百貨店のネット通販がさっぱり伸びない理由は明白
2018年7月25日 ネット通販 0
ふとこんな記事が目に飛び込んできた。
百貨店がECで成功するために必要なこと
https://www.fashionsnap.com/article/2018-07-25/ec-2028/
繊研プラスからファッションスナップに転載された記事だ。
百貨店にとってECは長年の課題だ。大手各社は20年前からネット販売に着手し、M&A(企業の合併・買収)を含めてビジネスモデルの構築に取り組んできた。EC売上高は2ケタ増が続くが、全社売上高に占める比率は1~2%に過ぎない。
日本の百貨店はECで、実店舗と異なる客層を狙っていた。その結果が店舗と連携できず、新規客の獲得に至らなかった。
とある。
当方は百貨店のネット通販にはさっぱり興味はないし、今後も彼らが拡大できるとは毛頭思わないが、そりゃこんなやり方をしていたら伸びないのは当たり前だと改めて思った。
やっぱり彼らはアホだと。
彼ら百貨店が実店舗とは異なる客層をECで狙った理由を推測してみる。
1、俺たちは知名度が高いから実店舗と異なる客層が流入するだろうと考えた
2、実店舗の売上高を取られるのが嫌だった
3、実店舗と異なる客層でプラスアルファの売上高獲得を狙った
こんなところではないかと思う。
しかし、百貨店は自分たちが思っているほど知名度は高くないし、多くの消費者から支持されているわけではない。
むろん、コアなマニアみたいな百貨店支持者は今でもいるが、それは最早多数派ではない。
48歳の初老の当方だってもう10年以上百貨店で買い物をしていない。
当方は食にはこだわりがないから、百貨店のデパ地下では買い物をしない。
近所のスーパー万代の投げ売り品で十分だ。
職業柄、洋服は買うが百貨店ブランドを買う必要性は10年くらい前から感じなくなった。
ODM(デザインから生産までを丸ごと請け負うこと)業者を多用して同質化してしまった百貨店納入アパレルの商品にさっぱり魅力を感じなくなったからだ。
おまけに価格が高い。
低価格ブランドの洋服の「見た目」も向上しているから、そちらで代用できてしまう。
百貨店で買い物をしたことがないという若い層が多いが、恐らく、当方と同じ理由ではないかと思う。
こういう有様で、いくら百貨店が通販サイトを開設したからといって、おいそれと新規客が流入するはずもない。
となると、百貨店が目論んだ「新規客の流入」というのは、端から考え方が間違っていたということである。
あとは実店舗部隊のくだらない縄張り意識も大いに邪魔をしただろう。
この記事を読んで、先日紹介した、川添隆さんの著書、『「実店舗+EC」戦略、成功の法則』をまた思い出した。
ここには、ECの客は実店舗から連れてくるべきと書かれてある。
なぜなら、実店舗で買っている客はそのブランドや店の絶対的なファンだからだ。
見ず知らずの他人を連れてきたって買い上げ率は低い。
皆さんだって、今まで買ったこともないような店やブランドですぐに商品は買わないだろう。
いろいろと触ったり試着したりしてようやく買う。
だが、いつも買っている店やブランドなら、実店舗でも買うし、実店舗に行く時間がないときはインターネット通販で買う。
こういうファンはネット通販のみでは買わず、必ず実店舗とネット両方で買う。
この著書の中には、
「私が以前勤務していたレディースアパレルの場合は、『店頭・ECを併用するお客様』の店頭購入額は、『店舗のみ利用のお客様』による店頭購入額と比べて1・9倍、メガネスーパーの場合は(中略)2・6倍というデータが出ています」
とある。
実店舗のファンは実店舗とネット両方で買う傾向が強く、購入額は2倍前後に跳ね上がるということになる。
ちなみに、川添さんは、メガネスーパーの前は、クレッジ(のちにオルケスに社名変更)というアパレルに勤務しておられた。川添さんが離れたあと、たった2年弱でオルケスはあえなく63億円もの負債を抱えて経営破綻してしまったのだが。
当時のオルケス経営者の破綻させる手腕は凄まじい。たった2年弱でこれほど鮮やかに企業を経営破綻に追い込める人もそうはいないだろう。
まあ、それはさておき。
ネット通販導入で、揉める理由の一つが「実店舗部隊によるくだらない縄張り意識」である。
恐らく百貨店にもこれは根強く残っているだろう。
外野から見れば、会社全体の売上高が増えるんならネットで売れようが、実店舗で売れようがどっちでも構わないと思うのだが、百貨店の年配スタッフ層にはやたらと「実店舗意識」の強いのが多いから、縄張り意識も強固なのではないかと思う。
しかし、本当にECを強化したいと思っているなら、経営者は断固として導入すべきだし、新しい評価基準を策定すべきである。
それができないなら「EC強化」なんてのは絵に描いた餅でしかない。
ちなみにECで業績を伸ばしている企業やブランドはそれなりに評価基準を策定している。
川添さんの著書ではメガネスーパーの事例が書かれており、
・EC購入品の店頭受け取り
・メガネフレームはEC購入、レンズは実店舗購入
という二つの場合が紹介されている。
EC購入品の店頭受け取りの場合、売上も評価もECに付く。
一方、フレームはEC購入・レンズは実店舗購入の場合、売上はEC・評価は実店舗に付く。
そういう風に評価制度を作っている。
もちろん、誰もが全員納得するような評価基準や評価制度は存在しないし、作ることはできない。
だがそれでも評価制度を作らねば、EC強化なんて夢のまた夢でしかない。
導入には反対の声も上がるだろうが、そこを断固として導入できなれば経営者としては失格である。
それをやるのが嫌なら経営者なんて辞めてしまった方がいいし、百貨店はEC強化なんて目標を掲げるべきではない。
それだけのことである。
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トウキョウベースの香港店は活況なのか?売上高から入店客数を類推してみたhttps://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n78d0021044a2
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昨年9月下旬にブログの仕様を変えて、更新通知が届かなくなった方がおられると思いますので、お手数ですが、新たにRSS登録をお願いします
まあ、そんなことが書かれてある本なので「EC強化」を掲げている企業やブランドは読んだ方がいいと思う。