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南充浩 オフィシャルブログ

いくらプロモーションが上手くても「商品」がお粗末なら長続きしない

2018年11月28日 ファッションテック 0

このところ、製造加工業から自社ブランド開発の相談を受けることがちょくちょくある。
苦し紛れの気分転換で深く考えずに乗り出そうとするところもあれば、現在の受注数量が限界に達したから新しい販路開拓の必要に迫られている場合もある。
前者の場合は間違いなく失敗する。
後者の場合は設計をキチンとして施策が的確なら成功する可能性は低くない。
これまで、製造加工業者は、物作り以外の販路・プロモーション・価格設定が欠けているから自社ブランドの成功率が低かった。
物作りでもスペックや機能性、仕様以外の「デザイン」という部分でイマイチなものが多かった。
マーケティングでは4p戦略と呼ばれるのが、
product(製品)
price(価格)
place(販路)
promotion(販促)
である。
製造加工業の多くは、product以外が苦手である場合が多かった。中にはスペックや仕様は良いが「デザイン」がまるでダサい物も珍しくない。
だから、なかなか成功しづらかったのだが、逆にproduct以外が上手いブランドもそれほど長続きしないというのが、実情ではないかと思う。
 
例えば、タレントや読モ、インフルエンサーのブランドが雨後の筍のように毎年いくつもデビューする。しかし、その中のほとんどがデビュー後3年以内に消滅する。
なぜ消滅するかというと売上高が伸びず、収益が低いままだからだ。中にはナンタラPのように薬物で逮捕されたためにブランドを廃止せざるを得ない場合もあり、そういうスキャンダルがあれば直接的に存亡の危機に立たされるというのもこれらのブランドの特徴でもある。
知名度としては高く、promotionには長けているはずのタレントブランド(インフルエンサー、読モも含む)の売上高がなぜ伸び悩むかというと、productがお粗末な場合が多いからだ。
ファンならずとも知名度に惹かれて1度や2度は買うだろうが、productがお粗末なら、3度目・4度目の購入はない。
それを考えるとproductがいかに重要かがわかる。
 
ZOZOのPBが伸び悩んでいるのも同様の原因だといえる。
もっとも、初年度200億円という売り上げ目標が高すぎるのであり、30億円くらいにしていれば達成できたのではないかと思う。
第2四半期までに受注額で15億円、実際売上高5億円(10億円は納期遅れのため未納)だから、単純に考えれば初年度30億円は達成できた可能性が高い。複数回にわたる納期遅れが起きなければ50億円も達成できたかもしれないが。
しかし、残り半年で185億円を売らなくてはならないというのはちょっと無謀な計画だといえる。おそらく第3四半期もそれほど大幅には伸びないはずだ。
何せ納期遅れでごたごたしていたのが第3四半期に入ってからだから、第2四半期までの勢いはなくなっているだろう。
高単価商品を投入しなくてはならないのに、なぜか冬場に3800円のブラックジーンズなんぞを投入しているところから考えても残り185億円が未達になる可能性は極めて高い。
 
ZOZOの場合は
price
place
promotion
の3つのPは抜群である。しかし、productがお粗末に過ぎたから売れなかったといえる。
縫製仕様がどうのではなく、最も「売り」だったはずのサイズ計測がお粗末で、その間違ったサイズデータによって作られた商品は着用することすらかなわない。
いくら「縫製ガー」「素材ガー」と言ったって、着られない洋服なんて価値がない。
productとしてはまったくの欠陥品である。
「コト販売」「サービス」「体験価値」なんて言ったって、洋服や服飾雑貨は最終的に「物」を販売する。「コト」「サービス」「体験」は「物」を売るためのツールに過ぎない。
それこそ、いくら「手段」「道具」が良くたって、肝心の「目的」がお粗末ならそんな「物」に価値はない。
極端な言い方をするなら、「ツール」が悪くても「物」が良ければお客はリピーターになる。
 
製造加工業の人がこれまで成功しづらかったのは、productのうち「仕様」や「スペック」のみにあまりにも注目しすぎて「デザイン」すらもおろそかにしてきたためである。
もちろん、販路・価格・プロモーションはさらにおろそかにしてきた。
だが、タレントブランドの脆弱性やZOZOのPBのお粗末さを見ると、それらがいくらそろっていてもproductがしっかりしていなければ大きな売上高は望めないということがわかる。
となると、productがしっかりとしている製造加工業はデザインと残りの3Pに留意すれば、売れる可能性が極めて高いということになる。派手さはないが、リピーターを生みやすいといえる。
自分の専門外のことを身に着けるのはどんな分野でも大変な労力を伴うが、例えばチャラっとしたタレントやZOZOの社長が今更、製造加工の知識を身に着けられるだろうか。不可能ではないと思うが、彼らの性向からして工場に足を運んで製造加工のことを勉強することはしないだろうと思う。
製造加工業者が残りの3Pを身に着けることも大変な労力を伴うが、それさえ身に着ければ売れるブランドを開発することができる。
それゆえに、当方は製造加工業者に期待している部分がある。
 
 

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