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南充浩 オフィシャルブログ

バーゲンの抑制で営業利益を好転させても翌年以降にその反動がある

2018年10月18日 お買い得品 0

株式公開をしているアパレルの多くは、決算報告のほか、月次の商況も公開している。月次は金額は開示されず前年増減比のみが開示される。月次を公開していないのはトウキョウベースくらいではないかと思う。
そこから、コンサルタントやアナリストは各社の商況を読み解くわけだが、IR情報だけでは各社・各ブランドの実情は把握できない。
定期的に売り場を見て初めて実態が把握できる。
当方は、破格の値下げ品を探すために定期的に売り場に行く。ネット通販専用の値下がり品はネットをチェックすればいいが、どんなに進んでいるブランド、例えばユニクロだって売り場にあるすべての商品がネット通販に掲載されているわけではない。
ネット通販では「売り上げ終了」ということで掲載が終わっているが、売り場には豊富に残っていて格安に値下げされて投げ売られている商品が多々ある。もちろん、その逆もある。
これを完全に一致させることは流石のユニクロとジーユーでも不可能なようだし、他のブランドは言うには及ばない。
決算情報では利益率が好転しているが、その2年後くらいに在庫を減損処理して大幅減益になるブランドはアパレル業界には多い。
利益率を上昇させる最も簡単な方法は、値引き販売をやめる、もしくは値引き率を低めに抑えることである。
要はバーゲンセールを控えるか、値引きしても最大50%程度に抑えてしまえば利益率は好転する。しかし、多くの場合、それでは商品は売り切れずに在庫が例年よりも多く残ってしまうことになる。このため、翌年から3年後くらいにかけての後日にたまりにたまった不良在庫を投げ売らなくてはならなくなり、大幅減益に陥る。
こんなブランドは昔から本当に多い。
しかし、売り場を定期的に見ていれば「あれ?今シーズンはセールが少ない」とか「これは先シーズンの商品が投げ売りされている」と気が付く。
例えば、ライトオンである。
2015年8月期決算(非連結)では営業利益が23億1400万円となっており、前期の赤字から大幅に好転している。
また翌年の2016年8月期決算も営業利益が37億3300万円となっており、前期比61・3%増と大幅な伸びを示していた。
この2期を指して、メディアや資料だけしか読んでいないコンサルタント・アナリストは「ライトオン復活」と囃し立てのだが、2017年8月期の業績は一転して、28億4900万円の営業損失を計上した。
どうしてこうなったのかは売り場を定期的に見ていれば簡単にわかる。
2015年と2016年は、バーゲンセールを抑制していたからである。
当方のライトオンの利用の仕方は、夏冬のシーズン終わりに行って破格値に値下がりした商品を買うことである。とくにダウンジャケット類は破格値に値下がりしていた。2014年までは。
2015年12月に売り場に行ったところ、ダウンジャケット類がいつもほど値下がりしていなかった。2016年年始でも同様で2月、3月なってもほとんど値下がりせず、4月に店頭に行ったときには綺麗になくなっていた。
正直なことをいうと、ライトオンが定価でダウンジャケット類を完売させられるわけがないから、よほど売り方がうまかったのか、在庫を倉庫に格納したのかのどちらかだと思った。
そこからまた2016年12月に店頭に行くと、去年見たダウンジャケットが再入荷しており、しかも半額くらいに値下げされていた。それを当方は買った。
ここから導き出される結論は、値引きセールを抑制した結果、不良在庫が増え、それを2016年後半から投げ売りしたということである。そして2017年8月期に営業損失を計上したのはその投げ売りの減損処理のためである。
ちなみに2017年・2018年も店頭で見ている限りにおいて値引きを抑制気味にしているように見える。このため、先ごろ発表された2018年8月期連結では営業利益が12億200万円に好転している。ただし、2018年から連結決算になったため、非連結だったそれまでとは単純には比較できなくなっているが、決算報告書にもはっきりと「値下げロスを抑えたことにより売上総利益率が改善した」と書かれてある。
しかし、従来通りのやり方だと2年後~3年後にまた大幅赤字を計上することになるだけだから抜本的な改革が必要だろう。
ジーンズメイトも実態は同じだ。
13か月の変則決算となった2018年3月期決算では営業損失が6億900万円まで縮小されている。前期は8億2900万円の営業損失だったから、2億2000万円改善されたことになる。
しかし、売り場を見ていると、値引きセールを抑制していたから、赤字幅の縮小はそれが理由だと思われる。2018年もセール抑制は続いていた。夏の終わりまでは。
ジーンズメイトの2019年3月期の月次速報(要は今年4月から来年3月までの月次)は不思議な数字が並んでいる。
メディアは「6か月連続既存店増収」と持ち上げているが、今年4月から9月まで確かに既存店売上高は毎月前年実績をクリアしている。
しかし、全店売上高(既存店+新店)は4月と6月以外は前年割れである。とくに9月度はひどくて6・3%減になっている。
いくら既存店売上高が前年増になろうと、全店売上高が減っていれば、決算の売上高は減少する。
ちなみに4月から9月までの半年間(上半期)の全店売上高は前年比1・5%減で終わっているため、中間決算は減収になる可能性が極めて高い。
久しぶりに先日、ジーンズメイトの店頭にお買い得品を物色しに出かけたところ、ついに投げ売りセールが始まっていた。
自社企画ブランド「ブルースタンダード」の長袖シャツは半額で1400円くらいになっていたし、鳴り物入りで昨年秋にデビューさせた新自社企画ブランド「メイト」は大幅値下げされている。
「メイト」ブランドは基本的には不発に終わっており、元々4990円~6990円という定価設定だったジーンズは、今夏には「新価格」3800円に値下げされた。レディースは2990円くらいになっている。
その「メイト」ジーンズだが、そこからさらに半額であり、レディースなんて1500円くらいになっている。


 
京都ファブリックの夏物テーラードジャケットも7990円が4800円に値下げされている。
恐らく、2019年3月期の営業損益にこれらの大幅値下げは反映されるだろう。
売り場を定期的に見ていれば、セールが多いか少ないか、値引きが高いか低いか、などが如実にわかる。決算情報にそれを当てはめて考えれば、利益率の向上と低下の理由はわかる。
書類だけを眺めていたって、本当の理由はわからない。だから2015年・2016年に「ライトオン復活」なんていうアホな評論が横行してしまうのである。
 

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