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南充浩 オフィシャルブログ

過ぎたるは及ばざるがごとしか

2013年1月17日 未分類 0

 国内生地メーカーが斜陽となって久しい。
それぞれの生地産地には国からだけではなく、都道府県・市町村レベルからも何らかの補助金・助成金・支援金が支払われている。

生地メーカーの大半はかつて下請け的存在だった。
アパレルや商社から言われた通りの生地を織って納入するだけという仕事である。
しかし、そのうちに低価格なアジア諸国の工場へと、アパレルや商社の生地購入先も移っていった。
かつての下請け的気質の抜けない国内生地メーカーも多いが、「ガチャマン」と呼ばれた当時の活況は、今後何年経とうと逆立ちしようと戻ってくることはない。

そのため、生地メーカーにも下請けから脱して、新規事業の立ち上げや新規販路開拓が求められている。
行政からの支援金・補助金はそのためのものである。

自社の生地を使って、シャツやストールを作ってそれを販売するというのは、新規事業立ち上げのオーソドックスなスタイルである。

そういう製品を作っても発表する場がなくては誰にも知られることがない。
そのために製品を持ち寄る合同展示会に出展したり、産地が集まっての合同展示会を主催したりということが行われる。製品の合同展示会というと大規模なものだとIFFや東京ギフトショー、ルームスというあたりが有名だが、出展費用はお安くはない。
1ブース出展するのにだいたい30数万円~40万円が最低必要である。
これは出展料だけなので、ここに什器を借りたり、自社で装飾物を手配したりすると、1ブース出展するのに100万円近い費用が必要となる。

100万円の出費というと中小規模の生地メーカーにはなかなか捻出できるものではない。
そういう場合に行政からの補助金が頼りになる。
全額とはいかないまでも半額でも補助してもらえると大いに助かる。

筆者はこういう補助金の使い方はある程度賛成である。

しかし、この補助体制も都道府県・市町村によって温度差があり、過剰に手厚い行政もある。

以前書いたことがあるが、5万円の参加費用が必要な生地メーカーの合同イベントがあった。
ここに出展するのにその5万円を行政から補助金が支払われた産地があり、驚いてしまった。
生地メーカーの社長連中には、5万円くらいなら一晩の飲み食いに使う猛者がけっこういる。
その一晩を我慢すれば捻出できるのではないか。

また、2011年くらいから始まった小規模アパレルの合同展示会がある。
これの参加費用は8万円である。
そして、小規模アパレル各社がこの8万円を行政から補助してもらったということは聞いたことがない。
社長とスタッフ合わせて3~4人程度のアパレルばかりが参加している。彼らの年商規模は知れている。
おそらく1億円~3億円程度だろう。中小生地メーカーと年商規模はさほど変わらない。

なぜ小規模アパレルは行政の補助対象ではないのか。
ちなみに小規模衣料品専門店だって行政は補助しない。
国内繊維産業を振興するというなら原料段階の川下に属する部分も振興する必要があるのではないのか。

あまりに手厚い行政の保護は、わずか5万円のイベント参加費用さえも「補助金をもらって当然」という産地の甘えを生んでいると感じられてならない。

で、実際に甘やかされた産地が10年前と何か変わったのかというとあまり変わっていない。
むしろ、同じ産地内でもそういう組合に属していない企業の方が、着々と製品化を進めていたり、ブランド化が軌道に乗りつつあったりする。

手厚すぎる保護は、逆に産地の行政依存体質を深めているのではないかと思うのだが。

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