MENU

南充浩 オフィシャルブログ

サンモトヤマの倒産は仕入れ型専門店の限界では?

2019年10月3日 企業研究 0

先日、老舗の高級専門店サンモトヤマが倒産した。

http://www.tdb.co.jp/tosan/syosai/4615.html

負債総額は9億7150万円である。

 

設立は1955年だから、当方よりも15歳年長ということになる。

もちろん、設立された当時の雰囲気は当方は知らないし、当方はこの手の高級インポート専門店とは無縁に生きてきた。

したがって、利用したこともなければ、親しみも愛着もない。今後、どれほど金持ちになったところで、恐らくこの店で買い物をすることはなかっただろうと思う。

 

「グッチ」を日本に紹介したことや、64年には「エルメス」の国内販売権を獲得(2010年春に契約終了)したことなどが知られ、欧米ラグジュアリーブランドを日本に広めたという功績がある。

そういう意味では日本のファッション史に不可欠な名前だといえる。

 

当方より年長の60代、70代の方による解説記事を読みたいのだが、あいにくと見当たらない。

顧客でもなく、愛着も親しみもない当方から見れば、サンモトヤマの内情はわからないが、ビジネスモデルが行き詰ったようにしか見えない。

 

欧米のラグジュアリーブランドを選んで仕入れるというオーソドックスな仕入れ型専門店スタイルで、以前に公式サイトを見ると最近はオリジナル品も販売されていたようだ。

しかし、仕入れ型専門店は、今のご時世では企業規模を維持しにくい。たとえ欧米ラグジュアリーブランドを扱っていようとである。むしろ、欧米ラグジュアリーブランドがメインの方が厳しいといえる。

なぜなら、欧米ラグジュアリーブランドは、90年代後半からどんどんと直営店化を進めている。

サンモトヤマが日本に紹介したといわれる「グッチ」や「エルメス」も同じである。都心一等地の大型路面店、百貨店内のインショップ、などが国内のメイン販路である。

あまり知られていない欧米高級ブランドでさえ、日本で一定の売上高が稼げるようになると、ジャパン社を設立して直営店出店に転換する。ブルネロクチネリなんてその好例といえる。

 

そのブランドのファンなら、一部の品番しか置かれていない仕入れ型専門店よりも、直営店の方が多くの品番数を見ることができるから、そちらで買うようになる。

グッチファンならグッチの直営店で、ルイ・ヴィトンならルイ・ヴィトンの直営店で、というようになる。

コストパフォーマンスを考えるなら、ドン・キホーテで二割から三割引きで買う。

また最近だとラグジュアリー専門のネット通販を使うという人もいるだろう。

 

いずれにせよ、そのブランドのファンなら、仕入れ型専門店で買う必要がなくなっている。

 

仕入れ型専門店で買うという人は、ブランドよりもその店のファンだという人だろうということになるが、ブランドファンに比べて圧倒的に人口が少ない。

サンモトヤマに限らず、町場の高級ブティックが70年代~90年代まで隆盛を謳歌できたのは、ブランド直営店がほぼ存在しなかったからだと当方は見る。

もちろん、店のファンも存在しただろうが、恐らくは少数派で、ブランドの直営店が増えるにしたがって顧客はそちらに奪われていったのではないかと思う。

 

信用情報によると

1997/7期には約30店舗を運営し、年商90億2754万円を計上していた。

とあるが、これが限界点で、高級仕入れ型専門店で30店舗規模というのは、2019年の現在から考えると維持できるはずもない。

バブル崩壊直後から消費が低迷したと思われがちだが、百貨店婦人服の売上高ピークは97年だから、97年までは不況と言われながら、それなりに高額品が売れていた。アムラーのバーバリーブルーレーベルブームも97年である。

だから、サンモトヤマのピークが97年でもおかしくはない。

97年以降、ブランド直営店にどんどんと顧客を奪われていったのだろう。

 

仕入れ型の品ぞろえ専門店は基本的に商品が同質化しやすい。なぜなら、その商品は他社でも仕入れられるし、欧米ラグジュアリーブランドのように、ブランドそのものが直営店を出店するからだ。

品ぞろえで差別化しようとすると、よほどに珍しいブランドを常に掘り出し続けるか、SPA化するしかない。

近年、ビームスやユナイテッドアローズが有名ブランドの別注品を扱うのは、この2つの方策を足して二で割った折衷案だといえる。

箇条書きにするとこうだ。

 

1、珍しいブランドを発掘し続ける

2、SPA化する

3、別注品やコラボ品を増やす

 

である。

そして、もう一つ、仕入れ型専門店が生き残る方策としては

 

4、店のファンを増やす

 

と言うのがある。

しかし、これはなかなかに難しく、オーナーや店長、販売員、バイヤーなどがカリスマ化しないとダメだ。仮に個人がカリスマ化に成功したとして、その「カリスマ性」というのは他人には伝承できない。

 

品ぞろえは他店と同じだけど、あのオーナーが選んだのだから、それを買いたい

 

顧客にそう思わせる必要があるが、そう思わせるだけのカリスマ性を帯びれる人間はあまりいない。仮に帯びたとしても、それを20年後か30年後に別の人間に付与することはできない。

ひどく属人的な要素であるため、企業として見た場合、永続できる条件ではない。

 

面識はまったくないが、サンモトヤマは創業者の茂登山長市郎氏はそういうカリスマ性があったのだろう。そしてそのカリスマ性は後継者には付与できなかったということなのだろう。

カリスマ性に依存したビジネスモデルの場合、そのカリスマが去った後は崩壊するしかない。

その証拠にピーク時には30店舗あった店が、今では銀座と梅田の2店舗の正規店と、軽井沢のアウトレット1店舗の合計3店舗しかない。カリスマ亡き後の専門店としてはこれでも多いくらいで、どこか1店舗に絞るか、もしくは家賃の安い郊外に移転するかすべきだったのではないかと思う。

 

大都市都心では減った専門店スタイルだが、地方や郊外では地元に愛されている専門店というのはまだ存在する。都心までそう簡単に出かけられない層が利用するためだ。

 

当方のような外野からすればサンモトヤマの倒産というのは、現在の商流やブランド戦略においては、仕入れ型専門店の限界が露呈したようにしか見えないのだが、皆さんはどのようにお考えだろうか。

 

 

サンモトヤマ創業者の著書をどうぞ~

Message

南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ