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南充浩 オフィシャルブログ

裁断が分からない企画担当者?

2013年5月9日 未分類 0

 昨日、OEMを手掛ける人たちとお会いした。
OEM会社を経営する友人は「納期ギリギリの修正に対しては、『これが最後になりますよ。今から裁断に入りますので』と念を押すようにしている」という。

そうでないと、「やっぱりあの部分も修正したいですぅ~」という依頼が来てしまうからだ。

ところが、別のOEM会社の課長さんは恐るべきことを話し出した。
「いや、それで分かってくれる先はまだ良心的です。東京のヤングレディースブランドなんて『もう裁断してしまいましたよ』と言っても『え?裁断ってなんですか?どうして修正できないんですか?』と平気で尋ねる先が多数ありますよ」という。

通常、生地を型紙通りに裁断して、裁断したパーツを縫製して製品が出来上がるわけである。

生地を型紙通りに裁断するともう修正はできない。
修正したい場合はその裁断したパーツをすべて破棄して、型紙作りからやり直す必要がある。
想像するだけで、これがものすごい生地と時間のロスになることがおわかりいただけるだろう。

これがわからないとすると、それらのブランドの企画担当者は専門学校生以下のド素人と呼ばれても仕方がない。

しかし、残念なことにこれが現実で、トレンドといわれているヤングブランドの企画担当者のレベルである。
その程度では、グローバルSPAに価格でもトレンド提案力でも物作りでも負けてしまうのも当然の結果といえる。

苦戦が続いていた日本の家電メーカーに対しては「物作りに注力しすぎて、革新的なイメージの打ち出しやデザインやライフスタイル提案が下手くそ」と批判がなされてきたが、ファッション業界は「物作りに注力しなさすぎ」とそしられても抗弁はできない。

製造業者が製造を支えるのは業務として当然だが、そこに胡坐をかきすぎているブランドが多すぎるのではないか。

製造のことを知らないから自由な発想ができるという利点はたしかにある。
けれどもそれはド素人がマグレで企画をヒットさせたに過ぎない。

勢いがあるうちはそれでも良いが、一旦退勢となった際にド素人では縮小する生産にはとても対応できない。
大ヒットしたヤングレディースブランドが突如として沈んで、あっけなく倒産・ブランド譲渡に陥るのはそういう要因もあるのではないかと感じる。

生地作りも洋服作りも決してオートメーションでできるわけではない。
原料を機械にブチ込んで、スイッチを押して数時間待てば服が出来上がるわけではない。

織布するにも人の手で何時間もかけて整経しなくてはならないし、縫製だって人間がミシンを踏んでいるのである。
洗い加工だってほとんどが手作業である。

アパレル業界は製造工程を消費者に見せなさすぎたために価格競争一辺倒になってしまったが、消費者だけではなく、自社のスタッフにさえ見せなさ過ぎて、「ムード」「雰囲気」「何となくの直感」だけでの企画がまかり通るようになってしまったのが実情であろう。

スタッフのレベルを底上げしないと、ファッション業界が盛り上がることは今後二度とないだろう。
それこそグローバルSPAの後塵を拝し続けることになる。

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