MENU

南充浩 オフィシャルブログ

消費者に知られている生地産地と知られていない産地の差とは?

2019年4月22日 産地 0

日本国内に生地産地はいくつもあるが、一般消費者にも広く知れ渡っているのは、岡山・広島のデニムと、今治タオルの2つだろうという話になった。
 


 
オールユアーズの原康人さんと1年ぶりくらいに飲んでいた席上での話題である。
当方よりも8歳くらい年下の原さんだが、一目も二目も置いている。
世の中に服の製造、素材に詳しい人は五万といる。服のデザイン企画に優れている人も五万といるが、その両方を兼ね備えている人は数少ないからだ。
服の企画マンでありながら、ISKOやクラボウで素材開発までやってしまうという本職の生地屋顔負けの能力である。
 
で、その原さんが「岡山広島のデニムと今治タオル、その他産地の違いはどこにあると思いますか」という話題を出した。
 
その答えは、
 

両産地とも、製品製造がその産地内で完結できる
 

という点である。
 
岡山広島には、デニム生地工場だけではなく、縫製工場、洗い加工場、染色加工場が揃っている。児島・井原・福山でジーンズを大量生産することができる。
今治タオルは言わずもがなである。他地区に仕事を回さずに今治だけでタオルを製造している。
じゃあ、大阪の泉州タオルも同じではないかということになるが、ブランディングの拙さも手伝って、知名度では大きく水を開けられてしまっているというのが、外野から見た現状である。
 
それ以外の産地は生地製造だけで終わっており、製品化するのはアパレルやブランド任せになっている。
 
播州織の西脇産地、フェイクファーの高野口、麻の湖東、和歌山ニットなどさまざまな産地があるが、製品企業が地場にあって、産地内で製品ブランドまで手掛けてはいない。
岡山・広島にはジーンズカジュアルアパレルが多数あるし、今治もタオルメーカーが多数ある。
大阪の泉州産地はちょっと鵺みたいなところがあって、ニット産地でもあるしタオル産地でもあるしウール産地でもあるし綿織物産地でもある。
 
製品までをその産地内で完結できるというのは、一般消費者にとってやはりわかりやすい。
ストールの玉木新雌さんがあっという間に拡販できたのは、西脇織りの生地を使ったストールを西脇に拠点を置いて製造しているからではないかと思う。
もちろん同様のやり方をやっている小規模ブランドは他にもあるが、それに加えて広報宣伝が上手かったということになるだろう。
他のブランドが拡販できにくいのは立地や生産背景、製造物の問題というよりも広報宣伝への投資ややり方の問題があるのではないかと思う。
 
それはさておき。
 
こう考えると、他の産地は消費者への認知を高めるためにはどのような方向性を模索すべきか答えが見えてくるのではないかと思う。
過去には産地全体で「産地ブランド」を作り、製品を集めたことがある。
しかし、何度かそれらを見たことがあるが、あくまでも自社の得意製品を持ち寄っただけに過ぎず、テイストもターゲットもバラバラだった。
おまけに商品のデザインをド素人に任せている場合も多く、工場のスタッフや産地コンサルタントがやっつけていることも珍しくなく、デザイン的にも出来が悪かった。
その結果、当然売れるはずもなく、だいだい3年くらいで活動は実質休止に至ってしまっている。
 
商品企画はやはりプロに任せなくてはならないと思うし、プロに任せたところで指示内容が曖昧なら、プロは自分の好きな物を企画するにとどまる。
現在の生地産地ができることは、産地タグを各ブランドの製品に付けてもらうことではないかと思う。生地産地ではないが、例えば、ユニクロのジーンズにカイハラのタグが付いているように。
もちろん、播州織シャツやら和歌山ニットなどでもそういう取り組みはこれまでからもあったが、やはり1シーズン限りで終わってしまうことも多く、消費者の認知には至っていないのではないかと思う。しつこいくらいに長い間やり続けないとなかなか認知には至らない。
 
生地産地にしろ縫製工場にしろ、すべてが生き残るとはまったく思っていない。しかし、やる気があって生き残りたい会社や工場は現状を正しく把握して、方向性を模索してもらいたいと思う。
 
 
そんな今治タオルをどうぞ~

 

この記事をSNSでシェア

Message

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ