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南充浩 オフィシャルブログ

製造業こそ発信が必要

2013年5月22日 未分類 0

 先日、読んでいた記事に興味深い一節があった。

川越達也シェフのインタビュー記事である。
念のために断っておくと、筆者は川越シェフになんの興味もなく、「ネットでよくネタにされてる人だな~」という印象くらいしかない。

以下に引用する。

http://www.cyzo.com/2013/05/post_13367.html

メディア出演の最初のきっかけはなんだったのでしょう?

川越 きっかけというより……きっかけが来たらいいな、と思って常に準備をしていました。何が成功かということについてはそれぞれ考え方がありますけど、僕は有名になりたいと思ってメディアに出たわけじゃなくて、有名にならないと生き残れない時代だと思っていたんです。

――具体的にはどんなことをしたのでしょう?

川越 28歳で開業した頃は、例えば雑誌の「Hanako」(マガジンハウス)さんや「東京ウォーカー」(角川書店)さんがエリア別のレストランや若手シェフの特集を組むときに、「目黒の学芸大学駅に、若くて頑張ってるシェフがいるらしいよ」と風の噂が立つような準備をしていました。「ティアラ・K・リストランテ」というちょっと長い当時の店名も、誌面に載せたときに「なんだろう?」と目に留まるようにしたかったから。雑誌に掲載する料理も、海老や蟹を使って、実は食べてもそんなに美味しくないんだけど写真映えする見た目の派手な料理を載せてました。で、予約の電話をしてくれたお客さんに素直に言うんです。「すみません、掲載していた料理は雑誌用に華やかにしたものなので、お出しできないのです。その代わり、一生懸命作るので食べに来ていただけませんか?」って。来ていただいたらお詫びをして、代わりの料理で楽しんでいただきました。なかには「なんだ、嘘じゃん」と言う方もいましたけど、人がなんと言おうと店に興味を持ってもらうことが大事だと思っていましたね。雑誌の表紙と一緒ですよ。

――それも一種のメディア戦略ですね。

川越 次は「若手のオーナーシェフ」として、そういう企画があったら最初に声がかかるような戦略を打ちました。もう、努力ですよね。2週間に1回ぐらい美容室に行って、ちゃんとカラーリングする。帽子なんて被りません。あと、上手くお話ができるように、お店で料理教室も開きました。

――料理教室でトークのトレーニングをしたんですか?

川越 いろいろな料理番組でシェフが喋っているのを見て、「もっとこう言ったらわかりやすいのに……」と思うわけですよ。だから、料理教室を開いて生徒さん相手に、ちゃんと伝わる言い回しや表情を研究しました。僕はタレントじゃないけど、テレビに出るのならそれはやるべきだと思います。その頃はテレビを見ながら自分に置き換えてシミュレーションしてました。「チャンスが巡ってきたら、よし、みてろよ」っていうような思いでしたね。

――そもそも、料理人の世界では、メディアに出ることは良しとされるんでしょうか? 

川越 ほとんどの料理人――九割九分と言ってもいいと思います――は実はメディアに出たいんですよ。この世界は、自己顕示欲が強い人ばかりなんです。自分の名前を店名にしてみたり、俺の料理はこうだと語ったりするのも、すべて自己顕示欲の表れ。でも、なかなかメディアに出ることはできないから、メディアに出ることは悪だという歪んだ考え方になってしまう。

とのことである。

ここは、普段接することが多い繊維産地の企業や繊維製造業の方にぜひとも参考にしてもらいたい個所である。

まずメディアに出ること。そのための準備。

外見でのアピールも重要だ。
川越シェフはいわゆるイケメン路線で外見を統一しておられるが、製造業や産地の方々は別にイケメン路線にする必要はないと思う。

例えば、城陽のラメ糸メーカー、泉工業である。
ここはコーポレートカラーのグリーンを全面的に押し出している。
外回りするときは常にユニフォームであるグリーンのブルゾン。
営業のY嬢などは全身グリーンに常に統一されており、ピーターパンかロビンフッドのコスプレのようである。
まあ、多分ご本人にもコスプレ気質はあるのだと思う。

しかし、これを3年以上続けることで、展示会場でグリーンのブルゾンを見ると「もしかして、ここにも泉工業が?」と条件反射するようになってしまった。

また、レディースニットブランド「フラムクリップ」を展開するピーアイの奥ノ谷社長は常に短パンである。
もともとは年間の3分の2を短パンですごす男という触れ込みだったが、今では年中短パンの男である。
真冬でも短パンである。さぞかし足が冷えるだろう。
ときどき腰痛が発生するようだが、それは足の冷やしすぎが原因ではないかと推測している次第だ。

BlogPaint

(短パンどころか何故か海パンを街中で着用中の奥ノ谷社長w)

何が言いたいかというとコスプレのお薦めではなく、外見で印象付ける方法があるということである。

次にトークの練習である。
筆者もいろんな方のインタビューを伺っていて「もっとこう説明したらわかりやすいのに」と感じることが多い。
これは何も製造業に限ったことではない。実はデザイナーにしてもコンサルタントにしても同様に感じる。
とはいえ、筆者も話下手なのだが。

川越シェフはトークの練習とおっしゃっているが、要するにこれは広い意味でのプレゼンの練習ということだろう。
繊維業界だと久米繊維の社長さんのセミナーを一度お聞きしたことがあるが、話し方といい声質といい、明瞭で聞き取りやすくわかりやすかった。
Tシャツの胸部分にほとんど意味がないであろう小さな逆三角形のポケットが付けられていることすら、それなりの背景があるように話せてしまえるテクニックというのは凄まじいと感じた。

筆者ならおそらく「あんまり意味はないんですけどね、ちょっとデザインポイントで付けてみました。こんなもんはコケオドシですわ~」としゃべってしまっているだろう。

川越シェフは「料理人の9割9分はメディアに出たいと思っている」とおっしゃっておられるが、そうではない料理人さんも多いと思う。けれども出たいと思っている人が多数いるのは事実だろう。
それは産地企業や製造業も同じで、9割9分とは言わないが、過半数の人はメディアに出たいと思っているのではないだろうか。
意外に産地企業や製造業の方も自己主張、自己顕示欲は強い。

川越シェフが語っておられることは販促プロモーションに活用できる考え方である。

産地企業や製造業が黙々と良い物を作っていてもそれだけではなかなか日の目を見ることもない。
川越シェフが開業したころはメディアを通じてしか発信することができなかった時代だが、現在はインターネットのツールを使えばタダみたいな値段で自己発信ができるご時世である。
これを活用しない手はない。

そういえば先日、某原料メーカーの幹部が「発信が重要なことはわかってるんです。でも面倒くさいんです。突き詰めて考えれば僕らはそこまで追い詰められていないということなのかもしれません」と語ってくださった。
これは偽らざる本音だろう。

そういう意味では日本の繊維製造業は実はまだ余裕があるのかもしれない。

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