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南充浩 オフィシャルブログ

ネットの発達で逆に追い詰められる小規模ブランド

2016年6月1日 ネット通販 0

 手作り作家やクラフトっぽい小規模ブランドとも多少の交流があるのだが、彼らの状況はますます厳しくなっていると感じる。
いつも書いているように大資本を持った企業の圧倒的物量作戦もさることながら、彼らを脅かす存在はそれだけではない。
実は小資本、特に個人も彼らを脅かしている。

彼らを脅かしているのは、元プロだった奥様達である。
結婚前にはプロのデザイナーや作家だった女性が、結婚後や出産後、家庭に入ることがある。
出産後もプロとして活動を続ける方もおられるが、家庭に入ってプロとしての活動をやめてしまう人もいる。

手作り作家や小規模ブランドを脅かすのは後者である。

台東デザイナーズビレッジの鈴木村長も自身のブログで言及されたことがあるが、こういう元プロの主婦が、趣味として創作活動を行い、それをネット販売する。
昨今ではそういうサイトも増えた。

プロなら材料などの原価に加えて自身の手間賃や利益を乗せて販売価格を設定する。
一つの目安としては原価率30%だろうか。
70%は粗利益ということになるが、すべてが懐に入る純利益ではない。
そこからさまざまな経費が引かれる。

原価が3000円だったとしたら通常の場合は販売価格は1万円くらいになるということである。

ところが、元プロたちは利益をほとんど乗せずに格安価格で販売する。
その理由は、自身が儲けなくても配偶者が儲けるからである。
最悪の場合は原価さえ回収できればそれで良いということになる。

原価3000円の商品を3000円で売るようなことも理論上では可能である。
ここまで極端ではなくても原価3000円の商品を4000円くらいで販売している元プロは普通に存在する。

デザインや色・柄の好き嫌いはあるので一概に評価を定めることは難しいが、同じ原価3000円の商品が片や1万円、片や4000円で販売されていたら、多くの消費者の目には4000円の商品がお買い得に見える。
原価を提示して販売していないが、同等の原価ならだいたい同じような見栄え(デザインや色・柄は当然異なる)がする。

見栄えがほとんど同じで販売価格差が6000円もあるならほとんどの人は4000円の商品を買う。
これこそ「コスパが高い」商品だからだ。

「安い商品は誰かが泣いている」なんていう陳腐なイシキタカイ系の理屈もこれには通用しない。
なぜなら作っているのは元プロ自身(いわゆる自身の手作業)で、泣いているどころか売上ノルマも赤字も考慮することなく、趣味丸出しの商品が作れて満面の笑顔である。

そして当然のことだが、今後、こういう元プロ女性はさらに増えると考えられる。
なぜなら、毎年結婚・出産する人がいるからである。
毎年、現プロたちは結婚・出産する。何割かがプロを続けるとしても何割かは確実に引退する。
そして、家事・育児・パート勤務をこなしながら、趣味の手作り商品を作る。

以前なら作っただけで販売するルートがなく、せいぜい知り合いやご近所さんに譲ったり配ったりする程度だったが、今ではネット通販の発達がその活動を助ける。
そういう手作り商品専門の販売サイトがいくつもある。

そういうサイトに買いに来る客だから、専門店や百貨店のように納期遅れに対してクレームをいうわけではない。
趣味の活動で1か月に20個しか作れなくても、それをせかすこともなく待っていてくれる。
何かのアクシデントで10個しか作れなくてもそれをきちんと説明できれば許容してもらえる。

供給が不安定ではあるが、客としては、原価率80%とか90%の商品を格安で手に入れられるのだからお買い得感がある。

実は同様の問題点をセメントプロデュースデザインの金谷社長も指摘されたことがある。

じゃあこういう元プロたちを駆逐することは可能かと問われれば不可能である。
それこそ創作・経済活動の自由であり、なんら違法行為はない。

手作り作家や小規模ブランドは自衛するほかないのである。
作ることは放っておいてもやる人種だから、それよりも自衛のためには売り方、伝え方を工夫する必要がある。彼らの苦手な営業活動だ。
営業活動を強化できない手作り作家や小規模ブランドは、いずれ、増え続ける元プロの格安商品に駆逐される可能性も高い。

ネットの発達によって、小資本企業でも活躍できるようになるといわれてたが、「元プロの主婦」という究極の小資本の登場で、営業の下手くそな手作り作家や小規模ブランドはさらに苦境に陥っているというのは、なかなか皮肉な結末だったというほかはない。




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