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南充浩 オフィシャルブログ

数万円のジーンズが飛ぶように売れるとは考えにくい

2013年6月14日 未分類 0

 以前から何度か言及している。

小規模な児島のジーンズメーカー3社がパリに売り込みに行くも無残に玉砕した(ように見える)NHK岡山支局が放送した番組「現場に立つ」について。

http://www.nhk.or.jp/okayama/program/b-det0008-naiyou.html

パリに出向いたのは以下の3社

1、インディゴ染めにこだわるI氏
2、緯糸にカラー糸を使うため、裏がカラーになるジーンズを企画製造するH氏
3、ブラックデニムとブルーデニムの切り替えブッシュパンツを企画製造するT氏

である。

国内のジーンズブランドを海外に輸出するという試みが語られることが増えてきた。

しかし、その試みはここ2~3年で始まった物ではない。
10数年前から試みはあった。
このブログでも何度か紹介したことがある「エヴィス」と「ドゥニーム」である。
90年代後半にこの2ブランドはヨーロッパ進出を計画した。
ちなみにこのときは現在のウィゴー傘下の「ドゥニーム」ではなく、オリゾンティのブランドだった。

「エヴィス」はイタリアの企業にライセンスアウトし、現地企業が製造販売した。
「ドゥニーム」は国産品を輸出した。

その結果は「エヴィス」は世界的な知名度を獲得し、「ドゥニーム」は輸出事業から撤退した。
さまざまな要因があろうが、当時「ドゥニーム」の企画を担当していたH氏は
「輸出したら価格が高くなりすぎましたワ。国内販売価格2万円のジーパンがイギリスでは関税やらなんやらが上乗せされて6万~7万円(当時の為替で日本円換算すると)の店頭価格になってしまいましたワ」
とその敗因を説明しておられた。

一方、「エヴィス」は現地ライセンス生産のおかげで日本国内での販売価格とほぼ同じで2万円前後で販売することができた。

いくら品質が良いと言っても、風合いが良いと言っても、店頭価格7万円のジーンズはそれほどの量が売れるはずもない。

それを考えると、現在叫ばれている「国産ジーンズの海外輸出」というのはおいそれとは成功しないのではないかと思える。
岡山・広島で製造されている「こだわりジーンズ」の類は大概が店頭販売価格1万数千円~2万円内外である。
場合によってはもっと高い。
直輸出した場合、旧「ドゥニーム」と同じような販売価格になると考えられる。
5万円~8万円くらいするジーンズがそれほどポンポン売れるとは到底考えられない。
輸出を叫ばれている方々はこの辺りのプライス設定をいかがお考えなのだろうか?

ここをクリアしないと旧「ドゥニーム」の二の舞になる可能性が非常に高いと考えられるのだが。

もっと根本的な疑問を挙げると、どうしてこの手のプロジェクトは企業規模が零細なブランドばかりに行政はスポットライトを当てるのだろうか?

岡山・広島のジーンズという点で考えるなら、もっと体力のある企業を海外に進出させた方が成功率が高まるのではないか。

児島ならドミンゴ、ジョンブルあたりを海外へ進出させた方が、家族4人でブッシュパンツのみを製造している企業よりもよほど成功率が高いのではないか。
ドミンゴもジョンブルも20億円を越える売上高がある。
もう少し小さい規模ならキャピタルがある。

国内でもブランドとして定評もあり、それなりの企業体力もあるドミンゴ、ジョンブル、キャピタルあたりを海外に売り込む方が現実味があると思えてならない。

もちろん、産業の裾野を広げるという意味においては、零細企業を育成・インキュベートしてプレイヤー数を増やす必要があることは理解している。
けれどもあまりに規模の小さいブランドをいきなり「海外進出」させても実際にビジネスベースに乗せることは至難の業である。
年商20億円の単品ブランドを40億円にすることは難しいが、年商1億円のブランドを2億円にすることはそこまで難しいことではないだろう。

ならばこの手の零細ブランドを育成するのなら、何もわざわざ、手間がかかって勝手のわからない海外に進出させるまでもなく、国内市場で十分ではないか。
その方が必要経費も安くて済むだろう。

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