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南充浩 オフィシャルブログ

売れないから同質化してさらに売れなくなるという悪循環スパイラル

2019年4月2日 トレンド 0

今は徐々に変わってきている部分もあるが、2010年頃までの百貨店というのは、どの店でも入っているブランドがほとんど同じだった。
オンワード樫山、ワールド、三陽商会、TSI、ファイブフォックスなどが展開するブランドが複数入店してフロアを埋めるという形式だった。
例えば、2012年に発行された河合拓さん著の「ブランドで競争する技術」という本には、新宿にある4つの百貨店に入店しているブランドを並べた一覧表がある。
その中から一例を抜き出すと、
オンワード樫山の「23区」と「ICB」は4店舗すべてに入っている。
三陽商会の「バーバリーブルーレーベル」と「ポールスチュアート」も4店すべてに入っている。
ワールドの「インディヴィ」は京王百貨店新宿店を除く3店に入っている。
TSIの「22オクトーブル」は4店すべてに入っている。
という具合だ。
2012年の本なので「バーバリーブルーレーベル」や「22オクトーブル」など今はなくなってしまったブランド名が挙げられているが、内情は2019年の今もさほど変わらない。
大阪でいえば、難波高島屋と心斎橋大丸に共通して入っているブランドは珍しくない。
 
またこの本では、欧米のラグジュアリーブランドについても触れられており、ルイ・ヴィトンが例として挙げられている。2012年当時の状況だということを念頭に置いておくことは言うまでもない。
名古屋にはルイ・ヴィトンが5店舗もある。
松坂屋、三越、名鉄と3つの百貨店に入店しており、ルイ・ヴィトンの名古屋路面店と、百貨店ではないがミッドランドスクエアの店舗を加えると5店舗になる。
名古屋に行ったことがある人はすぐにわかると思うが、これらの店舗は電車で30分圏内、ひどい場合には徒歩圏内にあるから、ルイ・ヴィトンのファンは、別に特定の百貨店で買う必要がない。
その時の状況に応じて自分の行きやすい場所で買えばよいということになる。
 
 
百貨店はなぜ苦戦しているのか、とか百貨店で洋服が売れないのはなぜか、という議論が延々と続けられているが、そのどれもが当たっているが、取り扱いブランドの同質化という点も大きいのではないかと思う。
同質化したから売れなくなったというよりも、売れなくなったから「安全パイ」ばかりを集めた結果、同質化してしまったという方が正しいのではないかと思う。
売れなくなったから「安全パイ」を集めて同質化したから、さらに売れなくなる。
さらに売れなくなるから、「さらに安全パイ」を集めて一層同質化する。
という悪循環スパイラルに陥っているといえる。
30代のころは、百貨店のリニューアルオープンについて割合に興味深く見ていた。しかし、40歳手前ごろから、リニューアルしても品ぞろえやブランドラインナップにさほど変わり映えがしないばかりか、近隣の百貨店とさらに同質化していくさまを見ていて、はっきりと言って興味がなくなった。
逆に何十歳になっても、変わり映えのしない百貨店のリニューアルをいかにも興味深げに追い続けている業界メディアの人たちの気持ちはまったく理解できなくなった。
 
悪循環スパイラルに陥っているのは百貨店ばかりではない。
大手セレクトショップも同様ではないかと感じる。早い話がどこに行っても同じブランドが並んでいる。
少し前だとチャンピオンやリーのロゴ入りTシャツやトレーナー、ディッキーズのワークパンツ。最近だとFILAのロゴ入りアイテムが加わっただろうか。
マサ佐藤さんがこんなブログを投稿した。
http://msmd.jp/archives/1502
 

渋谷セレクトショップ協会のバイヤーが
一人でバイイングしているのでは?と感じる程、多くの買い付け商品で同じ商品が陳列されていました。
簡単にブランド名をあげると。。。
・Nike
・adidas
・champion
・グラミチ
・The NORTH FACE
・DANTON
・その他
特に、本当にどこでもあんな~。。。と感じたのは、UNIVERSAL OVERALLというブランドです。

 
あまりにもどのセレクトショップも同じブランドを扱っているので「渋谷セレクトショップ協会が設立されて、セントラル方式でバイイング(仕入れ)しているのかと思った」ということである。
最近、「渋谷セレクトショップ協会」への参入が著しいのはユニバーサルオーバーオールで、アメリカのワークウェアブランドだが、国内ではドリームワークスという会社がライセンス生産しており、日本に合った企画や仕様にしている。
ドリームワークスの役員の方とは個人的に面識もあるので、「上手くやってるなあ」と感心するが、一時期のディッキーズがあまりにも溢れすぎて陳腐化したからその代わりになっているといえる。
ちなみに、以前、ドリームワークスの展示会でアメリカ本国の製品を見せてもらったが、低価格ワークブランドなので縫製などの仕様はちょっと日本では受け入れられにくいレベルだったのでライセンス生産したのは正解だったと思った。

以前にお邪魔したユニバーサルオーバーオールの展示会


 
 
 
 
並んでいるブランドが同じになると、差別化するために各社は「別注」「ダブルネーム」を増やす。

うちにしかないチャンピオンのTシャツですよ

というわけである。
しかし、この「別注」商法ももう20年以上続けられており、すっかり陳腐化していて効果は薄れてきていると感じる。
 
 
2015年を越えてから百貨店もそれなりに試行錯誤して、リニューアルでは新規性のある売り場を作ったり、導入ブランドを少し変えてみたりし始めている。
だが、成果はそれほど出ておらず、自店の顧客層とマッチしていないケースが目立つ。
もちろん、「新たな客層を呼ぶ」という目的だが、まったく縁もゆかりもない客層に認知してもらえるようになるためには、長い年月がかかる。今の百貨店にそこまで我慢できるほどの忍耐力と体力が残っているのかどうか。
 
それにしても百貨店自体は、顧客データを持っている。
百貨店内にテナント入店しているSPA型ブランドは一部を除いて、その顧客データを持っておらず、百貨店のデータと集客に頼っているが、百貨店はそれをテナントに全面開示はしない。
顧客データを持っている百貨店がどうして、自店顧客のニーズに合わないリニューアルやブランド導入をしてしまうのだろうか。ここが不思議でならない。
もしかすると、顧客データの分析方法が間違っているのではないかと思う。今のままならその顧客データは宝の持ち腐れだろう。
 
 
 
そんなユニバーサルオーバーオールの商品をどうぞ~

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