ジーンズカジュアルチェーン店各社の苦境
2019年10月15日 決算 0
正直なところ、当方程度のレベルでは建て直し策など思いつかないのが、ジーンズカジュアルチェーン店という業態である。
かつて90年代までは隆盛を誇った業態だが、現在、全国チェーン店と名乗れるのは、わずかにライトオンとマックハウスの2社のみである。
ジーンズメイトも残っているが規模的には縮小してしまったため、最早、大手でも全国チェーンでもない。
ジーンズメイトの2019年3月期決算は
売上高 85億7900万円
営業利益 9100万円
経常利益 1億500万円
当期利益 1900万円
と100億円どころか90億円も割り込んでいる。
しかし、その一方で、長年の赤字からは脱却できたので、一先ずの危機は去ったのではないかと思う。このまま中規模チェーン店として利益を確保できれば、生き残ることは可能ではないかと思う。
ライトオンの苦戦は以前にもこのブログで紹介した通りで、売上高縮小もさることながら、大幅な赤字が計上されているばかりでなく、新年度スタートである9月に30%減という大幅な客数減が起きており、今後相当な苦戦が予想される。
さて、残った全国チェーンのもう1社、マックハウスの業績も相当に厳しい。
すでに2019年2月期決算も
売上高 280億900万円(対前期比9・2%減)
営業損失 12億3800万円
経常損失 11億4700万円
当期損失 28億3100万円
と減収大幅赤字だったが、2020年2月期第二四半期決算も赤字幅はさらに拡大している。
売上高 133億6400万円(対前期比2・5%減)
営業損失 5億3500万円
経常損失 5億100万円
当期損失 7億9200万円
となっており、減収率は小さくなっているが、2019年2月期第二四半期よりも赤字幅は拡大している。
2019年2月期第二四半期では営業損失は2億200万円だった。
当然、通期見通しも赤字だが、正直なところ、今後下方修正が行われるのではないかと見ている。
それにしても、ライトオンは売上高700億円台を割り込むし、マックハウスは300億円台を割り込んでいる。
ときどき、非公式にジーンズチェーン店建て直しの意見を求められることがあるのだが、仕事ではないから積極的には受けない(要するに金は発生していない)。まあ感想を述べることはあるが。
それでも一応、今後の自分の何かに役立つのではないかと思っていろいろと考えてみるが、ジーンズカジュアルチェーン店を劇的に回復させる方法というのは見つからない。
もっと凄腕のコンサルタントに依頼すれば別だろうが、当方では無理である。
ジーンズメイトの縮小黒字化政策が正解に近いのではないかとさえ思う。
ライトオンもマックハウスも厳しいことには変わりないが、マックハウスは都心に店が少なく、郊外ロードサイド中心だという点がさらに厳しい。
なぜなら、都心では残念ながらマックハウスはほとんど無名である。
一方、ロードサイドには、苦戦傾向にあるとはいえ、しまむらという強敵がある。知名度・店舗数で圧倒的にマックハウスを上回っている。
最近はロードサイドでは影が薄いがユニクロも健在である。
しまむらを越える「何か」を提供できない限り、マックハウスに勝ち目はない。
それでも、決算短信によると
既存店売上高は、前年同四半期比0.4%減、既存店客数は5.7%増、既存店客単価は5.7%減となりま
した。
とあるから、客数自体は増えているから、根強いファンはいるということだし、レディースのトップスも売上高は前期比6%増で1億円ほど伸びている。
客単価が下がっているから、トップスの安売りが女性に受けたと考えられるが、明るい材料ではある。
しかし、短信の商品別売上高を見ると、メンズトップスとメンズボトムスが圧倒的で、メンズトップスが34億9300万円、メンズボトムスが27億6600万円で、それぞれレディースの2倍前後もある。
メンズ主体の売上高だということがわかるが、逆にメンズ主体で持ちこたえられているというのがすごいのではないかとも思う。
ユニクロもかつてはメンズ主体の店だったが、今ではレディースの方が売上高が多い。
マックハウスに限らず、ジーンズカジュアルチェーン店はメンズのイメージが強い。恐らく他社も同様で、主力であるメンズの落ち込みが苦戦の原因の一つではないかと思う。
ユニクロのようにレディースを伸ばして補填するというやり方はあるが、レディースというジャンル自体には競合が多い。その中で他社から客を奪うというのは並大抵のことでは実現が難しい。
メンズは浮気しないというが、こと低価格カジュアルにおいては、かつてほどナショナルブランドのステイタスもなくなっているから、PB主体のユニクロやしまむら、ジーユーあたりで良しとしてしまう客が増えても不思議ではない。
特に90年代までお得様だった、セレクトで買うほど金は持ってないが、ファッション好きな地方の若い男性という客層はジーユーに奪われているのではないかと思う。
河合拓さんの渾身の著書である「ブランドで競争する技術」には「3つの価値」が説かれてある。
1、機能価値
2、サービス価値
3、イメージ価値
である。
イメージ価値というのはラグジュアリーブランドや高額ブランドがお得意とする分野である。
今からでは、なかなか着手することさえ難しいが、ライトオンもマックハウスもこの「3つの価値」で自社が取り組める部分はどこなのかを精査してみてはどうか。
従来通りのジーンズカジュアル大好きオジサンたちが、鶴首して「カジュアルの楽しさを」とか「ジーンズ本来の良さを」とか言うだけではいずれ市場から退場してしまうことになる可能性が高い。
「3つの価値」が書かれてある河合拓さんの著書をどうぞ~