MENU

南充浩 オフィシャルブログ

ZOZOのPB商品が残り半年で185億円も売れるとは思えない

2018年11月1日 ネット通販 0

昨日、ZOZO(旧社名・スタートトゥデイ)の2019年3月期中間決算(2018年4月~9月まで)が発表された。
当初予想通りの大幅減収に終わった。
報道のムードを見ていると、業界紙は厳しめ、一般メディアは擁護というように感じられたが、そこは専門性の高低だろう。衣料品業界紙の方が専門性が高いだけに厳しめに評価するのは当然である。
当方もZOZOの今回の決算はかなり厳しいし、会見の動画を見た限りにおいては、下半期にV字回復するような新要素は何もなかったと感じられた。
売上高が前期比25.9%増の537億円
営業利益が同27.3%減の100億円
経常利益が同27・7%減の100億円
純利益が同34.1%減の62億円
となっており、増収ながら大幅減益に終わった。
 
https://www.wwdjapan.com/731968

減益の要因はプライベートブランド(PB)「ゾゾ」にかかる“ゾゾスーツ”配布などの広告宣伝費や人件費の増加で、PB単体では7〜9月の四半期で39億円の営業損失だった。

とのことで、自社企画製品の納期遅れと計測スーツの誤差頻発のあの体たらくでは当然だといえる。
で、決算短信と会見動画を見ていたのだが、今回、通期での業績予想は据え置いている。

売上高が同49.3%増の1470億円、営業利益が同22.4%増の400億円を目指す。PB事業の売り上げ目標も変更なく、19年3月期に200億円をかかげる。

とある。
これは達成が不可能な現実味の乏しい数字だと当方は考える。残り半年で9月までを大幅に上回る実績を上げなくてはならない。
例えば、営業利益は400億円だが、今回中間期で100億円しか達成できていない。ということは10月から来年3月までの半年間で300億円の営業利益を稼がなくてはならない。
売上高も半年で537億円であるわけだから、下半期で933億円を稼ぐ必要がある。10月以降に本格的に売れる秋冬物は春夏物に比べて単価が高いとはいえ、あれだけ安売りクーポンを乱発して客単価を下げている状況でそうやすやすと達成できるとは思えない。
何よりもPBである。目標達成はほぼ不可能だろう。
PBの4~9月の売上高は5億円強で、受注実績は15億円強だった。
これはどういうことかというと、度重なる納期遅れが10億円分あったということである。10月以降にこの代金が回収されたとしても目標売上高は200億円だから、あと半年間で185億円も売らなくてはならない。
実現した売上高5億円と見れば、あと半年で195億円を売らなくてはならない。
半年で15億円しか受注できなかった商品が、あと半年で185億円も受注できるとはとても思えない。
今回の通期予想の据え置きは間違いなく株価対策だろうと当方は見ている。ただでさえ、ZOZOの株価は下落が続いているから、何としてでもこれ以上の下落は避けたいのだろう。世界平和実現のために「お金を廃止したい」と言っている社長が株価の下落を気にするのはまったく理解できないが。(笑)
このままだと年明けくらいには下方修正せざるを得ないだろうと思う。
PBについてもう少し考えてみよう。
ZOZOのPBは当初、1200円のTシャツと3800円のジーンズからスタートした。単価としては低いのでこれで200億円を売るのは至難の業である。そして夏場に単価の高い3万円台のオーダースーツを発表した。単価の高いアイテムがあれば利益率は別として売上高は稼ぎやすい。このオーダースーツが加わって受注額が15億円なのだから、あと185億円を売るためには相当に単価の高い商品を連発で投入するしかない。
しかも10月から始まる秋冬シーズンは、防寒アウターやセーター類が主力となるため、単価は上がりやすい。コート類・中綿ブルゾン類だといくら安くても3900円くらいにはなる。セーターだってウールが使われていれば3900円にはなる。まあ最低でも1枚あたりの平均価格はいくら安くても5000円は稼げる。1200円のTシャツを4枚売るのと変わらない。防寒アウターとセーターを投入すれば平均単価は1万円くらいにはすぐに到達する。売上高を稼ぐには非常に効率が良い。
にもかかわらず、下半期に投入するアイテムに挙がっているのが、
ブラックデニム
チノパン
ジップアップパーカ
シャツのバリエーション追加
 
である。どれも単価は低い。
ジーンズが3800円なのだからブラックジーンズ(ブラックデニムは生地名な。商品名はブラックジーンズ、もしくはブラックデニムパンツ)とチノパンは3800円だろう。
ジップアップパーカは裏毛素材(要はスエットのパーカ)だとするとこれも2900円前後だろう。高くて3900円。
シャツは現在2900円くらいなのだからそれくらいにせざるを得ない。
こうして見ると、下半期に投入する商品はすべて低単価の物ばかりである。10月~1月末までに売れやすくて単価の高い防寒アウター類やセーター類が全く挙がっていない。これで残り185億円を6か月で売り上げることは不可能に近い。
そして、動画では今後の施策として、「スマート工場構想」や「ZOZOスーツではない計測方法」の提示があったが、両方とも具体的ではない。工場は現実にはまだないわけだし、別の計測方法も「企業秘密」と言葉を濁しているだけなので、当方は計測方法については現時点での具体策はないのではないかと見ている。要はブラフ(はったり)ではないかと見ている。
年齢や数値を打ち込んで最適なサイズを計測するという新型サービスは少し前にも報道されたので恐らくはそのことだろうと思う。ただし、その時は「誤差が3センチ未満」とされていて、ズッコケた覚えがある。3センチもサイズが変われば服は1サイズ変わる。3センチ未満の誤差なんて何の自慢にもならない。せめて1センチ未満くらいは言わないと。
株価が上がらないことは当然の結果だと思う。
 
ZOZOの人の本もどうぞ。当方は買ってないけど。
 

この記事をSNSでシェア

Message

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ