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南充浩 オフィシャルブログ

無謬のイベントは存在しない

2012年4月4日 未分類 0

 現在、メルセデス・ベンツ ファッションウィーク東京が開催中のはずである。
もともと「東京コレクション」と呼ばれていたが、今回からメルセデス・ベンツがスポンサーとなったので名称変更したらしいが、長ったらしい上に自動車の展示会のようなので「東京コレクション」もしくは「東コレ」と呼びたい。

業界の内外では昔から「東コレ」への批判・批評が流れている。
イベントなので、全員が賛同納得することはありえず、批判・批評、不平不満がある程度あることが健全な姿である。

余談だが、筆者は3年間、超大型展示会の事務局に在籍したことがある。
もちろんエライさんではない。現場のペエペエである。
事務局側としては、出展社・来場者双方の利便性を高めるために展示会ごとにいろいろと工夫を凝らす。
しかし、工夫を凝らしたことが効果を発揮しないことや不平不満が噴出することもある。
反対に、いろいろな制約からやむなく改善を断念した点が評価されることもある。

このような場合が往々にしてあるので、東コレそのものに対する批判・批評、不平不満が今後も無くなることはないだろう。

筆者が不健全だと感じるのは、そういう批判・批評が公的な新聞や雑誌に掲載されることが少ない点である。
これは東コレだけではなく、ジャパンファッションウィーク(JEW)そのものに対しても同じである。

先日、この思いを代弁してくださったブログがあるのでご紹介したい。

東京コレクションの問題点①
http://ameblo.jp/3819tune1224/entry-11210624174.html

気がついた問題点をいくつか指摘したい。

これは本来ならば、3大新聞や専門紙などが指摘すべきなのだが、みんな沈黙、沈黙。

陰でこそこそ文句を言わないで、紙面でなんとかしろと言ったところでなんともならないんだヨ!

なぜならベンツの広告やら経済産業省などからのお金で、しっかりコントロールされていて、不備やおかしな点などを指摘できないのが真相。

①公式スケジュールなどは、なぜ英文表記なのだろうか?

 こればかりは理解に苦しむ。

 我々が海外のコレクション取材に行けば、その種のものはすべてその国の言語であって日本語はない。日本で開催されるのにスケジュールやデザイナー名が英文とはどうしてなのだろうか。

 たとえばデザイナー名の英文表記を見て、正しい漢字を書ける人がいるだろうか。「Sara Arai」という名前を間違いなく書けるか?Araiは、新井なのか荒井なのか新居なのか荒居なのか。Saraは、沙羅なのか沙良なのか。Saitoは、斉藤なのか斎藤なのか齊藤なのか齋藤なのか西藤なのか・・・。

 こんな基本的なことが記載されていないのでは、役に立たないも同然だ。

②入場受付の不慣れなアルバイトたちの役割が分からない。

 入場口で招待状のチェックをするやり方は海外のものを真似しているが、日本では馴染まないシステムだと確信する。

 それにアルバイトたちを管轄している責任者(そういうのが存在するならば)が、受付業務を分かっていないから混乱が起こるし、ひどい時には招待状を見せたと思ったら、1メートルもない先でまた見せるなんて馬鹿なことも。

 中に入ればコレクション開催デザイナーの受け付けがいる。彼らだけで充分今までやってきて何の支障もなかったのに、「JFW」というものになってから入場に手間取るようになったのはなぜだろう。

③スポンサー席というものが存在する不思議。

 スポンサーというのは主催者サイドの人間ではないのか。主催者が最前列で見るなどというのは大阪の会社ではよくあることだが、これはおかしいということに誰も疑問を持たないのだろうか。

 きちんとスポンサーに主催者サイドが説明すべきであろう。

  「スナオ クワハラ」や「メルシーボークゥー」のコレクションの時に、社長はスタンディング席の一番後ろで立って見ていた。これぞ正しい主催者の見方と言えるのではないか。爪の垢でももらって煎じて飲んでみたらいかが。

 

 お金などの援助とお客にコレクションをしっかり見てもらうこととどちらが大切なのだろうか。お金と答えが返ってくるようではね。

④スケジュールの組み方をきちんと考えて欲しい。

 主催者サイドに要望事項で毎回そのように記載しているが、回を追うごとにひどくなっている。

 スケジュールを組む人間たちが、実際に電車を使って移動してみてはいかがだろうか。

 そうすれば時間に、次のコレクションに物理的に行けないことが分かる。

とのことである。

このブログ主が言うように、経済産業省やメルセデス・ベンツのスポンサー料がマスコミの口を封じているなら、東電となんら変わらないではないか。
いや、東電だけではなく、リコーも韓流もすべて同根の問題である。

そういえば特に③なのだが、東コレ同様にかつての大阪コレクションにもスポンサー席があった。
ステージ側面の最前列であったことが多く、ステージ正面の最前列は一応マスコミ向けとされていた。
ブログ主の言うように側面の最前列がスポンサーに必要だとはまったく思わないが、まだ側面である。
以前、愛知県一宮の地場産業振興センターで現地の組合が、パリからブランドを招いてファッションショーをしたことがある。
たまたま、取材でそれを見に行ったのだが、唖然としたことに、ステージ正面の最前列までもが組合のエライさん席となっている。
マスコミは後ろで立ち見してくださいというわけである。

あえて言うと、組合の理事長だかなんだかのエライさんがステージ正面の最前列に座る必要はまったくない。
どうしても正面から見たいのであれば、2列目・3列目に座れば良い。
もしくは東コレのように側面最前列で十分である。

さて、JFWの問題点を指摘しているブログもご紹介したい。
こちらは台東デザイナーズビレッジの鈴木淳村長のブログである。

http://blog.livedoor.jp/tdv001/archives/53657416.html

ツッコミどころは
「そもそも東京コレクションに意義はあるのか?」
「JFW東京ファッションウィークには、国からの助成金が出なくなったのではないか」
「どうしてJFWがその事業を受託することになっているのか」
「JFWの事業自体は億単位の助成金があるが、目標、戦略、運用の3つの観点で、それがファッション業界振興にほんとうにつながっているのか」
「業界の重鎮ばかりが集まって密室で方針決めて、運営していていいのか」
などのJFW自体のあり方や事業効果じゃないかと思います。

さて、事業のあり方と言えば、
このクリエイション・ビジネス化支援事業というのは、公募の体裁はとっていますが、要項を読むと、JFWが受託することを前提に作られた制度であることがわかります。

[対象となる事業者]次の(1)~(7)の要件に適合する者とする。
(1) 日本国内に本拠を置いて、日本国内で事業を行っている者であること。
(2) 事業を遂行するに足る熱意、経験及び能力を有する者であること。
(3) 特定企業の利益を図るような運営を行わない者であること。
(4) 助成対象事業者として、不適当と認められる行為がなかった者であること。
(5) 国内外のファッション性の高い商品を企画・製造または販売するクリエイティブ企業とのネットワークを有する者であること。
(6) 川上から川中、川下までファッションに係わる産業構造に通じ、日本の強み・弱みを見極める知見を持ったスタッフを有した事務局機能を有する者であること。
(7) 海外のファッション・ウィーク関係機関とのネットワークを有する者であること。

これJFW以外にないでしょう。

しかも、年間1億円を立て替えて、年度末に経産省に領収書を提出し精算して、半額が戻ってきます。それができるのはある程度の規模の委託業者になります。
そうすると熱意はあってもお金や組織が脆弱な企業や団体は対象外になります。

しかし、事業を受託したとしても、クリエイターのビジネスを支援をする側にも受ける側にも、目標も戦略も運用ノウハウも欠けてないでしょうか。助成金の費用対効果についての意識が薄いのかもしれません。

これまで、何億もつぎ込んで、どんな成果がでたのか、総括したのでしょうか?
総括した上で、新たな事業費用を充てているのか心配になります。

我々マーケティングが専門の人間にとっては、費用対効果を計測しないのも、効果が出る見込みが無いままにお金をつぎ込むのも、常に成果と合理性を高める工夫をしないのも、
どうも気持ちが悪くて仕方がない。

とのことである。

今回は引用が多く長くなりすぎてしまったが、
自由な議論が行われないまま継続することが「日本のファッション産業を育てる」ことにつながるとはどうしても思えない。

東コレを含むJFWそのものについて批判・批評、検証が必要ではないか。
無謬の組織やイベントなど絶対に存在するはずがないからである。

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