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南充浩 オフィシャルブログ

処分セールは「絶対悪」ではない

2020年1月17日 トレンド 0

500人とか1000人とか数千人の熱烈なファンに商品を売っているような小規模ブランドなら、売れ残り品はほぼ出てこない。出たとしても1型数枚程度だろうし、それとてもSNSでしっかりとファンと交流していればすぐに売りさばける。

 

しかし、実店舗やネットショップを構え、不特定多数になるべくたくさんの商品を売ろうとするようなブランドや店なら必ず売れ残り品は発生する。全型が定価で完売することはありえない。

これを売るにはどういう方法が考えられるだろうか?

 

1、チェーン店の場合、その売れ残り品が売れやすい店に店舗間移動する

2、値下げして売り切る、売り切れるまで値下げし続ける

 

という二つの方法がある。

チェーン店の場合、立地や客層によって売れ筋が異なる場合がある。A店では売れ残っているが、B店では完売しているというケースは珍しくない。

例えばユニクロだ。当方は天王寺、難波、心斎橋でユニクロのハシゴをすることがある。

そうすると天王寺店には残っているが、心斎橋店では完売していることもある。また難波店では完売しているのに天王寺店では売れ残っている場合もある。

こういう場合は完売した店にその売れ残り品を集めるというのがもっとも合理的な考え方だといえる。

 

店舗間移動という仕組みがないブランドやショップだった場合は、売り切れるまで値下げし続けるというのが、常套手段である。

 

 

 

いまだに毎月、のべ6日間くらいはバッタ屋の店頭に立って販売員をしている。販売員としての当方はそんなに上手いわけではないから、何が売れるのかさっぱりわからない。(笑)

毎日来る客層は同じようでどこか異なる。また個人個人の欲しい物が異なっている。このため、売れる商品と売れない商品があり、売れ筋商品が欠乏すると、途端に店全体の売れ行きが鈍くなる。

そういう場合何をするかというと、処分セールともいうべき値下げを行う。この値下げがお客に響けば売れ行きは持ち直すし、響かなければもう一段の値下げを行う。

客が納得できる価格ならそれで売れるし、そうでなければ売れないから、客の求める価格に合わせなくてはならない。

服に限らず、食品でも総菜でも売れ残り品は、廃棄したくなければ、値下げして売り切るほかない。

 

しかし、近年、「値引き販売は絶対悪だ」というような風潮がある。

 

たしかに粗利益を稼ぎたいのなら、値下げはすべきではないが、ずっと抱えていても動かない商品なら値下げするしかない。売れないままに在庫を抱えていても資金繰りが苦しくなるだけの話で、どこかの時点で在庫は現金に換えなくてはならない。そうでなければ手元の資金がどんどんと減っていくだけである。

定価で売れないのなら、値下げするしかない。

だから当方は「値引き販売は絶対悪だ」とは全く思っていない。せいぜい「必要悪」くらいではないかと思っている。

 

SNSの小規模なコミュニティー内ですべての商品を売りさばけるような小規模なブランドはこの限りではないが、年商規模数十億円以上になるブランドで、すべての商品を毎シーズン売り切るということは不可能に近い。必ず何百枚くらいは売れ残ってしまう。

その何百枚かは値下げして売り切ってしまわないと、在庫は溜まる一方になってしまう。

 

それに値下げ販売には利点もある。それは新規客を捕まえることができる可能性が高いことである。

馴染みのないブランドや店で、いきなり高い商品を買おうとする人はそんなに多くない。

「あの商品よさそうだけど、ちょっと高いから買ってみて失敗だったら嫌だなあ」

と思っている人は少なからずいる。

 

値下げするとこういう人が買いやすくなる。むろん、値下げ専用の顧客になってしまう可能性もある。しかし、試してみて良かったら次回は定価で購入してくれるようになるかもしれない。値下げ専用の顧客になってしまってもそれは悪いことではない。値下げしたときには必ず買ってもらえるようになる。値下げ品も買ってくれる人がいないと売りさばくことはできないから、各店とも「バーゲンだけの客」というのも必要不可欠な存在である。

 

そして、値下げされた物を好むというのは世界共通の消費者心理であるともいえる。何も日本人だけに限ったことではない。

 

「仏でセール開始 長期ストの影響か軒並み大幅値引き」

https://senken.co.jp/posts/sale-france-200115

パリの百貨店は3日にプライベートセールを始めた。公式セール初日には最大割引率60~70%、週末には百貨店だけでなく人気のパリ・ブランドもさらに値下げをし、過去に例をみない安売りとなっている。

とあり、ストの影響とはいえ、大幅値引きを慣行している。

そして、

市民の85%がセールを特別視していない。一方で80%がセールを利用するとし、予算額は193 ユーロ と前年並み。衣料品の年間消費量の30%を年2回のセールが占める。

とある。

フランス人の80%がセールを利用しているのであり、これは我が国の消費者志向とも変わらない。

アメリカだって毎年ブラックフライデーがあんなに盛り上がるのはそれだけ値下げ商品を求める人が多いからだろう。

 

フランスの例でもあるように、売上高の減少理由が、ストという特異な状況によるもので恒常的ではないとはいえ、売上高の減少をカバーするには、破格の安売りを行うしかないということである。

 

これを見ても「値引き販売は必要悪」だということがわかるだろう。

売れ残り品は必ず発生するのだから、値引き販売を「絶対悪」のように嫌っても何の益もない。それよりも如何に上手く、効率的に活用するのかを考えた方がずっと健全だといえる。

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