生産背景への認識の違いがカシヤマとZOZOのオーダースーツの明暗を分けた
2018年10月16日 ネット通販 0
工場を持つのか持たないのか、アパレルに限らず製品を売るビジネスにとっては常に頭を悩ませる課題の一つであるといえる。
どちらが正解ということはない。どちらにもそれぞれメリットとデメリットがあるからだ。
環境の変化によって工場所有はメリットにもデメリットにもなる。どんな状況にも効果的な体制というのはあり得ない。ちょうど万能の軍事兵器がないのと同じで、どんな強力な兵器にも一長一短がある。
とはいえ、生産背景が確立されているということは、その商品を買う消費者にとっては利便性が高い。常に安定的に商品が供給され、よほどのトラブルがない限りは納期遅れもないからだ。
乱立する低価格パターンオーダースーツ業界において、生産背景を確立できているかどうかが新規参入組の中でZOZOとカシヤマ・ザ・スマートテーラーの明暗を完全に分けている。
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2017年10月にスタートした「カシヤマ ザ・スマートテーラー」は今期(19年2月期)、当初の予想を大幅に上回る5万3000着の販売と36億円の売上高を見込む。19年2月には中国・大連の第2生産工場の稼働により生産能力を2.5倍に上げ、年10万着のオーダーにも対応する態勢になる。さらには第3工場の拡充も検討する。
とのことで、今年春にすでにこの第三工場構想はカシヤマの採寸担当者レベルにまで周知されていた。
第二・第三工場があるということは、スタート当初から第一工場がすでにあったということで、生産背景を確立してから新規ブランドを立ち上げるのは、オンワード樫山はさすがにアパレルの「プロ」だといえる。
そしてスーツは10日~14日間くらいできっちりと到着する。(深地雅也さんが実験済み)
もちろん、出来上がったスーツに大きな採寸の狂いはない。
当然のことながら、マニアやスーツファンの目から見ると、パターン(型紙)やシルエットに甘いところはあるが、3万円のパターンオーダーならこれで十分ではないかとも思う。
一方、ZOZOはオーダースーツの納期を一度10月に納期延長しているにもかかわらず、そこからさらに2か月も遅れるという発表をしており、いかに生産背景の確保が不十分だったかが明白である。
ZOZOのオーダースーツが更なる発送延期でネットも動揺【10月配達が12月に】 ゾゾのビジネススーツ遅延
生産背景の確保、構築においてはZOZOはド素人レベルだといえる。20代の個人経営デザイナーだってこんなに頼りない生産背景ではない。
それに上場してピーク時は時価総額1兆円を越えていた(今は株価が下がって1兆円を下回っている)のなら、その金を使って、強力な工場と契約することや自家工場を作ることだってできたはずである。というかそのための資金であり、高額な絵画を買ったり、タレントと遊んだり、月旅行に行くための資金ではない。
少し前にユニクロの柳井正会長がZOZOを批判したことがあったが、その骨子は、計測スーツの不出来と、ZOZOに生産背景がないことだった。そしてその二点に関する批判は当方も深く賛同する。
とはいえ、あの当時も今も、柳井氏の批判を大々的に取り上げる気はない。
なぜなら、大々的に取り上げて得をするのはZOZOだからだ。
ZOZOとファーストリテイリングの売上高は10倍以上異なる。しかし、あの記事が掲載されることで二社は対等に見られてしまう。だから無視するのが正しい
というのは、某有名コンサルタントの意見で、当方もその意見に賛同する。
それはさておき。
自社企画製品を発売するうえで最も重要な項目の一つが生産体制をどうするのかである。生産しないことには売る物がない。これが場所貸しのモールと自社製品販売の大きな違いである。
オンワード樫山はさすがにアパレルのプロだからその部分の重要性を熟知している。ユニクロも工場の確保にはかなり力を入れてきた。もちろん、すべてが成功してはいないし、ユニクロとの契約が終了したことで倒産した工場も珍しくない。
とはいえ、まったく生産背景がゆるゆるの状態でとりあえず注文を受け付けるというようなことはしていないし、消費者に度重なる納期遅れを生じさせているわけでもない。
自家工場であるかないかは別にして、生産背景を確立することは重要で製品ビジネスを行うには外すことができない要素である。
ITテック系の企業や人々にありがちなのが商品の生産を重視しないという傾向である。
ZOZOの株価はついに3000円割れで2900円台に突入した。Yahoo!ファイナンスの掲示板は大荒れで批判的な意見がほとんどを占めており、当方はその見方に賛同する。
一部に擁護の意見があり、オーダースーツの生産を担当する中国の縫製工場の不適際だというのだが、しかし、不手際な縫製工場を選んで仕事を依頼したのなら、依頼した側にも責任はあり、工場の良し悪しを選別できなかったということでしかない。
それにそもそも工場だけの不手際だったのだろうかという点にも疑問が生じる。
計測システムの精度・確度が低いために寸足らずやダボダボのスーツを生み出しているZOZO側の責任も大いに問われるべきである。
個人的には何度も繰り返しているが、計測システムの理論が根本的に間違っているから、いくらやったって計測の精度と確度は今以上には上がらない。それに加えて生産背景の不十分さが今回改めて露呈したといえる。経営者は余計なパフォーマンスをする前に、生産背景の確率に資金を投入すべきである。それ以外に株価が再上昇することはありえないだろう。
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はるやまのイージーセレクトの方がZOZOオーダースーツよりお買い得だと思うわ