
繊維業界の製造加工業を取り巻くろくでもない環境
2019年10月24日 製造加工業 2
衣料品の縫製工場が厳しい状況に置かれていることはよく知られている。
しかし、製造関係者以外は具体的には知らないだろうと思う。同じ衣料品業界と言っても、セレクトショップ系の人や販売関係の人は、縫製工場のことはあまり考えたこともないだろうと思う。
当方だって、販売員をやっているときは、まったく考えたこともなかったから当然といえば当然なのだが、縫製段階一つ取っても、服の製造はリードタイムは長い。糸や生地段階まで考えれば製造のリードタイムは半年や1年ということになる。
だからセレクトショップ系の人や販売員が考えるように、売り切れた商品を数日で縫製して、数日で納品するなんていうことは基本的には不可能に近い。
最近は、ブログなどで発信のできる縫製工場が増えてきたから、徐々にはそういう製造の知識も高まっていくのではないかと思うが、まだまだ先は遠い。
そういう縫製工場の発信の一つとしてこれがある。
「アパレル工場の必然的な死」
https://note.mu/shakunone/n/ndc14409e0894
笏本縫製というネクタイ縫製工場のNOTEで、オリジナルのネクタイブランドも立ち上げて、全国の百貨店でポップアップも開催している。
今回は、縫製工場には起こりがちな、業界の汚い事例が挙げられている。
興味のある方はクリックして全文をお読みいただきたいが、めんどくさいという方のために、抜粋して引用しておく。
①単価の押し付け
諸々を加味して必要な金額が¥1500だった場合、請求金額は¥1500~となります。
しかし、相手側から要求される多くの場合が「ま、こんなもんでやってよ」といった軽い感じでの単価設定です。
その際に提示されるのは、希望価格の半額程度。※この¥700~¥800程度例えばシャツのボタンを10個つける作業が¥10とか、
計算してみたら、ロス時間を含めて2.4秒で一つ付けろと言っているに等しいのです。これだけでも不可能な時間ですし、一度でも道具を落としたり、トイレにでも行こうものなら、赤字になっていきます。こういったことをいくら理論立てて説明してみても聞く耳持たないといった現状が、今のパワーバランスの中で工場が困窮する原因になっているのです。
とある。某国内Tシャツ縫製工場は1枚200~500円の工賃で縫ってくれと言われたことがあるという。
もちろん、嫌なら断れば良いのだが、最近はちょっと変わってきた部分もあるが、15年くらい前までの縫製工場は仕事欲しさに断らないことも多かった。縫製の注文がアジアに流出してしまって仕事が激減しており、背に腹は代えられないという要素もあったのだろう。
また、ついでに言及しておくと、縫製に限らず工賃が安いために、ベテランの年金生活者ばかりを工員として雇用するケースが多い。
最低ベースは年金で保証されているから、いわゆる「昔のアルバイト的な賃金」で済むからである。これは、洋服の製造加工業に限らず、和装でも同じである。
和装でもベテランの年金生活者が低工賃で受けているので業界がまだ成り立っているという側面がある。和装の場合は、洋装よりも手作業的、工芸的な部分が多く、発注する側とすると「この道何十年というあの大ベテランが月々ン万円の料金で仕事を受けているのに、キャリアが浅く若いお前らがン十万円のカネを欲しがることは怪しからん」という具合になってしまっていて、工賃が低く抑えられたままとなっている。
和装も洋装もそれが理由の一つとなって若い人が製造加工業に集まらなくなっている。
②引き取り拒否
例えば、受注した商品が完成したら納品しますよね。
そんなことは当たり前の話なのですが、それを引き取らないケースがいくつかあります。
これはいまだに衣料品業界では存在する。今ではメールやファックスで受注する場合が増えてきてはいるが、以前だと「しゃべる」という業界独特の不文文化があった。
この「しゃべる」というのは、発注側は本当に「しゃべる」だけなのである。
「来春向けに〇〇着作りたいな~」
としゃべるのである。
で、それを聞いた(聞かされた)工場は〇〇着作る。
しかし、「〇〇着発注した」という証拠はどこにもない。ファックスやメールならまだ証拠となるが、本当にしゃべっているだけなので録音でもしない限り証拠にはならない。
そして、売れ行きが悪ければ発注側は「しゃべっただけやん」ということで生産物を引き取らない。
当方が業界紙記者となった20年前はまだ「しゃべる」ことが横行していて、業界には2019年現在もまだ「しゃべる」業者が少なからず残っている。
はっきりいうと引き取り拒否は下請法違反なので、訴え出れば確実に勝てるということを明記しておく。
③圧力
様々な不安要素を抱えながらも、現状を打開しようとしている工場も存在しています。
しかし、場合によっては取引先が障壁になる場合も少なくありません。
いわゆるファクトリーブランド等を作って、下請けとしての業態だけではなく、自社ブランディングに挑戦をしていた工場のケースがあります。ブランドとしての露出をすることで、認知を高めていった結果、
業界大手の企業がその価値に興味を持ってもらえ、商談の依頼が舞い込んできました。しかし、その大手企業とは、とある問屋を通しての間接的取引関係にあり、このまま話を進めてしまうと、中間の問屋としては面白くありません。工場としても、事の経緯と要望を問屋に伝えた上で動こうとしたのですが、「下請けの分際で、調子に乗るな」
「断らないと、今後の仕事は出さないぞ」
そんなことを言われたようです。結果的に、このまま話を進めた場合、今までの受注がすべてなくなる可能性がある為に、せっかく掴みかけたチャンスをあきらめなければならない状態になったようです。
これも業界あるあるで、衣料品業界は新芽を潰すのである。
基本的に新芽は潰されやすい。また、新芽を潰すのが趣味のような衣料品業界でもある。
対応策は2つしかない。ここで書かれているように涙を呑んで諦めるか、そのままやり続けるか、である。
そのままやり続けた場合、かなり厳しい状況が待ち受けているが、実は、その後まで突き抜けてしまえば、この業界は認知してしまうという不思議な性質がある。
で、10年くらいすると「ファクトリーブランド」としてそういう扱いを受けることになるし、何なら「製造加工業の希望の星」なんていう扱われ方をするようになる。
現金な物である。(笑)
とはいえ、これが実情で、一朝一夕に変わるものではない。
個人的には、工場はオリジナルブランドを作って、くだらない圧力に屈することなく、突き抜けてもらいたいと願っているのだが。
チェックリストによる少量・短納期生産モデル縫製工場実践ガイドをどうぞ~
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山田 哲生 より: 2019/10/25(金) 6:54 AM
和装業界に居ます。職人の時間給は3〜400円程度。大島の人間国宝的な職人さんも同じ。座り仕事は皆この程度です。それでも仕事が途切れるので廃業が続いています。年寄が年金の足しにというのは間違い。若い人の芽を摘むから。小売価格はもの凄く高価、ぼったくりの呉服業界というのが定説になっていますが、中間業者の搾取になっているだけです。我々も小さなブランド?を立ち上げましたが貧乏暇無し。難しいですね。
年金もらってるからどうにかやっていけてる、というのは個人経営のとんかつ屋とか天ぷら屋とかでも同じのようで、有名なお店でも普通に経営したらやっていけないから後継者は継がずに廃業ってのがあるそうっすね。うちの会社は金属加工業ですが、経営者が2代目のボンクラなので、やっすい仕事でも数が少ない仕事でも、何でもかんでも受けるのが正義と思ってて全く儲かってませんw
世の中の中小企業の経営者ってまともに計算もできない人がイッパイいるようで、「失われた日本のモノづくりガー」とか不祥事が起きると言われたりしますが、今の業界に入って分かったことは、昔からモノづくりは経営者も現場も適当だったけど世の中全体が適当だったから回っててネットもなかったから知られなかったってだけじゃね?ってことですね。そんなダメなうちの会社の取引先には、日本人なら知らない人は居ないような一部上場企業が何社もあるのがホントに不思議ですw