インターネットの定着化で、見直されるアパレルブランドのテレビCM
2011年11月8日 未分類 0
昨年からアパレルブランドのテレビCMが増えたと感じる。
ファッション雑誌の媒体力が落ちているとか、CMを出せるほど業績が良い企業がいくつか現れたとか、理由は様々考えられると思う。
しかし、テレビCMが増えた原因の最大の理由として、クロスカンパニーの「アースミュージック&エコロジー」のテレビCMの成功があるのではないだろうか。
この大ヒットCMが流れたのが2010年春のことで、女優の宮崎あおいさんがアカペラで、「ヒマラヤほどの~♪」と歌い、その後にブランド名が流れるというまことに単純な作りだった。
これまで、特定の単品に絞ったユニクロ以外に、アパレルブランドでのヒットCMは無かった。
そのため、筆者もこのCMも必ずコケると考えていたが、結果は逆だった。本当に見る目のない話である。
アパレルブランドのテレビCMがヒットしなかったのは、イメージカットが流れて、最後にブランド名または社名が流れるという作りにあった。これだけでは、視聴者は何のことやらさっぱりわからない。一応「●●というブランドがあるんだなあ」とか「××という会社があるんだなあ」というのを認識する程度だった。
これでは、店頭に行くという動機づけにはならないし、特定の「▼」という商品を買う理由にもならない。
その弱点を克服したのが、フリースとかダウンなど、ユニクロの単品に絞ったテレビCMであり、501に絞ったリーバイスのテレビCMであるといえる。
昨年登場した「アースミュージック&エコロジー」のテレビCMの作りは、従来のアパレルブランドのCMとほとんど同じである。ユニクロの手法とは異なる。それなのになぜヒットしたかというと、インターネットの利用が生活に根付いたからではないのか。
このCMが流れてインターネットでの検索が急増したと言われている。
たしかにCMだけを素直に眺めたら、宮崎あおいさんのイメージCMに見えてアパレルブランドのCMとは思えない。「アースミュージック&エコロジー」というブランド名自体が、エコのスローガンのようでブランドらしくない。
しかしインターネットで検索することでアパレルブランドのCMだと初めて認識できる。
当時の視聴者の気持ちをデフォルメして書いてみると「何かよくわからん宮崎あおいのCM流れてたなあ。あれ何やろ?ネットで検索したろかな?」という感じだったと推測される。
反対に言えば、インターネットが生活に根付いたからあのCMはヒットしたともいえる。
マーケティングの基礎知識として「AIDMA(アイドマ)」の法則があるとされてきた。
これはどなたでもご存知のことだろうと思う。
Attention(注意), Interest(関心、興味), Desire(欲求), Memory(記憶), Action(購買行動)の順で消費者は行動するという一般原則だ。
しかし、近年インターネットが登場したことで、
「AISAS(アイサス)」の法則に変わったと言われている。
注意と関心はそのままだが、次にSearch,(検索)が来て購買行動(Action)につながり、
最後はShare(共有)するという行動原則である。
このCMに関しては「サーチ(検索)」が重要なファクターであったということになる。
「アースミュージック&エコロジー」のヒット以来、ユナイテッドアローズや、ポイントの「ローリーズファーム」、同じクロスカンパニーの「イーハイフンワールドギャラリー」などが次々とテレビCMを流し始めたが、すべて同じ手法である。ユニクロやかつてのリーバイスのように単品に絞り込んだ作りではない。
いずれのCMも「AISAS」の法則に従って、「サーチ」を重要事項として認識している。
かつてはヒットしないと言われたアパレルブランドのテレビCMが、インターネットの定着によって、ヒットしやすくなったというのは、これからの販促を考える上でかなり参考になる事例ではないだろうか。