ビジネススーツに「突飛な個性」は必要ない
2017年6月9日 考察 0
先日、茂木健一郎という人が就活生を「無個性だ」と批判したが何が言いたいのかさっぱりわからない。
もともと、個人的には茂木健一郎という人が嫌いである。
小太りな上にもじゃもじゃの白髪交じりの長髪という清潔感のない風貌も嫌いだし、左気味の発言も嫌いである。
個人的な好みはさておき。
就活生、特に男性は今では一様に黒のスーツを着ている。
筆者が大学生のときは紺が主流だった。
「全員似たようなスーツなんて面白くないなあ」と、25年前に自分も思ったが、元来、スーツというのはそんなに個性の強い衣服ではない。
メンズのスーツはドレスコードが厳格に決められている。
一方、女性がビジネススーツを着始めた歴史は比較的浅いため、ドレスコードはメンズより緩やかである。
緩やかというよりはルールが確立できていないという方が実情に近いと感じる。
なので、レディースのスーツについてはここでは触れない。
メンズのスーツ、とくにビジネスで使えるスーツだと本来の色は紺とグレーの2色である。
そういう点で見ると、今の就活生の「黒一択」というのは確かにおかしい。
まあ、黒も入れても3色だ。
ベージュや茶系のスーツもあるが、カジュアル度合いが高まる。
欧米では紺とグレーのビジネススーツが正統で、その色合いが濃ければ濃いほどフォーマルになる。
濃紺、濃グレーがもっとも格調が高い。
紺もグレーも色が薄く明るくなるごとにカジュアル度合いが増す。
チャコールグレーがもっともフォーマルで、ミディアムグレー、ライトグレーになるごとにカジュアルになる。
また無地がもっともフォーマルで、ストライプやチェック柄になるとカジュアル度合いが増す。
これは紺も同じだ。
欧米だとチャコールグレーのスーツがもっともフォーマルで格調高いとされており、紺よりも重視されている。
しかし、個人的にいえば日本人がチャコールグレーのスーツを着るとどうしてもモサっと見えるので、日本人には紺の方が似合うのではないかと思う。
で、就活に戻ると、就活の面接というのは就活生にとってはフォーマルな場なので、(本来は黒一択という状況はおかしいし奇異だが、百歩譲って)黒無地スーツを着用することはそれほどおかしな話でもない。
本来ならチャコールグレーか濃紺を着用すべきだと思うが、黒という選択肢があっても仕方がないかなとも思う。
しかし、フォーマルな場である就活にベージュや茶系のスーツを着てくる学生がいたら、それはおかしな話であり、それこそドレスコードに厳格な欧米社会なら即座にダメ出しをされてしまう。
ましてやカジュアルスタイルで来るというのは、会社指定が無い限りは、「TPOを理解できない」と会社側から判断されてもおかしくない。
日本人や日本社会を批判する人にありがちなことだが、欧米を理想郷のように崇拝していることが多い。
じゃあ、欧米男性のスーツ姿はそれほど個性的なのかという話になる。
オシャレ着としてのスーツは除外して一般的ビジネスマンがスーツを着用する際はかなり没個性である。
チャコールグレーか濃紺、あとは白いシャツに無地か小紋柄のネクタイ。
カラーシャツや柄(ストライプ、チェック)シャツも着用することはあるが、フォーマルに近い場では白いシャツである。
日本人が好んで締めるレジメンタルストライプ柄のネクタイはフォーマルな場には合わない。
重要な会議などでは無地か小紋柄である。
以前、鎌倉シャツのニューヨーク店出店の際にも話題となったが、ワイシャツの左胸にポケットがあることは欧米では受け入れられない。
日本人からするとペンもさせるし、小物や小銭も入れられるから便利で機能的だと思うのだが、欧米人からするとそれはタブーに近い。
なぜなら、ワイシャツは元来下着から発展したものだから、下着にポケットがあるのはおかしいというのが彼らの理屈だ。
またポケットがあるとワーキングテイストが強くなるからカジュアル度合いが強まる。そのため、フォーマルさが求められるときに胸ポケットのあるシャツは着用しない。
これほど細々とした決まりがあり、エリートビジネスマンになればなるほどこれらを遵守している。
左胸にポケットがあるくらいのことでさえアメリカの男性ビジネスマンには受け入れられないということで、それほどに規制が強いともいえる。
就活生とは離れるが、日本の一般サラリーマンの方がはるかにスーツの着こなしは自由度が高い。かっこいいかどうかは別として。
胸ポケットのあるワイシャツを着ても叱られることもないし、役員会議みたいなフォーマルさが求められる場でもベージュや茶系、ライトグレーの柄入りスーツを着ていても叱責されることもない。
スーツに白い靴下を合わせていても注意されることもない。
欧米男性の方がスーツに対する固定概念が強く自由度が少ない。
就活生か黒、紺、たまにチャコールグレーのスーツを一様に着用しているのは、それが彼らにとってはフォーマルな場に臨むからであり、そこに悪目立ちするような「個性的な着こなしやコーディネイト」は必要ない。
フォーマルな場に臨む欧米のホワイトカラービジネスマンが個性的な着こなしをしているのを見たことがあるのだろうか?
サミットやG7会議で、濃紺・濃グレー以外のスーツを着用している男性政治家を見たことがあるだろうか。
もし、欧米ビジネスマンの方が多様に見えるとするなら、それは人種の多さによる、髪色、皮膚の色、瞳の色のバリエーションが多いからだろう。
画一的な濃グレー、紺のスーツを着るからこそ、その多様性が際立つのである。
就活生のスーツ姿を指して「個性がない」という批判は的外れだといえる。
スーツというのは本来そういう画一的な性格が強い衣服なのだから。
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