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南充浩 オフィシャルブログ

ファクトタムがトウキョウベースとの資本提携を解消

2018年8月30日 デザイナー 0

デザイナーズブランド「ファクトタム」とトウキョウベースが資本提携を解消した。
繊研新聞が報じている。
「ファクトタム」 トウキョウベースとの資本提携解消
https://senken.co.jp/posts/factotum-tokyobase-180830

デザイナーブランド「ファクトタム」を運営するロスチャイルド(東京、有働幸司代表)はこのほど、セレクトショップ「ステュディオス」を運営するトウキョウベース(東京、谷正人社長兼CEO=最高経営責任者)との資本提携を解消した。昨年6月30日から提携していたが、ロスチャイルドがトウキョウベースに譲渡していた株式を買い戻すことで、わずか1年で提携を解消することになった。

とのことである。
たしかに昨年夏に資本提携が発表されてから、トウキョウベースがファクトタムに対して、目に見える形で何か新しいことをした形跡はまったくない。
傍からは「のんびりボチボチやるのかな」としか見えなかった。
もちろん、水面下ではさまざまなことがあったのだろうと思われるが、外野から見ていると「単に提携しただけ」としか見えなかった。
繊研新聞の記事では

出店支援や販売支援、EC運営、海外コレクション出品などで高いシナジーを発揮することを目的に、両社は資本提携した。

とあるが、まずEC運営に関していえば、トウキョウベースは他ブランドを支援できるような立場にもないし、そんなノウハウも現段階では持ち合わせていない。
トウキョウベースにEC売上比率が高いことはよく報道されているが、その売上高の86%はZOZOTOWNでの販売である。
自社サイトでの売上比率はわずかに14%しかない。
実質的にトウキョウベースのECとは、ZOZOTOWN内での販売でしかない。
そんな企業がどうやって他ブランドのEC運営を支援できるのだろうか。
自社がZOZOTOWNに支援してもらっているのに。
ちなみにファクトタムもZOZOTOWNに出店しているから、両社の立場は対等である。
また、出店支援や販売支援とあるが、出店支援した形跡はほとんど見られない。
STUDIOUS運営のTOKYO BASE、FACTOTUM運営会社株式を49%取得
https://media.macloud.jp/archives/868
これは昨年の記事だが、業界紙よりも比較的詳細に報じられている。
この中に2017年夏当時のファクトタムの店舗展開が記されている。

2017年時点で、旗艦店2店舗、セレクトショップ路面店39店舗、セレクトショップ/ショップインショップ14店舗、アウトレットショップ1店舗展開している。

とある。
そして、2018年8月時点で、ファクトタムのウェブサイトに掲載されているショップリストによると
旗艦店3店舗、卸売り先28店舗、ウェブ2店舗(ZOZOTOWNと自社通販サイト)
となっている。
旗艦店こそ1店舗増えているが、卸売り先は11店舗減っている。ちなみにアウトレットショップも確認できない。
総店舗数としては減っている。
もちろん、1店舗当たりへの卸売り総額は増えている可能性もゼロではないが、出店支援があったようには到底思えない。
逆に放置プレイだったのではないかとすら思える。
さらにいぶかしく思えるのが、ショップリストの中にトウキョウベースが運営するショップが「ステュディオス 東京」しか含まれていない点である。
ステュディオスは全国にあるから、通常、資本提携したブランドなら、トウキョウベース内での取り扱い店舗が一気に増える。
それがまるで増えていない。
これで資本提携した意味があるのだろうかと疑問に感じる。
今回の提携解消をどちらから言い出したのかはわからないが、もしファクトタム側から言い出したのだとしたら、それも納得できる。
この取り扱いでは資本提携している意味がまったくないと外野からは見える。
それなら、ファクトタムの資本金は300万円しかないから、資金的には不安定になるというリスクはあるが、提携を解消して自由に活動できた方がメリットがあると判断したとしても不思議ではない。
また記事中で書かれている「海外コレクション出品」も果たされた形跡はまったくない。
さらに繊研新聞は

若手デザイナーブランドは90年代以降、卸中心のビジネスが主流となり、少ない資金で起業できるが、規模拡大のスピード感は無くなった。このため昨年は、この両社以外にも、いくつかのデザイナーブランドが商社や小売関連企業と資本提携を結び、規模の拡大やシナジーの発揮を目指してきた。しかし、現実的には、デザイナーブランド側と提携企業のシナジーが発揮できるまでに至らず、提携を解消する場合もあることが浮き彫りになった。

とまとめているが、3年くらい前から相次いで若手デザイナーズブランドを大手企業が買収したり、資本提携するケースが増えてきたが、今回の事例に代表されるように、規模の拡大もシナジー効果も見られないものがほとんどである。
瀧定大阪から再独立したシアタープロダクツも同様だったといえる。
もっともこちらはそれ以外にも瀧定大阪内部の問題も絡んでいたのだが。(笑)
国内のデザイナーズブランドのビジネス規模拡大が極めて難しいことが改めて周知されたといえる。
とはいえ、この間、トウキョウベースも相当に無策で、目に見えた活動としては、株価暴落のさなかに、サッカーロシアワールドカップを現地観戦しに行ったことと、その直後に社員旅行で沖縄に行ったことくらいしかない。
若手デザイナーズブランドのビジネス拡大の難しさもさることながら、トウキョウベースの支援体制も整っていなかったということだろう。
ブランド側にもさまざまな問題はあるが、トウキョウベース然り、瀧定大阪然り、支援・買収する側の企業の姿勢や社内体制にも再考の余地は大いにあるのではないか。

有料NOTE記事を更新しました~♪
ライザップグループのアパレル事業が大きく伸びるとは思えない理由
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n0200a63add2e

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