工夫すればコストを抑えながら凝ったデザインの商品を製造することもできる
2019年12月19日 お買い得品 0
今日は気楽な感想などを。
先日、ライトオンのブラックフライデーで500円に値下がりしたネルシャツを買った。
値段的に安いから買ったのだが、製造の観点から見ると良く考えられていると思う。
濃いグレーと薄いグレーの切り替えシャツで、一見すると生地が二種類使われているように見え、安値で販売するのは難しそうに思える。
この商品は恐らく、何シーズンか前の在庫品で、それで500円にまで下げて売り切ったのだと思う。
後日訪れたら完売していた。並んでいた枚数もそれほど多くなかったし、500円というバッタ屋並みの値段なら完売しても当然である。
このシャツは、何となく、悪のウルトラマンであるウルトラマントレギアの人間態である霧崎が着ている白と黒の切り替えシャツっぽい。
変身アイテムであるトレギアアイを買って自宅で霧崎ごっこができると思ったが、まだトレギアアイは購入していない。
二種類の生地を使った切り替えシャツを作る場合、生地に裁断ロスが通常のシャツよりも多く出てしまい、製造コストが増える。
このため、1990円とか500円とかのそんな安い商品価格で販売することは難しい。
しかし、このシャツは、生地にロスが出にくいようによく考えられており、自宅で感心してしまった。
種明かしをすると、このシャツは一見すると2種類の生地を使っているように見えるが、実は1種類の生地しか使っていない。薄いグレーは実は濃いグレーの生地の裏側なのである。
まず、このグレーの生地は綾織りである。
ここからは綾織りの簡単な解説を書くので、生地に詳しい人は読まなくてもいい。時間の無駄である。
綾織りというのは経糸2~3本に対して、緯糸1本の割合で織った生地で、斜めに織り目が現れれる。経糸2本よりも経糸3本の方が織り目の傾斜は急になる。
表側は経糸がメインで現れるのだが、裏面は緯糸がメインで表面に出る。
デニム生地も綾織りの一種で、経糸にインディゴブルーに染めた糸、緯糸には染めていない白い糸を使って織る。
デニム生地のブルーは経糸のインディゴブルーが表面に出てきたもので、裏側が白っぽくなるのは緯糸の白が裏側に出てきたものである。
このネルシャツはその原理を利用している。
濃いグレーは恐らくは濃いグレーか黒に染めた経糸で、これが表側にはメインで出る。裏側の薄グレーは白い緯糸がメインにでた裏側だと考えられる。
綾織りの特徴としては表側は経糸が出ているとはいえ、経糸と経糸の間からわずかずつではあるが緯糸が見える。デニムがどんなに濃紺でもペタっとした紺色にならないのは、隙間から緯糸の白が覗いているからである。
このネルシャツの生地だと経糸は濃いグレーか黒に染まっていて、緯糸は白だと考えらるから、濃いグレーの表側がペタっとした色合いにならないのは、緯糸の白が隙間から顔を覗かせているからである。
通常のデニムを裏側使いにすれば、肌に当たる方がインディゴブルーになるため、肌着や素肌にブルーが移染しやすくてあまり技法としては使われない。
しかし、このネルシャツの生地はインディゴ染めでもないし、芯白に染めているわけでもないから、裏使いにしてもデニムの様には移染しない。
だから、裏面使いをした。
2種類の生地を使った切り替えに見せて、その実は同じ生地を裏返して使って切り替えデザインにしているところが、よく考えられていると思う。
製造責任者はライトオンになっているが、恐らくは商社経由のODM製品ではないかと思う。
これと同様に感心したのが、以前にもこのブログで書いた、今秋のジーユーの切り替えオックスフォードボタンダウンシャツである。定価は1990円で、最終的には990円に値下がりしたが、そこまで値下がりする前にほとんどが完売してしまった。
ストライプ×黒またはネイビー×グレーまたはブルーという組み合わせで、ストライプの部分の生地は定番として業界に広く流通しているいわゆる「在り生地」だと思われる。
無地のネイビーとグレー、ブルーはジーユーの無地オックスフォードシャツで使われている生地と共通である。
黒無地はジーユーの商品には使われていないから、これも在り生地ではないかと思われるが、この切り替えシャツには無地バージョンもある。
無地バージョンにも黒無地生地は使われているからそれと共通で使用することでコストダウンを図っている。
在り生地はベーシックとして業界に広く流通しているため、生地値は安い。それをいくつかの商品で共通して使うことによって使用ロットを増やしてさらにコストダウンを図る。
一見すると凝った造りに見えて、実は製造コストはそれほど高くないという優れた商品の組み立て方で、恐らくはジーユーが使っているODM先が優秀なのだろうと思われる。
商売の基本は値打ちがありそうな物を安く作ることだから、ライトオンのこのネルシャツもジーユーの切り替えオックスフォードシャツも衣料品ビジネスの見本のような商品だといえる。
ともすると、製造コストを引き下げるためにありふれたベーシック商品を企画してしまい、それがさらに価格競争に巻き込まれるわけだが、こういう工夫は他ブランドも見習うべきではないかと思った次第だ。
ウルトラマントレギアの変身アイテムであるトレギアアイをどうぞ~