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南充浩 オフィシャルブログ

百貨店店舗別売上高ベスト10から見えてくること ~高島屋の力強さと大阪地区のインバウンド需要の好調さ~

2018年5月28日 決算 0

先日、阪急百貨店うめだ本店の2018年3月期の売上高が9%増の2403億円に達したと報道された。
阪急本店、売上高日本一へ肉薄なるか 荒木社長「2700億円目指す」
https://www.wwdjapan.com/612989

百貨店の単独店舗売上高としては阪急百貨店うめだ本店は不動の2位である。
1位はこれまた不動の伊勢丹新宿本店で2700億円の売上高がある。
阪急の「2700億円目指す」というのは、伊勢丹新宿に追いつきたいということの表れである。
この記事はウェブ版だが、同じ記事の紙媒体には面白い表が付けられていたのでそちらをご紹介したい。

あまり美しくない画像で申し訳ない。
1位 伊勢丹新宿本店 2741億円 2・1%増
2位 阪急うめだ本店 2403億円 9・0%増
3位 西武池袋本店  1851億円 0・8%減
4位 JR名古屋高島屋 1557億円 21・1%増
5位 三越日本橋店  1553億円 5・9%減
6位 高島屋大阪店  1414億円 8・6%増
7位 高島屋日本橋  1342億円 1・0%増
8位 高島屋横浜店  1316億円 1・7%増
9位 あべのハルカス近鉄本店 1176億円 15・0%増
10位 松坂屋名古屋店 1176億円 0・3%減
となっている。
単独店舗で売上高2000億円を越えているのは伊勢丹新宿と阪急うめだ本店しかないから、その販売力は大したものだといえる。
しかし、このランキングで浮かび上がってくるのは高島屋の強さである。
トップテンに高島屋が3店舗(大阪、日本橋、横浜)もランクインしている。
JRとの合弁会社であるJR名古屋高島屋を入れると4店舗がランクインしていることとなり、トップテンのうちその4割が高島屋だということになる。
逆にそれ以外の伊勢丹、阪急、西武、近鉄、松坂屋は、強い単独店があるものの、それ以外の店舗が弱いということがいえる。
三越もいまや日本橋だけがランクインしており、銀座店は売上高が1000億円にも届いていない。
そして、もう少し見て行くと、前年比で大幅増となっているのは4店舗あり、そのうち3店舗は大阪だということにも気が付く。
阪急うめだ本店 9・0%増
高島屋大阪店  8・6%増
あべのハルカス 15・0%増
である。
JR名古屋高島屋も21・1%増と大幅に伸びているが、この表の注釈には「JR名古屋高島屋は17年4月開業のタカシマヤゲートタワーモールを含む」と書かれてある。
新ビルの売上高を含んで21・1%増なので実際の単独店舗の伸び率はもっと低いということになり、前年度の売上高は1250億円ほどということになる。
故にタカシマヤゲートタワーモールの初年度売上高は150~200億円くらいと考えられるのではないかと思う。
阪急うめだ本店が好調だった理由を記事では

阪急本店の商品別売上高は、婦人服が同6%増、ラグジュアリーブランドが同13%増、化粧品が同24%増となった。勢いを象徴するのが3階の婦人モードのゾーンで、デザイナーブランドからガールズブランド、ジュエリー、雑貨、化粧品などを混在させた構成が買い回りを促し、同16%増で推移する。

としているが、重要な視点が欠けているのではないだろうか。
阪急に限らず、難波(高島屋)、阿倍野・天王寺(近鉄)がそろって大幅売上高増ということは、大阪地区全体の売上高が良かったということになる。
一方、東京の各店舗は微増か微減である。
となると、阪急の売り場構成が巧みだったというよりも、大阪全体の好調に引きずられたという要素が強いということになる。
考えられる要因は2つ
1、前年までの大阪の各店舗が悪すぎた (悪すぎたために前年増が容易だった)
2、大阪地区が好調だった要因が何かある

である。
そして、2の要因でいうなら、これはまさしく外国人観光客の増加、インバウンド需要の好調ということになるのではないか。
インバウンド需要の増加だといえる理由は難波と天王寺の好調である。
2015年末~2016年前半にかけてインバウンド需要が苦戦した際、それでも高島屋大阪店は好調で、その理由はインバウンド需要の堅調な推移だと言われた。
実際に、当時、高島屋難波店に行ったところ、平日の昼下がりだというのに免税レジは長蛇の列だった。
いかにインバウンド需要が底堅かったかを物語っている。
そして、天王寺(近鉄)の急上昇である。
天王寺はこれまでほとんど外国人観光客はいなかった。心斎橋・難波や梅田に比べて著しく外国人観光客は少なかった。
それが2016年末から2017年初頭にかけて外国人観光客が急増した。
実際にJR天王寺駅に直結している阪和線(堺、関空、和歌山方面行き)や大和路線(奈良行き)は平日昼間でも外国人観光客でいっぱいである。
2017年初頭までは、朝夕の通勤ラッシュは満員だったが、平日昼間はそれほど混雑しない路線だった。
それが今は平日昼間でも座席が埋まっている。埋まっている原因は外国人観光客である。
あべのハルカス近鉄本店の急上昇は間違いなくインバウンド需要の増加といえる。
一方、東京はこれまででインバウンド需要をあらかた取り込みきっており、すでに分母が大きいため増加率が低いということになったと考えられるのではないか。
さて、阪急うめだ本店は意気軒高だが、果たして順調にこのまま300億円上積みできるだろうか。
不可能ではないと思うが、不安定なインバウンド需要に支えられている点に危うさも感じる。
これは急上昇した大阪地区の全店舗にもいえることだ。
今のインバウンド需要がいつまで続くのか。うまく行けば世界有数の観光地として定着できるが、一時のブームで終わる可能性もある。
インバウンド需要に対応することは重要だが、「インバウンドはボーナス」とでも考えて、インバウンド抜きでもぐらつかない経営姿勢が求められるのではないか。

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