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南充浩 オフィシャルブログ

消え去ったストールのブーム

2019年11月6日 トレンド 1

最近のファッショントレンドの変化は緩やかだと言われる。実際に業界にいても、細かな認知できないほどのトレンドの変化は早いのかもしれないが、ビッグトレンドといわれるものはあまり変化がないように感じる。

最大のトレンド変化はビッグシルエットだろうか。

エディ・スリマンのディオールオムから端を発したピチピチ・ピタピタのタイトシルエットが業界標準となって12~13年が過ぎたころ、80年代後半から90年代半ばにかけてのビッグシルエットに揺り戻しがあった。

正直なところビッグシルエットは奇抜な物が好きな一部の若い世代の一過性トレンドに終わるのではないか、と当初は思っていた。

それが2015年頃のことで、そこからジワジワと勢力が拡大し、2019年には多くのブランドの洋服のサイズ感が大きくなっている。

理由はさまざまあるだろうが、一つにはネット通販の増加もあるのではないかと思う。ビッグシルエットなら「小さすぎて着られない」という心配がほとんどないからだ。

ネットで洋服を買うにあたってこれほど便利なことはない。

 

さて、ビッグシルエットは4年くらいかけてジワジワと勢力を伸ばしたトレンドだが、ちょうど同じ2015年頃を境として急速に廃れていったトレンドがある。

お気づきだろうか?ストールである。

冬のマフラーは今でもマスアイテムである。理由は防寒である。

マフラーで首元を温かくしていると、厚着しなくてもそれほど寒くない。(北海道・東北・北陸除く)

 

しかし、春夏秋のストールはどうだろうか。

平均気温でいうと3月は半ばから下旬まで肌寒い日が多い。4月の初旬も冷える日がある。しかし、4月10日以降はグングンと気温が上がり夏になる。秋の始まりは遅く、例年でも10月半ばからである。今年の10月なんかは気象情報によると史上まれに見る高温だったというから、秋めいてきたのは11月に入ってからということになる。

4月10日から10月20日までの半年間で、首にストールを巻いている人が今どれほどいるだろうか?当方はほとんど見なくなったと感じている。

ストールブームの始まりはいつ頃なのかははっきりとは知らない。記憶をたどってみると、2008年とか2009年にはそれなりに暑い時期でも首にストールを巻いている人が多かった。

思い出してきたが、2008年には何枚か当方もストールを買っている。たしかレイジブルーで1000円くらいに値下がりしたレーヨン100%のストールである。

もう少し前にも何本か買っている記憶がある。2006年とか2007年とか。

 

当初、当方はストールブームを馬鹿にしていた。特に真夏に汗をかきながら巻いている人たちを見て「意味不明」だと思った。暑いんならストールを外せよ、とも思っていた。

ストールブームの原因はなんだったんだろうか?中尾彬の人気だろうか?

 

で、暑がりなのでさすがに真夏に巻こうとはブーム時も思わなかったが、春と秋の過ごしやすい気候なら大丈夫だろうと思って、巻き始めた。

しかし、2015年頃から愛好家を除くと、春夏秋の巻き物着用者は激減した。

 

ブームが廃れた理由はなんだったんだろうか?中尾彬人気の陰りだろうか?

 

アパレル市場規模の伸び悩みから、国内の生地工場はオリジナル製品化を進めている。オリジナル製品として取り組まれる確率が高いのが、ストールである。

 

 

 

理由は

・縫製が簡単(真っすぐに二辺ないし四辺を縫うだけ)

・パターンが要らない

・ワンサイズで済む

・色、柄など以外には複雑なデザインが要らない

などだろうと考えられる。

 

また、シルクなど衣料品化するには高額になりすぎる素材でも、ストールならさほど高額にならずに済むということもあるだろう。

生地工場のオリジナル製品の練習台としてはうってつけの商材だといえる。

 

2009年とか2010年ごろはこぞってオリジナルストールが提案されていたが、はっきり言って供給過多・提案企業過多だと思っていた。しかし、世の中のブームも手伝って、上手くやれば売り上げが稼げる企業も出てくるのではないかと思っていた。

しかし、2019年の今はそうではない。

明らかにストール市場は縮小している。統計がないから体感でしかないが、売り場の数や取扱品目は明らかに減っているし、着用者も減っている。

となると、ストールのみで収益を確立させることはかなり難しい。

 

それでも産地関係の展示会に行くと、未だにストールがズラリと並んでいることが珍しくない。

同じ産地内でも何社もストールを提案していて、これだけ需要が減っているのに、どこに売るんだろうか?と疑問を感じずにはいられない。

 

例えば、すでに知名度を確立しているブランドはその限りではないが、無名のストールブランドは繊維産地に犇めいていて、今後さらに増える可能性が高い。

 

もちろん、製品化の練習台としてストールでとっかかりを作るということはあるだろう。しかし、多くの産地企業の展示を見ても、ストールがとっかかりとは思えない。とっかかりというよりは最終目的地のような感じすら受けることが少なくない。

既存のストールブランドから客を奪えるほどの「何か」があるのなら話は別だが、そうではないなら、ストールに注力していても今の需要量では収益化は難しい。

今、必要なことはストールをとっかかりとして、他のオリジナル製品作りを進めることではないかと思う。あからさまに準備をする必要はないが頭の片隅にはその考えは必要である。それさえない産地企業はストールの売れ残り在庫を抱え、さらに経営が窮地に追い込まれることになるだろう。

くれぐれも注意してほしい。

 

 

 

そんなストールをどうぞ~

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 comment
  • 細野 より: 2020/04/18(土) 6:05 PM

    今にして思うと、他にも消えていったのが飾りがたくさん付いたロングネックレスなどのアクセサリー、小さいレンズのメガネ、可愛らしいテイストの服とかもそうだったかもしれません。ビッグシルエットの服にストールはバランスが悪すぎて、私も使わなくなりました。ウールが入った暖かい物だけ残して、後は処分しました。首元を盛るアイテムはビッグシルエットが続く限り、しばらくお休みですね。

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