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南充浩 オフィシャルブログ

ビンテージ系の呪縛から脱せよ

2012年11月19日 未分類 0

 ジーンズ業界を見ていて、つくづくビンテージ系ブランドのイメージが強いことに驚かされる。
以前も書いたことがあるが、今年の夏に某外資系コンサルタント会社のマネージャーさんが「ジーンズ市場についてのご意見を聞かせてもらいたい」と言って、こちらまで出向いてくださったことがあった。

その際、時候の挨拶のように「ジーンズと言えばビンテージブランドがありますが~」と述べられた。
その方もビンテージ系ブランドの現在の市場規模の小ささをご存知だったのだが、やはり話のきっかけとして利用されたのだ。

その方によると、エヴィスがビンテージ系ブランドの中でも最大だとのことだが、「売上規模は30億円台でしょう。多くても40億円内外です」とのことだった。他のビンテージ系ブランドは2~4億円程度で大きくても10億円内外である。

さてさて、先日、某ビンテージ系ブランドが2万5000円のジーンズを発売したらしい。
これを「値頃」と評した人がいるが、とてもじゃないが2万5000円のジーンズは「値頃」ではない。
ジーンズの相場でいうと、2万円以上のジーンズは明らかに高い。それがどんなに手が込んだ物であれ、高いと評さざるを得ない。

ジーンズという衣料は作業着がそのルーツであることは広く知られている。
作業着である限りは低価格・大量生産が前提であった。これは今のワーキングユニフォームを考えてみても理解いただけるのではないかと思う。
パンツ単品だけで2万円を越えるようなワーキングユニフォームはよほど特殊な用途を除いては存在しないし、ワークマンがそんな物ばかりを販売していたらたちどころに潰れているだろう。

ただ、当時の物はそれほど残っていないから希少価値となり、現在の価格は高くなっている。
製造当時は何でもないアンティーク品が、希少価値ゆえに現在では価格が高くなっているのと同じ理屈である。
そしてその当時に近い風合いを再現するためにコストがかかり、通常のNB商品よりも高くなっているのが、ビンテージ系レプリカ商品である。

バブル崩壊前後までジーンズはNBが提案する7000~9000円と、量販店メーカーが製造する3900円までの商品が中心だった。
ボブソンやビッグジョンは両方を作っていた。
その当時、1万数千円を越える高額ジーンズはインポートデザイナージーンズが担っており、90年代半ばからは勃興してきたビンテージ系レプリカブランドが担った。
そして2000年代半ばからは欧米インポートブランドがその地位を占めた。

現在、1万数千円を越える高額ジーンズには往年の勢いがない。
そしてその価格帯を好む消費者もどちらかと言えば少数派に属する。
ビンテージ系ブランド各社もその売上高の小ささからするとニッチな市場といえるだろう。

売上高が大きければ良いというわけではないが、各ブランドの売上高が小さいということはそれだけ購入者が少ないということになる。反対に、少数だが熱心なファンに支えられているともいえる。

しかし、それほどニッチな市場を見て、ジーンズ市場全体を類推することは実態とかけ離れてしまう恐れがあるため、コンサルタントやマスコミ関係者にはお薦めできない。

そして、コンサルタントやマーケティング業者、マスコミ関係者、製造メーカーが「ジーンズ=ビンテージ系が王道」という見方を続けると、ますますジーンズというアイテムを見誤ることになるのではないかと思う。
例えば「ジンバブエコットン」使用が必須条件のように思いこんでいる人がいるが、別にビンテージ系商品を作る際には取りたてて必要ない。
「ジンバブエコットン」を使用しているから本物に近く、「ジンバブエコットン」を使用していないから価値が無いと思うならそれは誤った認識であろう。

個人的にはジーンズはビンテージ系の呪縛から脱した方が次の展開が広がると思うのだが、いかがだろうか。

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