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南充浩 オフィシャルブログ

中途半端に在庫を残すジーンズメイトの不可解

2018年11月27日 企業研究 0

アパレル業界には、ブランド価値の毀損を恐れて在庫を徹底的に処分することに躊躇する人が多い。
ZARAは多くの品番が売り切れるが中には売れ残る品番もある。それは徹底的に値下げされて処分販売される。
大阪から撤退したインディテックス社のストラディヴァリウスのサンダルがバッタ屋に流れてきたこともあった。
しかし、その割にはブランド価値はそれほど毀損していない。とくに「安売り・投げ売りブランド」というイメージはそれほど定着していない。
逆にGAPなんかは「投げ売りブランド」のイメージが定着している。
どこが異なるのかというと、ZARAは処分販売した後に、「売れる(はず)商品」を投入する。また投入枚数も常に少な目である。このため、値下げまで待っていては売り切れる可能性が高いから、ある程度の割合の人が定価で購入する。定価も国内百貨店ブランドに比べると割安になっているから比較的買いやすい。
一方のGAPは処分販売した後も、また大量の枚数を投入するし、定価もアメカジジャンルにしては高めに設定されている。その結果、また売れ残りが多数出て、値下げ処分する。これが繰り返されるからすっかり安売りのイメージが定着してしまっている。
この違いがある。
一度や二度、処分販売をしてもその後、リカバリーして定価販売できれば安売りイメージは定着しないというのが個人的な見方である。
先日、マサ佐藤さんがジーンズメイトについてのブログを書いていた。

http://msmd.jp/archives/710

この中ではジーンズメイトの構造改革が比較的進んでいることが書かれてある。またライザップ傘下のアパレルの中でも比較的効果が出始めているとも書かれてある。
ジーンズメイトの今夏のヒット商品はアロハシャツで

PBで一番売れたアロハシャツは、23,000点の売上。消化率92%。粗利率も72.5%獲得できています。
それだけ、この商品の付加価値が顧客に認められたということでしょう。
しかしながら、一つ突っ込みを入れさせてもらうと、この商品の消化率は92%ですから、2,000枚は余っているということです。

とのことである。
23000枚売れるというのは相当に優秀だったといえる。そしてこの商品の定価は2990円だったことを店頭巡回を欠かさない当方は記憶している。
消化率92%というのも優秀だといえる。
しかし、解せないのはどうして残りの2000枚を売り切ってしまわなかったのかという点である。
オックスフォードボタンダウンシャツやデニムシャツのように定番で毎年必ず売れることが見込めるアイテムなら2000枚を残していても不思議ではない。毎月少しずつ売れていくからである。
しかし、半袖のアロハシャツは秋冬には売れないし、アクの強いアイテムだから来年夏に売れるとは限らない。
「俺、毎年夏にはアロハシャツは必ず買う」
なんて人はそんなにいない。当方の身の周りでは見たことがない。
とすると、アロハシャツなんていうキワモノアイテムは500円にしてでも売り切ってしまった方が得策だといえる。

アロハなどは、来年売れる保証は全くないので、この辺の詰めが甘いところが、意味のないプロパー消化率に拘る旧大手的なMD発想です。

との突っ込みがあるがその通りだろう。
恐らく、ジーンズメイト経営陣は「プロパー消化率が下がっちゃう~」とブルったのではないかと思う。何せ、元W-ルド出身の「連戦連敗・0勝全敗」の人が名を連ねているからだ。(笑)
店頭巡回を欠かさない当方の売り場の記憶を照らし合わせてみる。
ジーンズメイトのPBのアロシャツは定価2990円だった。これが7月のセール前後くらいから1990円に値下がりした。ここまでは順当である。
そして、ちょっと記憶が不確かだが、一時的に期間限定で990円に値下がりした時期もあったような気がする。
通常なら、このまま期間限定が終われば、もう一段の値下がりになるか、一時的に値を戻しても8月のお盆くらいからは再値下げで990円か790円にして売りさばく。
ところが、店頭の動きは違っていた。
1990円から頑として値下がりしなかった。この辺りの記憶も曖昧だが、2990円に戻っていたような記憶すらある。しかし、1000円以下には値下がりしなかった。どうしてかというと値下がりしていたら当方が買っていたが、結局買っていないからその値段にはなっていないということだ。
9月になっても値下がりしていなかった。
たしかに今年の9月は高気温で秋物を着る気分にはなれなかった。ついでにいうと10月も高気温で10月10日には最高気温が30度もあった。
当方が長袖を着始めたのは10月15日前後である。
ついでにいうと11月も高気温で、今日11月27日の大阪市の最高気温は20度の予想が出ている。完全に暖冬傾向であり、防寒アウターはまったく売れないだろう。
で、話を戻す。
そんな気温だから9月でも半袖の夏物が売れる要素はあった。クソ暑いのに長袖なんて着たくもないという人は多いからだ。
しかし、いくら暑いとはいえ9月に半袖の夏物が定価で売れるだろうか。当方ならそんな買い物は絶対にしない。
9月に夏物を買う人の心境は当方が一番理解できる。
「まだ暑いから秋物は買わない。安くなっているから夏物を買おう。買ってもあと1か月くらいは着られる」
という心境である。
だからジーンズメイトは9月に残った2000枚のアロハシャツを990円か790円で売り切るべきだった。
来年またアロハが売れるならそのときはまた新たな企画で、「売り切れる枚数分だけ」投入すればいい。
今年2万3000枚売れたなら2万3000枚投入すれば良いのであって、変な色気を出して2万5000枚とか3万枚を製造するから売れ残って投げ売りをすることになる。そしてその投げ売りが繰り返されることで「安売り店」のイメージが消費者と市場に定着してしまう。
それを避けるべきで、在庫の徹底処分を避けるべきではない。
ここを勘違いし続けているアパレル業界人のなんと多いことか。
 

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【有料記事】地方百貨店を再生したいなら「ファッション」を捨てよ
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n56ba091fab93
2016年に行ってお蔵入りした三越伊勢丹HDの大西洋・前社長のインタビューも一部に流用しています

 
そんなジーンズメイトのチャンピオンのパーカをどうぞ

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