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南充浩 オフィシャルブログ

マイナスイメージを転換するユニクロのコピーライト

2011年7月26日 未分類 0

 ユニクロのプレスリリースや販促コピーは非常に勉強させられることが多い。
昨日、送られてきたメルマガは、秋冬の新作ががっちり紹介されていた。
その中で、恒例のウルトラライトダウンの紹介にこんな一節があった。
「ダウンパックを使わない製法と極細ナイロンを使用して、驚きの軽さを実現しました。~」

一般的なダウンジャケットは、羽毛を入れるダウンパックと呼ばれる袋と、表生地との2重構造にすることで、羽毛が生地の間から飛び出ることを防いでいる。
ダウンパック内蔵のダウンジャケットの方が一般的には「良い商品」とされている。
いろいろ調べてみると、高級ブランドでも縫製をしっかりしているのでダウンパックなしという商品も一部にはあるようだが。

ただ、これまでの経験でいうなら、わざわざ「ダウンパックなし」をメリットとして表示したブランドはあまり知らない。あまりどころか実際には一つもしらない。
「ダウンパックなし」とわざわざ表示しなかったのは、2つの理由があると思う。

1、一般消費者がダウンパックなるものをあまり知らない
2、「ダウンパックなし」を表示すると「安物」という悪い印象を与える

ではないだろうか。
もしかしたら他にも理由があるかもしれないが、その場合はご指摘いただきたい。

今回、ユニクロはあえて「ダウンパックなし」をメリットとして表示している。
先のような文言でまとめるなら、ダウンパックなしが非常にプラス要素に思える。これはユニクロの販促チームの手腕といえるだろう。
ユニクロは昨年10月にウルトラライトダウンにダウンパックがないというリリースを自社のHPで発表している。
http://www.uniqlo.com/jp/corp/pressrelease/2010/10/100614_outer.html

これによると、

生地に熱と圧力を掛けることで、糸と糸の間の目がつまり、羽毛が抜けにくくなりました。この特別な加工により、ダウンパックを使用する必要がなくなり、ダウンパック分の重量を軽くすることができました。

とのことである。
新しい技術を開発したので、「理論上」ダウンパックは不要になったというわけだ。

このようにユニクロは、他のアイテムや取り組みにおいてもリリースの書き方や販促コピーで、元来マイナス要素と受け取られかねない事象を、うまくプラスっぽく転換している。

個人的には絶対買わないけど上手いネーミングだなあと思うのが「ネオレザー」である。
ネオレザーとははっきり言ってしまえば、ポリウレタンの合皮である。
合皮=合成皮革という素材名の持つチープ感はただごとではない。
「ゴウセイヒカク」と声に出して発音してもチープ感が漂ってくる。

素材名としては、どちらかといえばマイナスイメージが強いといえる。
これを「ネオレザー」と言い換えることによってプラスイメージに転換している。
ネオ(ドイツ語で新しい)レザーとくれば、「何だかカッコよさげだし、新開発素材みたい」という印象を受ける。
実際は新しくもなんともない、普通の合成皮革であるとしても。

おそらく繊維業界人は最初に、「ネオレザー」と聞いたとき冷笑したはずである。
「ネオレザーって大層な名前付けてるけど、実際はゴウセイヒカクですやん」という風に。
自分もそうであったし、今でもそう思っている。

ユニクロをすごいなあと思うのは、いくら冷笑しても「ネオレザー」という表記を止めなかったことである。
発売からもう3年以上が経過していると思うが、今ではすっかり「はいはい。ネオレザーね」という感じで、多くの人が受け入れている。

コピーライトの巧みさと、冷笑されても恥ずかしげもなく言い続けるというユニクロの姿勢は、他企業の販促担当者が大いに見習うべき点ではないかと思う。

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