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南充浩 オフィシャルブログ

自社企画商品の増加でテイストが薄まったセレクトショップ

2017年10月19日 企業研究 0

 今日の佐藤正臣さんのブログにこんな一節がある。
”オリジナル商品(自社企画)等の商品構成比を上げ、買い付け等の他社の比率を下げ、顧客に見合った品揃えにする”

こういう宣言をする大手セレクトショップが多いが、はっきり言ってこれは偽善的な建前にすぎない。
本音は「利益率の低い仕入れ商品を減らして、利益率の高い自社企画商品を増やして、うちの利益率を高めるよ」というものにすぎない。
もっとも、この建前にも少しばかりの事実も含まれていて、近年、卸売りメーカーも売れ行き不振から、以前のように商品を山積みにしておらず、在庫を極力持たない体制になっている。
このため、セレクト側が追加を欲しがっても、対応できないことは珍しくない。また効率化のため品番数を減らしているメーカーも多い。
そうなると、補充が効かず商品バリエーションも少ないということになり、セレクト側としては自社の顧客に見合った品ぞろえや補充ができにくいため、自社企画商品比率を引き上げざるを得ないという部分もある。
利益率を高めたいという目的が8割、品ぞろえと補充のためというのが2割というところが、セレクト側の実態ではないかと思う。
自社企画商品比率を高めることが必ずしも成功するとは限らない。
仕入れ商品は良くも悪くもメーカーの個性が強いから、それを減らすと店の個性が弱まるということがある。
一方、セレクトの自社企画商品は完全にOEM/ODMメーカー任せだから、きわめて他店と同質化する可能性が高い。
そうなると、個性が消えて同質化した店ということになる。
関西人からすると昔から親しんできた「チャオパニック」の失速は好例といえるのではないか。
パルHD「チャオパニック」「コロニー2139」の再建急ぐ
https://www.wwdjapan.com/496685

「チャオパニック」は同社の主力ブランドだが、今期(18年2月期)は派生業態の「CPCM」を含めて10億円の赤字になる見通し。14年にスタートした「コロニー2139」は将来的に売上高400億円の目標を掲げる戦略ブランドだが、出店は5店舗にとどまり、いまだ赤字が続く。

とある。
チャオパニックはパルの顔ともいえる代表ブランドである。
関西の洋服専門店から有力セレクトショップ・SPAチェーンに成長したパルを牽引したブランドともいえる。
当方が初めてチャオパニックを目にしたのは95年の天王寺MIO(現:MIO本館)オープン時だった。
6階にかなり広い坪数がとられている。
当時は、ドミンゴやジョンブル、リーなどのジーンズブランドと仕入れトップスが豊富にあり、この仕事をしていなかったので取材をしたわけではないが、体感的には仕入れ品が5割前後あったのではないかと思う。
2005年あたりから如実に自社企画製品比率が増えた。
ドミンゴもジョンブルももうない。リーは少しある。
トップス類のほとんどは見たところOEM/ODMメーカーによる自社企画製品だ。
実際に、当方が多少の交流がある企業の中でも3~4社はパルのOEMを手掛けている。
当方が知らない先も含めると相当に多いだろう。
2005年あたりから、チャオパニックの存在感というかテイストは薄れ始めてきたと感じる。
買わないまでもそれまでは品ぞろえを見ることを目的に6階には定期的に足を運んだが、2005年以降はその回数が減り、2010年以降はほとんど訪れなくなった。見る理由がほとんどなくなったからだ。
2010年ごろになると、チャオパニックのショッピングセンター向け低価格帯ライン「チャオパニックティピー」と商品の区別がつかなくなってきた。逆に2014年ごろまではチャオパニックティピーのほうが、「お!値段以上」という商品が多かったと感じる。
そのティピーも3年ほど前から露出と存在感が急落していると感じる。去年と今年はティピーで買った商品はない。
パル社内でもこのままではマズイと感じているようで(実際に幹部からそういう声を聴いた)、それを挽回するためにCPCMを開始したが、まだそこまでの効果は出ていないといえる。
鳴り物入りでデビューしたコロニー2139だが、ほとんど目にしたことがないと思っていたら、5店舗しかないわけだから見なくても当然である。これで400億円規模に成長させるのはほぼ不可能ではないかと思う。
そもそも現在のパルに400億円規模のブランドは存在しない。
社内史上初めてとなる挑戦だが、なかなか厳しい。
一般的にセレクトショップは「濃い」イメージを与えて、一般人向けに徐々にテイストを薄めていくという手法を使う。
セレクトショップンに限らずブランドはだいたいどれもそういうやり方になる。
濃いイメージを好むのはアーリーアダプターとかイノベーターとか言われるような変態的なごく一部に過ぎず、マスはその濃いイメージを持った薄い商品を好む。これは洋服に限らずすべての商品がそうだろう。
しかし、残念なことに現在のマスは、薄くなったチャオパニックしか知らない。
薄くなってもう15年以上になるからだ。
もう一度、イメージを濃くする強烈な取り組みが必要だと思うが果して可能だろうか。
決算帳簿上での利益率改善は比較的容易にできるかもしれないが、それだけでは根本的な解決にはならないといえる。

久しぶりにNOTEを更新しました⇓
国産ジーンズ第1号ブランドは「キャントン」か「ビッグジョン」か?
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n619df72be1bb
あと、インスタグラムもやってま~す♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro


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