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南充浩 オフィシャルブログ

利益を得ることはボッタくりではない

2020年1月20日 考察 3

適正な、あるいは適正でなくても少しくらいは利益をいただかないと、どんな事業でも継続することが不可能になる。

共産主義の権化みたいな人は「国がすべて支給しろ」というが、それをやった結果、ソビエト連邦は崩壊し、中華人民共和国は経済成長できずにいた。

なのでイデオロギーに関係なく、利益をもらわないことには経済は循環しない。

 

個人的には飲食にはまったく興味がない。

外食はサイゼリヤか牛めしの松屋、なか卯、つるまるうどん、あたりで十分だし、酒を飲むときは鳥貴族か鳥二郎、勝男あたりで十分で何の不満もない。何なら1か月間このローテンションで暮らしても大丈夫なほどだ。

人生において、ナンタラホテルでフランス料理を食べたことも何度かはある。個人的な感想をいうと、値段が高い割にそんなに美味しいとは感じなかった。

定期的に味わいたいかと問われたら、答えはNONである。今後、一生食べなくても何ら支障はないほどである。

 

そんな当方だが、大のキムタクファンなので(笑)、電車の中でのおば様たちの熱弁を耳にした結果、昨年11月ごろから「グランメゾン東京」というドラマを中盤くらいから観始めた。

これは当方が一生食べに行かなくても何ら痛痒を感じないフランス料理店を舞台にしたドラマである。

キムタクさん独特のイキり方とか、登場人物の多い群像劇とか、目を引く点は様々あるのだが、テーマの一つにフルコースのメニューの開発というものもあった。

フルコースのメニューを開発するために、膨大な試作を繰り返す。それなりに高額そうな食材を何度も何度も仕入れては試作する。

ドラマでは描かれていなかったが、当然、厨房のスタッフは残業、早出続きだろうと思う。タイムカードはすごいことになっていたのではないか。

 

で、思ったことは、これが事実に近いのなら、そりゃフランス料理が高額なことも理解できるということである。

 

・試作するたびに使われる食材代

・スタッフの残業代

・厨房の水道光熱費

 

に加えて、

 

・開発にこぎつけるまでにかかった膨大な手間賃

 

などが、加算される。

逆に加算されなければ店は潰れてしまう。

ドラマを観ただけでもざっとこれだけの費用が発生している。

 

いまだにちょくちょく見かけて暗澹たる気持ちにさせられるのが、ネットスラングでいう「原価厨」である。原価の高いとか低いとかを誇り、「原価が●●円なのにボッタくっている」という人々が少なからずいる。

計数管理の授業でも基本中の基本として教えられることだが、原価そのままで売れば、赤字になってしまう。経費を吸収できないからである。

作るのに100円かかった物を100円で売れば、製造費以外の経費を差し引けば赤字になる。お分かりだろうか。

 

そしてこれはフランス料理に限らず、衣料品ビジネスでも同じことである。

 

「トヨタのヴィッツは 原価20万円ものを180万円で売ってるからボッタクリだ!」→「原価で欲しけりゃ自分で作れ」

https://kogusoku.com/archives/25435

 

こんな言説とか本当にアホじゃないかと思う。

 

利益を乗せないとトヨタ自動車自体が立ち行かなくなるし、ひいては傘下の協力工場・契約工場も倒産してしまう。

 

もちろん、高くて粗悪品は論外だが、それなりの品質の商品には利益が乗せられて当然である。そうでなければメーカーも小売店も倒産し、失業率は高まり、社会は破綻してしまう。

一体何を考えているのだろうかと不思議でならない。

 

逆に安くて良い商品が欲しいなら、ユニクロに代表される大量生産方式しかない。

そりゃ工夫次第では幾分かは販売価格は下げられるだろうが、20万円の車なんていうのは無理である。たしかインドのタタが何年か前に25万円の車を作っていたと記憶しているからそれでも買ったらどうか。

トヨタのヴィッツが300万円とか500万円ならボッタくりと叫んでもかまわないだろうが、180万円なら適正利益でしかない。

 

例えば、ラグジュアリーブランドの商品の製造原価率は決して高くない。しかし、高額な価格で販売されているし、購入者は概ね満足している。

商品の中では香水が圧倒的に原価率が低いと言われているが、それとても愛用者が少なからずいる。

当方も、ありのままの自分なら華麗なる加齢臭が漂っているので、香水を使うが、ジバンシィのウルトラマリンを持っている。

今はネット通販で検索すると2000数百円くらいで、5年前に比べると数百円値上がりしていると感じるが、それでも一度買えば半年以上はなくならないから、当方でも買えるし、それほどもったいないとは思わない。

 

商売の基本は、いかに安く作って・仕入れて、高く売るかである。

我が国経済がデフレで苦しんでいるのは、そこができていないからだといえる。

 

何度も繰り返すが、粗悪品でのボッタくりは論外だが、基準値を満たす品質であるなら適正な利益を取るべきである。

原価厨のいう方策で経済成長はあり得ない。

 

どうでもいい余談だが、大好きなキムタクさんの腕組みの姿勢にどうにも昔から違和感がある。

 

わきの下に指を入れて親指を必ず立てているのだが、おっぱいを手ブラで隠しているようにしか見えないし、もしくは指影絵の鳩か蟹にしか見えないのだが、この姿勢はカッコイイのだろうか。

 

 

指影絵の本をどうぞ~

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2020/01/20(月) 11:10 AM

    衣料品だと、サイズ、色とかでも相当数の在庫を持たないとならないし、実店舗で販売員付けて売ると、そこでも費用掛かるので、原価率は必然的に低くないと成り立たないっすよね。その上、季節とトレンドで商品入れ替えて不良在庫の処分までしなきゃダメなわけで、ちゃんと考えないとすぐ立ち行かなくなりそうですw
    ちなみに、うちの工場はインチキコンサルタントにその気にさせられて、それまで部品の受注生産しかしてなかったのに、アホな社長は完成品の自社製品を作ると言い出し、ロクに原価計算もせず(というか全くのどんぶり勘定w)、全然利益出ていそうもありません。しかも、不良率が高いのに、それすら社長には報告しないでいます。ホント、アホばっかw

  • たまも より: 2020/01/20(月) 1:14 PM

    長年ブログを愛読しています。非衣料用繊維の事業展開を研究テーマにしている者です。
    原価厨…はじめて聞きました。固定費とか、粗利と経常利益の違いとか、高校の現社で教えるべきですね。わかりやすく教えられるはずです。大学生に教えると感心されるのが悲しいですが。

  • 読者 より: 2020/01/22(水) 11:44 AM

    オチw
    自分は冬でも腋汗かくのでキムタク流腕組みは出来ないですね。腋汗かきでなくてもしませんがw

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