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南充浩 オフィシャルブログ

その54%は粗利益率?それとも値引き率?

2019年2月1日 企業研究 0

ちょっと今日は軽く感想を書いてみたい。
この記事は情報的にはそれなりに価値があると思うのだが意味がよくわからない箇所が多い。

ストライプ20年1月期はAI分析で在庫を8割まで圧縮 音楽事業にも進出
https://www.wwdjapan.com/786161
 

記事が言いたいことは見出しの通りなのだろう。
しかし、次の一節はよく意味がわからない。

その結果「アース」の19年1月は、セール期ではあるものの「値引き率が14ポイント改善して54%になった。タイムセール時間も4割減った」。同ブランドの19年1月期の粗利益は前期の2倍以上という。

とある。

値引き率が14ポイント改善して54%になった

という箇所だが、これは値引き率が54%になったのか、粗利益率が54%になったのかがわからない。
値引き率だとすると以前は68%もあったということになり、異様に高い。さらにいえば、値引き率が54%でもはっきり言って高い。
業界平均の値引き率は35%だし、ユニクロの値引き率は25%だから、業界平均より1・5倍高く、ユニクロよりも2倍以上高いことになる。
もし、値引き率を語っているとすると68%は異常なレベルで高いし、下がった54%も異常レベルの高さということになる。
 
今度は粗利益率だと考えてみると、40%が54%に上昇したことになる。これまた結構な高い数値ということになり、あの定価であの値引き販売の乱発しながら、それほどの高粗利益率が稼げるとすると製造原価・仕入れ原価は一体どれほど低いのかということになる。
ひいては工賃や原材料費をどれほど低いのかという疑問が生まれる。
もちろん、理論上は原価率20%程度に抑えれば値入率80%を達成できる。その場合、そして57%の値引きをしても54%の粗利率を達成することができる。
そして、あの「値札から70%オフ、レジでさらに30%オフ」とか「値札から80%オフ、レジでさらに20%オフ」とかのタイムセールの乱発・連発を見ていると、値引き率はやっぱり57%くらいあるのではないかと思えて来る。
ちなみに、当方が良く通る天王寺駅の地下通路のアースミュージック&エコロジーでは1月ということもあったのだろうが、ほぼ毎日のようにタイムセールが行われていて「相変わらずタイムセール連発してるなあ」という印象だったので、タイムセール時間が短縮になったといわれると何とも意外に思える。
 
さらによくわからないのが、AI分析による在庫圧縮という事象である。
何をどう分析して在庫圧縮につながったのか記事を読むだけではまったくわからない。もしかすると企業秘密ということで石川社長自身が内容を濁して話したのではないかとも推測されるが、それならそこを書くべきで、それを抜かすと、またぞろ「流行り物ツール」に極度に弱い業界の経営層が、「とりあえずAI導入だっ!」と内容も理解せずに飛びつくことになり、ミスリードを誘う。
また

ストライプインターナショナルで仕入高(生産金額)を小売価格ベースで350億円削減して前期の8割である1430億円にまで圧縮した上
 

とあるが、なぜ仕入れ高を店頭小売価格ベースに換算して話しているのか理解できない。仕入れ高だから、原価率20%なら70億円、25%なら87.5億円、30%なら105億円となる。原価率が明示されていないからなんともわからないのだが。
仕入れ額なのだからいわゆる下代表記する方が望ましい。
 
2018年度に大幅な在庫圧縮を達成できたということが主眼の記事だが、気になることに、某バッタ屋はストライプから結構な数量を昨年に買い取ったと当方に話してくれたことがある。
そのときの会話では20万~30万枚を引き取ったとのことだったが、このバッタ屋の発言が事実だとすると、今回の在庫圧縮を達成できた一端はここにもあるといえる。
ちなみにインディテックス社の商品もときどきバッタ屋に払い下げているようで、ストラディバリウスのサンダルを別のバッタ屋の店頭で見たこともあるし、某バッタ屋も20万枚程度引き取ったとも話している。
 
まあ、ため込んで産廃業者に金を払って引き取ってもらうよりは、バッタ屋に引き取ってもらっていくばくかの現金に変えた方が堅実ではある。
個人的な感想をいえば、ストライプインターナショナルの決算内容記事や、方針記事は、今回に限らず意味の分からない箇所が多く、何度読んでも理解できにくいものが多い。
これは書き手の問題もあるのかもしれないが、話し手側の説明がわかりにくいという問題もあるのではないかと思う。
 
IT系や先進的アパレル企業、広告代理店などはむやみやたらとカタカナ語を使いたがり、ルー大柴か小池百合子のようになっていて、日本語として意味がわからない発言が多い。
書き手も理解するのは大変だろうし、話し手側は煙に巻く意図もあるのかもしれないが、結局完成した記事は言語明瞭意味不明瞭な物になり、他者にとって役立つものではなくなってしまう。
AI導入にせよ、ネット通販にせよ、そういうミスリードされて飛びついたアパレルや小売業が無駄な設備投資によってさらに企業体力を削られているというのが業界の現状だといえる。
 

久しぶりにNOTEの有料記事を更新しました~
「アパレルの簡単な潰し方」
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n479cc88c67bf
 
【告知】2月7日に東京で有料のトークイベントを開催します
https://eventon.jp/15877/

 
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