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南充浩 オフィシャルブログ

衣料品製造の中間業者は決して「絶対悪」ではない

2018年11月5日 考察 0

何年か前から、衣料品業界には「製造の中間業者悪玉論」が声高に叫ばれるようになっている。これは個人的にはファクトリエなどのロビイ活動によるものだと思っているが、実は中間業者は一概には悪玉ではない。
ところで、直販という形態のうち、店舗での販売をメインとする形態をSPA、ウェブ販売のみをDtoC(D2Cとも書くが2と表記するのは個人的には意味がわからないから嫌いである)と分けていることが多いが、この区分はあんまり意味がないように思う。
なぜなら、自社企画商品を直販するのは同じで、店舗をメインとするブランドも今ではウェブ販売もやっているし、例えば、ウェブ販売のみのブランドもリアル店舗を出店している。どちらの出身かという差はあるが、垣根はなくなっている。
ことさら、ウェブ販売出身業者をDtoCなどと呼んで珍重する必要はないというのが個人的な意見である。
それはさておき。
90年代後半にSPA化が進んだ際、問屋悪玉論がぶちあがった。
問屋を介在させるから手数料が発生して最終的に価格が高くなってしまう。
というものである。
しかし、問屋の存在はデメリットばかりではない。メリットもあった。
たしかに手数料は発生するが、問屋には備蓄機能がある。生地工場や縫製工場はあくまでも「工場」だから備蓄機能はない。言われた物を言われた数だけ作るのが工場である。
個人で使う分くらいは工場に行けば切れ端くらいは残っているだろうが、それ以上の物はほとんどの工場には残っていない。稀に備蓄型の工場が国内にはあるくらいだ。
商品だって問屋が備蓄している。
個人販売業者が少量仕入れたい場合、現金問屋で10枚~20枚買うのが一番効率的だ。
アパレルメーカーだってずっと在庫を備蓄し続けるわけではない。
だから2018年現在でも数が減ったとはいえ、問屋は残っている。今後も問屋の需要はゼロにはならないだろう。
DtoCがいう中間業者とは、製造段階のことである。
たしかに製造段階は恐ろしいほど中間業者が入っている場合がある。なんだかよくわからないけど、とりあえず売上高の2%もらうなんていう業界ゴロみたいな人も珍しくない。
今はなくなった某ブランドだが、実はそのブランドの商標権をある人が持っており、公表されていないが、毎月何十万円かを商標権使用料としてそのブランドは支払っていた。
こんなことは実はアパレル業界では珍しくない。
DtoCはOEM(ブランドの製造を請け負うこと)・ODM(ブランドの商品デザインから製造まで請け負うこと)を目の敵にするが、実はこの両者(実態はOEMでもデザインまでやっていることがほとんど)がなければ、今のアパレル業界は商品が製造できない。
たしかに、この業者を1社介在させているくらいならわからないではないが、1つの商品の製造にOEM業者が2つも3つも絡んでいることがある。この場合はそれぞれマージンが落とされるから最終的には値段は高くなる。またほとんど仕事をしないOEM業者も珍しくない。
しかし、OEM業者を完全追放してしまえばほとんどの国内ブランドは商品を製造できなくなる。これが現実だ。
https://www.ulcloworks.net/posts/5106108
 
ここには取りまとめる業者(OEM業者)がザルだった場合が書かれてある。

デメリットとしては取りまとめる業者がザルだった場合、最終製品としてチグハグな物が出来上がってしまうというリスクがある。
取りまとめる業者の知識レベルが一般消費者の手に渡った後に起こり得るデメリットまで意識出来ているかどうかで防げた問題である。
原料から紡出までの単糸で売りが完結する業者としてはカットソー向けであればそこに対する技術を盛り込める。
その先で双糸加工する業者からしたら、普段相手にしている業界が布帛だった場合、上撚の係数はカットソー向けの糸のそれとバランスが異なる。
ところがエンドユーザー向けにどのような素材に変わっていくかを承知していない場合、技術の詰めどころとしては、己の知る範囲の最高を詰め込んでくる。
そう考えると、やはりハンドリングしていく者の知識レベルは非常に高い次元で求められる。
とりあえず組み上げるだけでは顧客さんの満足を満たせないものである。

とある。
アパレル各社が社内に企画職を減らした結果、商品製造のハンドリング、取りまとめをできる者が少なくなってしまった。その結果、外部のOEM・ODM業者にさらに頼るようになっているのが現状であり、例えば、大手セレクトショップなんてOEM業者がいなければオリジナル商品の企画製造なんてまったくできない。
しかし、そのブログで書かれてあるように取りまとめをする者の知識やノウハウが不十分だった場合、最終商品の出来栄えは悪くなる。
商品企画に対して、糸と生地と染色を最適なバランスで組み合わせることが取りまとめ業者には求められる。
個人的に面識のあるOEM・ODM業者は製造に関しては高い知識を有しているが、業界内ではまったくハンドリングが下手くそでボッタくり料金を設定している業者も珍しくない。
DtoC業者やSPA業者が「製造の中間業者排除」をことさら声高に叫ぶのは、単なる自社利益確保のためのポジショントークという側面があり、話半分とは言わないまでも少なくとも30%オフ程度に聞き流すのが正解である。
 

【告知】
11月24日に大阪でウェブコンテンツに関する有料トークショーを深地雅也氏と開催します。
https://eventon.jp/15080/
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【有料記事】地方百貨店を再生したいなら「ファッション」を捨てよ
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n56ba091fab93
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【誰得企画】従来の小早川秀秋像を覆す解釈で描かれているだけでなく、エンターテイメントとしても両立できている

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