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南充浩 オフィシャルブログ

問題を一挙に解決してくれる「スーパーマン」も「魔法の杖」もこの世には存在しない

2018年12月20日 産地 0

以前から木下斉さんの地域再生関係の記事には共感するところが多い。
繊維・衣料品の製造加工業の多くは大都市部ではなく、地方にあるから、その現状とも合致するところがほんとんどである。
多くの地域再生が上手く行かない現状と、一部を除く地方製造加工業が上手く行かない有様は極めて類似していると感じる。
 

「地域おこし協力隊」が抱える根本的矛盾
https://diamond.jp/articles/-/188885

この記事はどちらかというと、自身の著作のPR記事だが、ここにも繊維の産地、ひいてはアパレル業界が抱える問題点が端的に指摘されている。
もっとも共感できるのがこの部分である。
 

あくまで、移住してきた若者が挑戦するうえで適切なサポートをして、成功した一部が地域にもプラスになる、くらいのスタンスが適当なのに、期待値が高くなりすぎている。民間や役所が官民連携し、事業と向き合うことすらない地方に、外から若者が来てスーパーマンのごとく地元の問題を解決してくれるなんて都合のいいことは起こらないんですよね(笑)。

 
どうだろうか。産地、アパレル業界はこういう人が多い。
「〇〇さえあれば上手く行く」
「××さんに頼れば解決してもらえる」
こんな他力本願が本当に多い。産地の製造加工業者はもとより、アパレル企業、衣料品ブランドもこんなスタンスが多い。だから衰退産業・斜陽産業になっているといえる。
この〇〇のところにはその時々の業界トレンドを当てはめれば理解できるだろう。
97年当時は「SPA化」「QR(クイックレスポンス)対応」「POSデータ活用」「52週MD」あたりだろうか。
2009年ごろだと「中国市場進出」だとか「越境EC」だとかである。
最近だと「ZOZOへの出店」とか「D2C」とか「AI(人工知能)」だろうか。
業界トレンドとしてホットになっているキーワードは「手段の一つ」であり、「万能の解決手法」ではないということを産地はおろか、アパレル企業や衣料品ブランドすら理解していない。だから、安易にその時々の「トレンド」に飛びつき表層だけを導入して失敗を繰り返すのである。
全企業がこぞってPOSに依存してQR対応を推し進めた結果どうなったかというと、全ブランドの同質化が起きた。
「ファッショントレンドが情報源だから全社同じになるのは仕方がないじゃないか」
という声も聞こえるが、90年代のアパレルブランドの多くは、その単一トレンド情報を得て、自社ブランドなりのアレンジメントを加えていた。トレンド情報そのままの商品を発売するというブランドは少なかった。
ところが2005年以降は、トレンド情報そのままでなんのアレンジも加えられていない商品を各ブランドが店頭投入するようになり同質化が一挙に進んだ。
「××さん」にしてもそうだ。
必ず問題を解決してくれるスーパーマンみたいな人はこの世にも業界にも存在しない。にもかかわらず特定の「××さん」に依頼すれば何とかしてもらえるという思い込みを持つ産地企業やアパレル企業は後を絶たない。
その「××さん」のキャリアをつぶさに検証しているのだろうか?検証すらしておらず虚名をありがたがっているケースは繊維業界では珍しくない。
だから、連戦連敗・O勝全敗にもかかわらず仕事が途切れない元W-ルドのあの人とか、某ブランドに30億円の損失を発生させたコンサルタント・評論家が辛気臭い顔で今もそれなりの業界評価を得ていたりする。
 
今は当方の体感としてピークアウトしつつあると感じるが、根強いのが「ネット通販を強化したいからZOZOに出店すれば大丈夫」という根拠のない思い込みである。
ZOZOTOWN上には2018年3月期決算では6000以上のブランド数があると発表されている。6000もある中から貴方のその無名ブランドが選ばれる理由がどこにあるのか。選ばれるためには相応の努力が必要となり、出店すれば必ず売れるというものではない。
 
地域おこし協力隊への過剰な期待と同様で、地方企業に限らずアパレル企業各社・衣料品各ブランドも同様のメンタリティで特定の事象に過剰な期待をして、失敗をこの20年間繰り返してきたといえ、その負の連鎖は今も続いているといえる。
 
今まで通りの構造・やり方で物をたくさん売りたいと思っているから、今度は「AI」による需要予測に過剰な期待をしてしまう。
 
河合拓さんのブログから引用しよう。
https://ameblo.jp/takukawai/entry-12419641979.html
 

現在、世で言われている「AIをつかった需要予測」(??????)
この精度が例え人知を超えたレベルに高まったとして、何が変わるのでしょうか?
例えば、私が欲しい商品が「A」だったとする。しかし、私は「A」を一つしか欲しくないのに、5つの企業が「A」をつくるため、私の目の前に「A」が5つもできあがるわけです。そうなれば、「需要予測」は的中しても、4つ在庫は残る。結局、この問題は、「個別企業」が単独でおこなっても何も解決しない。産業界全体で適正数量を分配するような社会主義的動きをしなければ、30年前のQRがオートマティックになっただけとなるわけです。

 
とあり「A」ではわかりにくいだろうから例えば「マスタードイエローの丸首セーター」と仮定してみようか。
ZOZOTOWNにある6000のブランドが一斉に「AIの需要予測」に基づいて「マスタードイエローの丸首セーター」を発売したとしよう。
その中から、各消費者が買うのは1枚、多くても洗い替えや破損への備えとして2枚である。残りは売れ残る。
5999ブランドか5998ブランドの「マスタードイエローの丸首セーター」は売れ残りの不良在庫になってしまうのである。これのどこが需要予測で不良在庫が減るのだろうか。何も考えずに運用すればかえって不良在庫が増える未来が待っている。
世界にも業界にもスーパーマンは存在しないし、問題をすべて解決してくれる「魔法の杖」も存在しない。一歩一歩試行錯誤を繰り返しながら対処するしか方法がない。
 

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【有料記事】地方百貨店を再生したいなら「ファッション」を捨てよ
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n56ba091fab93
2016年に行ってお蔵入りした三越伊勢丹HDの大西洋・前社長のインタビューも一部に流用しています

 
最近突如売れ始めたという河合拓さんの著書をどうぞ~

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