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南充浩 オフィシャルブログ

大手スーパーの衣料品の再振興は不可能に近い

2019年11月12日 企業研究 0

大手スーパーの衣料品の苦戦が止まらない。

先日、驚く話を聞いたのだが、某大手スーパーが衣料品不振の打開策として、高額なカネを支払って「SPAとは?」という講義を毎月受けているというのだ。

え?今更SPAの基礎知識?

そんな話ならその10分の1の値段で当方が講義するのに。

 

正直なところ、今更SPAの基礎知識を講義してもらって衣料品不振を打開できると思っているレベルなら、衣料品売上高が浮上することは絶対にない。

ちょっとアホすぎて笑えてくる。

 

大手スーパーというのはもともと衣料品が営業利益の稼ぎ頭だった時代がある。80年代~90年代前半だ。バブルのころには高い服が飛ぶように売れて、国民全員が高い服を買っていたと思われがちだが、バブルのころは大手スーパーの低価格衣料品も飛ぶように売れていたのである。

だから「洋服の低価格化」が2000年代から急に始まったという認識は、全く間違っていて、80年代にも90年代にも低価格衣料品は存在していたし、好調に売れていたのである。

 

当方が大学を卒業して最初に入社した洋服販売チェーン店は、イズミヤの子会社だった。会社の歴史を正確に覚えているわけではないが、たしか、もともと別企業として存在していたが、いつのころからかイズミヤの傘下に入ったという経緯だったと記憶している。

この会社にはイズミヤから出向してきた専務がおられた。経歴をつぶさに存じ上げていたわけではないが、概略だとイズミヤの食品を担当した後、系列のホテルに勤務して、衣料品チェーン店に来たということだった。

 

大手スーパーは、この専務のように人事異動であらゆる部署を経験する。それがプラスに作用する場合とマイナスに作用する場合があり、今、衣料品が苦戦しているのはそれがマイナスに作用しているからだといえる。ゼネラリストだけを養成していてスペシャリストが存在しない。

全員がゼネラリストの組織なんて上手く行くはずもない。さらにいえば、大手スーパーは、衣料品に関して言えば、そのゼネラリストとしての資質も怪しいものである。

 

バブル期から何事につけても消費者のリアルな声というのが重視されるようになった。

まあ、それはそれでよいのだが、テレビタレントでも雑誌のモデルでも「素人化」が進んだ。大手スーパーも同様で、以前にこのブログでも書いたが、

 

https://senken.co.jp/posts/itoyokado-191016

 

の記事の中に

 

かつては業界をリードする商品力と効率を誇ったが、消費者心理を優先するとして〝素人〟であることが重視された時期が長く、人材育成が不十分というものだ。そうした状況のもとで大幅圧縮は回避できなかった。

 

という一節がある。「素人の気持ちがわかる」ということは「素人であるということ」とは全くの別物だが、スーパーの首位だったイトーヨーカドーですらこの体たらくなのだからスーパーマーケットという業態が苦戦するのも当然の結果だといえる。

 

オチマーケティングオフィスの生地雅之さんが、ブログでときどき書いておられるように、求められることは「総素人化」ではなく、「素人の目を持ったプロ」である。

これはスーパーマーケットに限らず、百貨店、アパレルメーカー、セレクトショップ、ネット通販企業すべてに通じる。

 

素人の気持ちがわかるプロ

 

これこそがどの分野でも求められているが、なかなか養成するのは難しい。

 

ただ、今の大手スーパーで、衣料品の立て直しは至難の業である。

何せ、それを主導できる人材がいないし、今頃「SPAとは」という基本的な講義を受けている状態である。また現場にもスペシャリストは育っていない。

さらにいえば、消費者は誰も大手スーパーの衣料品に注目していないし、興味も持っていない。

 

ユニクロでもジーユーでも好調な理由の一つとして、消費者が注目しているという点がある。もちろん、彼らが注目を持たせるように普段から施策を行ってきた結果である。

低価格というだけでは注目が集まらない。それだけで注目が集まるならフォーエバー21はもっと売れただろうし、コックスは今頃黒字転換できていただろう。

 

イオンには、疲労回復に効果のあるセリアントという素材を使った肌着類がある。

検索して見ればかなり大掛かりなサイトが作られている。しかし、この商品を知っている人がどれほど存在するだろうか?

当方も知らなかった。某素材メーカーの社員に教えてもらった次第である。

この手の素材は概して眉唾が多いが、一応科学的根拠はあるようだし、某素材メーカーの社員も絶賛するほどである。だいたいにして素材メーカーの社員というのは同業他社の商品に対して評価が厳しい。にもかかわらず、絶賛するくらいなのだから、相当に良い素材なのだろうと思う。

繰り返すが、しかし、まったく知られていない。消費者はおろか、業界内でもあまり知られていない。

 

だから今の大手スーパーはいくら「良い物」を開発したところで売れにくい。消費者の注意を喚起するという作業がまったくできていない。

アイドマの法則でいうと、attentionもinterestも実現できていないのが今の大手スーパーの衣料品である。

「SPAとは」なんていうアホみたいな講義を受ける前に、attentionを喚起してinterestを持ってもらえるように知恵を絞るべきだろう。それができなければ大手スーパーの衣料品は、近い将来、肌着や靴下などの実用衣料を除いてすべて不要になるだろう。

 

 

そんなイオンのトップバリュの冷凍ブロッコリーをどうぞ~

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