗に行った際に、追加購入する可能性が見込めるが、それも期待できなくなってしまった。

今後は少し設計を変えてくるのではないかと思うがどうだろうか。

もちろん、そんなことを気にせずに買うという人も多いだろうが。

 

報道によると大手スーパーのネット通販なんかもこの状況下で伸びているという。

今後、これを機会にすべての会社がネット通販を強化してくることは間違いない。

その一方で出遅れているのが百貨店である。店舗休業と同時に何故かネット通販も休んでしまっている。

 

このおかしな状況に首を傾げる人も多かった。当方も疑問しか感じなかった。

しかし、オチマーケティングオフィスの生地雅之さんの解説を読んで納得したのでご紹介したい。

 

https://blog.apparel-web.com/theme/consultant/author/ochi/e2fcbddc-972e-4b38-8b86-bdbe6278b00a

 

百貨店はその対象であり、在庫責任がない消化ビジネスのため、EC用の商品確保はほとんど不可であり、店頭在庫からの転用出荷なのです。一部の企業・カテゴリーを除いてNGなのです。休業のため、いつ何が売れるかわからないECのために、ピッキングを兼務する販売員を店頭に出勤させられない事態だからなのです。

一部の百貨店に「何故ON-LINEまで止めているのか」との指摘はこのような事情が存在しているのです。

 

しかし、単独サイト(他のカテゴリーの買い回り対応しないため)で倉庫が別対応のサイトは開けている事を見ても、考えれば理解出来る事なのです。

 

とある。

2000年以降不振に陥り、百貨店の欠点として散々指摘されてきてた消化仕入れ、委託と呼ばれる在庫リスクを持たない売り方が、このネット通販強化時にも百貨店の足を引っ張ることになってしまっている。

恐らく、百貨店幹部は実店舗が営業を長期間停止するような事態は想定していなかっただろうと考えられる。

当方だって想定はできていなかった。

 

百貨店幹部としてはせいぜい定休日や年始の休日程度しか想定していなかったため、こういう設計の通販サイトになったと考えられる。

しかし、今回のコロナ休業はモロに消化仕入れの弊害を露呈させてしまったといえる。

 

アパレル各社や大手スーパー、大手家電量販店などが軒並みネット通販を強化し、顧客を増やそうとする状況にあってネット通販を停止し続ける百貨店は水を開けられ、これまで以上に苦しい立場に追い込まれることになるのは、火を見るより明らかだろう。

個人的には百貨店に対して何の愛着もないが、もし百貨店が今後も生き残りたいのなら、消化仕入れという形態の早急な改善が不可欠になる。

もちろん弊害も出るだろうし、痛みも伴うだろうが、放置したままでは他の流通にさらに引き離されるだけでしかない。

 

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 comment
  • BOCONON より: 2020/04/21(火) 1:44 AM

    南さんも以前お書きになっていた通りで「もう百貨店なんてなくても誰も困らない」ようなものです。その上元々大して売り上げのない百貨店のネット通販なんてなおさら。だいたい例えば TAKEO KIKUCHI のスーツがどうしても欲しきゃTKの公式サイトで買えば済む話だしw
    一方僕思うにどうやら百貨店はますます小売り業より不動産業に転換しつつある。ユニクロやニトリ出店させた池袋東武とか,日本橋の高島屋SSとかギンザSIXとか金融業もやってる丸井とか。
    それゆえ “消化仕入れの改善” と云ったお話は御尤もなれど,百貨店側の人たちの反応としては多分「出来るならとっくにやっているよ,そんな事ぁ」と云ったところでありましょう。
    それにこれは百貨店だけの問題でもない。全世界的にここ20年以上一般労働者の収入は増えていない上に日本はむしろ減る一方だ。その上消費税は上がる一方。これじゃ百貨店なんて中産階級向けな商売の再生どころじゃ多分ないですね,あと何十年かは。

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