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南充浩 オフィシャルブログ

生地作りも縫製もオートメーション化されてるわけではない

2012年9月24日 未分類 0

 暑さ寒さも彼岸までというが、いやはや今年は彼岸でピタリと涼しくなった。
21日までの暑さが嘘のようである。

そんな中、22日まで4日間もJIAM(国際アパレルマシンショー)という展示会でブースのお手伝いをした。
何が展示されているかというと、ミシンとか裁断機とか、ハンガーだとかそういうアパレル製造に必要な機械のモロモロが展示されている。

ブースでお留守番をしたり、ときどき他のブースに取材に伺ったりして4日間を過ごした。

お邪魔したブースの中の一つにヤマトミシンがある。
今回いろいろと新製品を発表されていたのだが、その中から一つを紹介されたときに、「自分も含めて洋服の生産現場をどれほど想像できているのかなあ」と思い知らされた物がある。

それは熱圧着用の圧着機である。

防水ジャケットなどは通常針と糸では縫わない。
針の穴から水が浸入するからである。本格的な物は熱圧着されている。
糊(接着材)を熱で溶かして、生地と生地をくっつける。
その際、100度以上の熱で溶かすし、機材によっては蒸気も出す。
だから、その製造現場は、高熱が充満しており、オペレーターは汗だくで作業するとのことである。

今回のヤマトミシンの圧着機は全体的に高熱を出さずに、ほんの1か所だけが熱くなることで省電力のほか、部屋の中の温度上昇を抑えられるという。

この説明を聞いて、自分が「そんな苦労をすっかり忘れていた」ことに気が付かされた。
各製造現場の人たちはクーラーの効いた快適な状況で作業をしているのではない。
むしろ暑かったり寒かったりという厳しい環境で作業をされている。

何度も現場を拝見して知っていたはずなのに。

先日、福井でダナックスの合繊染色工場を見学させていただいた。
ほとんど自動化されており、人員はそれほど必要ないようだが、合繊は高温で染色する。
当然、工場の中はかなり高温である。ここで毎日作業するスタッフは冬は暖かいかもしれないが、夏は汗だくである。

これは生地を織ったり、編んだりする工場だって同じだ。
めちゃくちゃ暑い中で生地を織ったり編んだりしている。
湿度が高い方が糸が切れにくいとかで、かなり高温多湿な室温に調整しているところも少なくない。

こういう状況を目にすると、生地も服もけっして自動で作られているわけではないということを痛感する。
人が携わっているし、それもかなり厳しい環境下で作業をしている。
これを見たら消費者だって軽々しく「服は安かったらええやん」とは言えなくなるだろう。アパレルや商社、セレクトショップや百貨店の人間だって、「あと100円安くなりませんか?」とは軽々しく言えないだろう。

そもそも、アパレルの企画担当者は工場を見たことがあるのだろうか?

幸いにして普段交流させていただいている企画マンやデザイナーは、工場見学の好きな方が多い。

しかし、聞くところによると大手アパレルの企画担当者やデザイナーは工場を見たことが無い人も多いという。
だから彼らは「今すぐ新しい生地が織れませんか?」とか「来週までに縫製できませんか?」などと無茶を言う。
中には工場見学に誘うと「汚れるのがイヤ」とか「汚いから」と断る人もいるとか。

こんな人たちが企画やデザインをしているようでは、到底まともな物はできない。
他社の売れ筋の劣化コピーを思いつくのが関の山である。

自分たちが着飾ってキレイなオフィスで他社からパクって企画した商品を作ってくれているのは、彼らが嫌がる「汚い」場所なのである。彼ら・彼女らは、生地も縫製も完全オートメーションで作業されているとでも思っているのだろうか?
工場側の人間は作業はすべてロボットに任せて、自分らと同じように冷房の効いた快適なお部屋で機械の管理だけをしているとでも思っているのだろうか?

だからアパレルの企画の多くは、地に足のついてない浮ついた物で終わるのではないだろうか。

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