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南充浩 オフィシャルブログ

ワールドや三陽商会などの大手総合アパレルの現状を駆け足でまとめてみた

2018年12月14日 企業研究 0

早いもので、当方が繊維業界紙記者になって20年が過ぎた。正確には今年で21年ということになる。
そりゃジジイになるはずである。
とはいえ、気が付いてみるとジジイになっていたわけで、毎年はそれほど大きく変わったと感じないのだが、その年数が積み重なるとジジイになってしまっている。
業界も同じで、毎年はそれほど大きく変わらないが、年月が積み重なるとまったく様相が異なってしまう。
20年前に隆盛を極めていたのが大手総合アパレルといわれる数社だった。
ワールド、オンワード樫山、イトキン、ファイブフォックス、三陽商会、サンエー・インターナショナル、東京スタイル、ジャヴァあたりだっただろうか。
しかし、20年が経過した現在では各社のありようが大きく変わってしまっている。
前回のブログで紹介したように東京スタイルという会社は休眠してしまう。休眠というといつかは目覚めそうだが、永遠に目覚めることはないだろう。実質的には廃止だといえる。

庇を貸して母屋を取られたように見える東京スタイル


 
雑誌の「休刊」と同じで、実質廃刊である。
では年末も近いということで今年の締めくくりとして、TSI以外の各社の歩みと現状をまとめてみる。
 

1、ワールド

今年ワールドは13年ぶりに再上場をはたした。しかし、株価は上場ゴールでそれ以降一貫して下がり続けている。一体何のために再上場したのかと疑問しか感じない。

ワールドの株価推移


 
ワールドを2005年の上場廃止以後一貫して苦しめていたのは、MBOした際にできた巨額の有利子負債である。
ピーク時には1200億円もあったが、その後少しずつ減らしながら時々増えたりして、やっと800億円台にまで減らせていた。しかし、それ以上はどうしても減らない。
「上場廃止のためにできた負債は、再上場で資金を集めて返すしかない」ということでの再上場だったのではないかと見ている。
目的は果たせたのでこのまま株価が上がらなくても構わない、と考えられているのではないかと外野たる当方は勘ぐっている。恐らく株価が今後も劇的に上がることはないだろう。
経営危機にも陥り、経営陣もほとんどが入れ替わった。2010年頃までのワールドとはまったく違う会社になったといえる。経営はある程度立ち直ったかもしれないが、商品面では20年前の面白さには及びもつかない平凡な物が増えた。今後、これもあまり変わらないだろう。
 

2、オンワード樫山

地味だが、堅実である。ときどき新しいことにも挑戦する。チャールズ&キースの導入は失敗したが、パターンオーダーの「カシヤマ・ザ・スマートテーラー」の滑り出しは、某コンサルタントによると赤字だというが、売上高や受注枚数は上々だといえる。
経営が悪化したことはあったがワールドやイトキン、TSIのようには大崩れしない。
面白味はないが、その底力はすさまじいといえる。業界随一ではないか。
 

3、イトキン

経営不振によって、ついにインテグラルというファンドに売られて傘下企業になった。創業家である辻村家は経営から手を引いた。しかし、2016年にインテグラル傘下になってから、もう2年以上が過ぎたが、いっこうに何の噂も聞かない。
アパレル業界はとかく噂話が好きな業界で、だいたい酒のつまみは業界内の噂か自社内の噂である。
そんな業界にあって良い噂も悪い噂もほとんど聞かないということは存在感がまるでないということになる。すごく悪くはないのかもしれないが、絶対に良い状態ではないといえる。
もし、良い状態だったら「イトキンの〇〇がすごく売れている」という噂になるはずだ。それがないということは良い話はまったくないのだと考えられる。
一時期、「インテグラルも匙を投げてイトキンを売りたがっている」という噂が業界内にあったが、今はどうなのだろうか。
 

4、三陽商会

バーバリーとの契約終了による売上高減はまだ到底埋まらない状況にある。もちろん打開策もそれなりに講じていて新ブランドも発表しているが、バーバリー規模に育つにはそれこそ、上手く行ったとしてもバーバリーと同様に30~40年くらいはかかるから、完全に売上高がバーバリー当時にまで戻ることは難しい。
新ブランドに加えて、恐らくEC強化を掲げる一貫としてRUBYグループを買収したのだろうが、今のところ相乗効果はまるで見られない。見られないどころかECに関しては早くも頭打ち感が出てきている。
2018年12月期第2四半期決算では、EC売上高が当初計画よりも6億円も少ない25億9400万円にとどまってしまった。当方の周囲にもファッションウェブ系やEC系の人間が何人かいるが、ほぼ「三陽商会は何がやりたくてRUBYグループを買収したのかわからない」と口をそろえている。ここまでの施策を見ると当方にもそれはわからない。(笑)
新ブランドやEC強化は今のところ成果として表れていないといえ、三陽商会の苦難の道はまだまだ続きそうだとしか言いようがない。
ちなみに乃木坂のビルは売却され「三陽商会」のロゴははずされ、現在は「WE WORK」のロゴが付けられている。
 

5、ファイブフォックス

ここの情報はあまり報道されないので外野からの印象しか語れない。当方からすると20年前はワールドと並んでファッションビル、ショッピングセンターなどの花形だった「コムサ」シリーズがすっかり存在感がなくなっていると感じる。店舗数はいまだにそれなりにあるとはいえ、業界的にもさっぱり話題に上らない。これはインテグラル後のイトキンと同様で、話題に上らないということは悪くはないかもしれないが、良いということは絶対に考えられない。
ショッピングセンター側でも「コムサイズム」が集客の目玉の一つにはすでに入っていない。身の周りの消費者調査でも「コムサを買っている」「コムサイズムをいつも買う」なんて人は一人も見ない。若いファッション専門学生への認知度も低下している。
 

6、ジャヴァ

創業者が亡くなり、伊藤忠商事に買われた後、今年4月にはファンドにさらに売却された。現在はファンドであるエンデバー・ユナイテッド傘下になっている。売上高はピーク時は760億円くらいあったが、今では400億円台に低下している。
実際のところ外野からするとエンデバーは何の魅力があってジャヴァを買ったのかよくわからない。しかし、某関係者によるとエンデバーはジャヴァすべてが欲しかったのではなく、売上高が堅調な子供服のべべと、根強い固定ファンに支えられて売上高は伸びないが下がらないロートレアモンの2社が欲しかったのだが、伊藤忠側からの「すべて買って欲しい」という要望に押し切られたという。
これが事実かどうかはわからないが、ベベとロートレアモンの2社が欲しいというのは理にかなっており、噂話としても論理的で説得力はあり、幾分かの真相は含まれていると考えられる。
 
 
 
以上駆け足だが、外野から見た各社の状況をまとめてみた。
こうやって書いてみると、20年前の隆盛とはまったく異なった状況となっており、当時とほぼ近いのはオンワード樫山のみといえる。
毎年の積み重ねが最終的にここまで様相を変えてしまうということである。
 

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2016年に行ってお蔵入りした三越伊勢丹HDの大西洋・前社長のインタビューも一部に流用しています

 
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