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南充浩 オフィシャルブログ

ビジネス規模のブランドになるために必要な変化

2017年1月13日 考察 0

 ある販売代行会社の社長に指摘されて「ハッ」としたことがあった。
ハッとしてグーではない。

昨今、工場が、下請け脱却を目的に自社ブランド製品を開発することが増えた。
筆者が事務局の一員をさせてもらっている販売会「テキスタイル・マルシェ」でも、オリジナルの製品を展示販売する参加者が増えた。

以前から話題に上らせている、独立系デザイナーズブランドにも通じる部分があるのだが、そういうブランドが実際に百貨店やファッションビルなどでポップアップショップを行って、ある程度の売上高が稼げるようになるには相当の苦労と訓練が必要になる。

テキスタイル・マルシェでも初回出店からある程度の売上高を稼げる企業は本当に稀である。
初回はほとんどが苦戦する。

そりゃ百貨店の店頭で販売するわけで、工場で製造加工しているのとも、ルート営業をやっているのとも勝手が違う。
苦戦にめげず、工夫を凝らしているうちに、販売という作業にも慣れてきて徐々に売れ出す。

調子をつかむとそれこそ1日に何万円も売れるようになる。

これはおそらくテキスタイル・マルシェに限らず、他の商業施設でのポップアップショップも同じだろう。
デザイナーズブランドも同じだと思う。

特に特定の人、デザイナーだったり、社長だったり、工場長だったりが店頭に立つと爆発的に売れるという状況がやってくることがある。
最初はまぐれかとも思うが、いつもその「特定の人」が立つと売上高が高いということが続くようになると、これはもう本物だ。

その「特定の人」はそれなりの販売スキルを身に付けることができたと考えて良いだろう。

いわゆる、製造加工業者やデザイナーズブランドがここまで来ることはなかなか難しく、一つのレベルに達したと考えて間違いはない。

ハッとしてグーハッとさせられたのは、販売代行会社の社長に

「その段階ではまだ不完全ですよ」と指摘されたからだ。

その人の指摘はこうだ。

「特定の人が立たないと売れないというブランドは、ブランドビジネスとしては未完成だということです。なぜなら、そのブランドが売れている原因は商品の良し悪しよりも、特定の人の人気によるところが大きいからです」

とのことだ。

これはその通りだ。

そして、こうも続けられた。

「もし、仮にそのブランドが年間3億円とか5億円規模の売上高を目指したいなら、特定の人が売り場に立たないと売れないという状況では達成は不可能です。1年365日休まずにその特定の人が販売し続けなくてははりませんが、そんなことは物理的に不可能です。ですから、ある程度の販売技量を持った人が売れば誰でもがある程度の売上高を稼げる状態にするのが理想です」

と。

これは本当にその通りで、特定の人が販売して年間何千万円か稼げる規模をずっと続けるなら、それはそれで一つの企業スタイルである。そういう活動があっても良い。

しかし、年間売上高3億円とかを目指すなら、ある程度の人数で手分けして販売活動をしないと無理である。
例えばどこかに常設店を抱えながら、ポップアップショップも毎月行うとか、そういう多正面作戦を余儀なくされる。

特定の人=エースは一人しかいない。
エースに2つとか3つの売り場すべてを任せていたらそれこそエースは過労死してしまう。

じゃあ、特定の人ではなくてもある程度の売上高が稼げるブランドに変化させる必要がある。
ここを脱皮できれば、いわゆる「組織」になり、企業ブランドになることができる。

だが、ここを脱皮できないデザイナー、工場は多い。

過去18年間見てきて、ここを脱皮できたのは感覚的に1割くらいではないかと感じる。

くどいようだが繰り返すと、「特定の人」が売り場に立てばバカ売れするようになるまでに達するのも相当なことであることは間違いない。

けれど、ブランドビジネスをやりたいのであれば、そこをさらに越える必要がある。
それをできたデザイナーや工場は本当に数えるほどしかない。それほどに難易度が高い。

今回こんなことをわざわざ書いたのは、ある程度の売上高を稼げる工場やデザイナーはいくつか現れ始めた。そこで満足するのも良しだが、もし、さらなる上を目指したいのであれば、もう一段階変わる必要があるということを考えてもらいたかったからである。

それには商品のデザインのやり方、商品の企画のやり方をも変える作業が伴う。かなりの難業になる。

このブログはデザイナーやら製造加工業者が読んでくださっていることが多いと感じる。
さらなる上を目指すのであれば、もう一段階変わる覚悟が必要になってくる。

なんだか死にかけのジジイの繰り言みたいになってしまった(笑)。





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