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南充浩 オフィシャルブログ

「モノ」イベントのブラックフライデーは、「コト」イベントのハロウィンのようには定着しない

2016年12月1日 考察 0

 何とか消費を煽ろうと小売業界は新しい販促イベントの導入に躍起である。
必死過ぎて見苦しいとも感じてしまうのだが、11月末にアメリカの「ブラックフライデー」が今年初めて大々的に導入された。

このブラックは黒字を意味するそうだが、あんな投げ売り価格で販売して黒字になるのだろうかと少々疑問を感じる。

それはともかく、このブラックフライデーが日本に根付くのは少々難しいのではないかと思う。

日本では戦後長らく、12月のクリスマス商戦、1月の正月商戦が主力だった。
年末年始は本当に物入りで、そこに11月末にセールが加わったとしても、クリスマス・正月にプラスオンされるとは考えにくい。

11月末にクリスマス用の商品を買っておいて、12月での買い物を控えるのではないか。
また正月向けの商品を早々と購入して正月の買い物を控えるのではないか。

年間の買い物金額は単純に1・5倍とか2倍にならず、1・1倍とか1・2倍程度くらいしか増えないのではないかと思う。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161129-00000002-pseven-bus_all

週刊ポストの記事だが、

それよりも懸念されるのが、セール効果の分散化である。日本ではこれからクリスマス、歳末大売り出し、そして新春の初売りとセールと続く。事実、今回のブラックフライデーで買い物をした人からは、こんな声も聞こえてきた。

「ちょうど子供が欲しいと言っていた玩具が安く売っていたので、クリスマスプレゼントにする目的で早めに買って自宅に隠してあります」(30代女性)

 小売業界が目論むブラックフライデーが、年末年始のセール本番に向けた“前哨戦”のつもりであっても、消費者の消費意欲が続いてゆくとは限らないのだ。

と指摘しており、その通りだと納得できる。
さらに続けて

「わざわざブラックフライデーを取り入れなくても年末セールはどんどん前倒しの傾向にありますし、衣料品をはじめ小売業界の『在庫一掃セール』的な意味合いは消費者も敏感に気付いています。

 だから、たとえ『期間限定、早い者勝ち』などと煽ったからといって、慌てて安物に飛びつく消費者は少なくなりましたし、いまはリアル店舗よりもネットで買ったほうが安い場合も多い。消費構造が大きく変化している中で、マスを相手に大量の商品を安売りでさばけば必ず売り上げに結びつく時代ではありません」

とも指摘しており、記事ではネット通販の隆盛を考慮して、サイバーマンデーを導入すべきではないかと示唆するが、そのサイバーマンデーに関しても筆者は疑問を感じる。

本当に月曜日だけならある程度の「期間限定価格」効果があると思うが、GAPのように「好評なので火曜日まで延長します」なんてことをやっていては消費者に価格不振を植え付けるだけに終わってしまう。

GAPのことだから、どうせそのうち、「サイバーマンデーを水曜日まで延長」とか「サイバーマンデー週間」なんてことをなし崩し的に行うのではないかと個人的には見ている。

反対に上手く定着したのがハロウィンである。
路上での乱痴気騒ぎはあまりに見苦しいので厳しく取り締まるべきだと思うが、販促イベントとしてはかなり成功したといえる。
バレンタインを上回る市場規模に成長している。

バレンタインは本来の意義は別として日本では「恋愛絡みのイベント」として認識されている。
ということは、恋愛に何らか関係のある人しか積極的に参加できないということになりハードルが高い。

一方、ハロウィンは恋愛は関係なく、老若男女誰でも参加できる。
別に仮装をせずとも友達の家に大勢で集まってホームパーティーをやったって良い。

だからハロウィンがバレンタインを上回ることは何の不思議でもない。

小売・流通業界のアホなエライさんは、「ハロウィンが定着したからブラックフライデーも」なんて安直に考えたのだと思うが、ハロウィンとブラックフライデーは根本的に異なるイベントである。

ハロウィンは、仮装を媒介として、みんなとワイワイと楽しむ(見苦しい路上での乱痴気騒ぎも含めて)イベントであり、いわば「コト」が大前提である。
仮装の上手い下手を競ったり、仮装の衣装の見事さだとか、仮装衣装の素材のクオリティを競ったりするイベントではない。
仮装はあくまでも味付け(仮装しなくても良い)で、多くの人が支持しているのは、大勢でワイワイと楽しむという「コト」の部分である。

一方、ブラックフライデーにしろ、サイバーマンデーにしろ、その本質は「モノの安売り」である。
日本でいうなら、歳末大売出しとか新春バーゲンと同じである。

「安くなったモノを買う」というモノ本位のイベントである。

現代日本において、モノはすでに溢れている。
洋服もおもちゃも家電もスマホもそれほど切実に欲しいとは誰も思っていない。

洋服でいうなら、ストライプインターナショナルのような会社が年がら年中投げ売りをやっている。
それにタンス在庫も抱えており、多くの消費者は1枚も洋服を買い足すことなく1年間くらいは過ごせる。

そこに11月末に新たに安売りイベントを仕掛けたところで、12月、1月商戦を先食いするだけに終わるのが関の山である。

そこをキチンと区別して考えないと、安直な発想でのブラックフライデー導入は単にプロパー販売時期をさらに短くして流通各社が自分で自分の首を絞める結果に終わるのではないか。



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