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南充浩 オフィシャルブログ

生地のスペックや製品の品質は売れるための最重要事項ではない

2012年8月9日 未分類 0

 普段、懇意にしてもらっているセメントプロデュースデザインが、湖東繊維工業協同組合との取り組みで、麻バッグを完成された。

http://cementdesign.shop-pro.jp/?pid=46786196

この写真を見て「商品の良しあしは、やはり色柄・デザインが占める比重が高い」と再認識した。
このデザインなら産地ブランドでなくともある程度は売れることが予想できる。

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湖東繊維工業協同組合は、滋賀県の湖東地方の産地組合で、ここは麻織物の産地である。
産地共同のオリジナル製品ブランドも3年ほど前から展開されていたが、商品のデザインは自前だったのか、どうにも外見が野暮ったい。(失礼)

湖東に限らず、数年前から生地産地の組合がオリジナルの製品ブランドを開発しているが、あまり成功している事例にはお目にかかったことがない。
その理由の一つに「色柄・デザインが野暮ったい」ことがあるのではないか。
多くの場合は、観光地の土産物か民芸品の域を出ない。
おそらく、産地企業内の自社スタッフにデザインをさせているのではないかと推測している。
残念ながらデザインを本職としない人間に、製品をデザインさせても良い物はできない。

こういうと、「デザインの素人であるはずのタレントやモデルがプロデュースしているブランドがあるじゃないか」と反論される方もおられるだろうが、彼らはあくまでも「プロデュース」や「アドバイザー」で、実際のデザインはOEM/ODM企業の担当者が行っている。
だから「素人」でもブランドを展開できる。

生地産地ブランドが往々にして陥りやすいのが、「生地のスペック」や「製造工程」への過度なこだわりである。
そこを強調すれば「売れる」と考えているのではないか。
しかし、いくら生地が高品質で丁寧に製造されているからといって、色柄・デザインが悪ければ衣料品や服飾雑貨は売れない。
それなら、グンゼは白肌着だけで売上高が稼げただろうし、ステテコは白無地のままでも需要が減らなかったはずである。

今回のセメントプロデュースデザインの湖東の麻バッグは、限定33個の販売だという。
おそらく、テストセール的な意味合いがあるのだろう。販売の方は順調そうなので、次シーズンからは量産体制に入るのではないだろうか。

製品ブランドをするなら本職のデザイナーやそれに長けた集団との取り組みが不可欠である。

こういう主張をすると、今度はとっくの昔にピークを過ぎたような昔の有名デザイナーと破格の高額ギャランティーで契約をしてしまう。ピークを過ぎているので出てくるデザイン案はあまり良くないし、破格の高額ギャラなので複数年支払うことが難しい。
そうやってまた製品ブランドが頓挫して、産地側は「デザイナーは胡散臭い」という誤った固定概念を持つことになる。
もう何十年も繰り返されてきた構図であり、今後もまた繰り返されることが予想される。

産地の製品ブランド化への道のりは果てしなく長くて遠い。
「男坂」くらい果てしない。

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