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南充浩 オフィシャルブログ

縮小するGMS各社

2016年5月27日 企業研究 0

 GMS(大型スーパー)が本格的に縮小の時代に突入した。

ユニー傘下の「アピタ」「ピアゴ」、閉鎖は東海以外の店舗
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160524-00000080-san-bus_all

コンビニエンスストア大手のファミリーマートと流通大手ユニーグループ・ホールディングスが9月に経営統合して発足する「ユニー・ファミリーマートホールディングス」がユニー傘下の総合スーパー(GMS)のうち、東海地区以外の店舗を閉鎖対象として検討していることが23日、分かった。同社は今後5年程度でGMSの2割強にあたる約50店の閉鎖を決めているが、具体的な地域について明らかになったのは初めて。強みがある東海地区を中心に地域密着の店作りで再建を目指す。

ユニーは、アピタやピアゴのブランドで5月16日現在で20府県に201店を展開しているが、約4割の84店が本社がある愛知県に集中している。

不採算店の閉鎖と並行して、平成31年春までの3年間で総額150億円かけて、東海地区を中心に売り上げ増や収益改善が見込める約60店の改装も進める。

とある。

ユニーは東海地方を拠点としており関西や関東での知名度は高くないが、イオン、イトーヨーカドーに次いで業界3位の規模を誇っている。
そのユニーが東海地区以外の50店舗をすべて閉鎖するというからかなりの大事件である。
例えば近年、関西にもアピタが何軒かオープンしたがあれもすべて閉鎖になるということである。

イトーヨーカドーは今年3月に20店舗の閉鎖をすでに打ち出している。
先ごろ発売された日経ビジネスでも触れられているようにイトーヨーカドー単体では売上高は減少の一途をたどっているし、営業損益は赤字に転落している。

イオンだって大減益が続いているが、なぜか閉鎖は打ち出さず逆に出店を増やしている。
あまり報じられないがこの3年位で出店したイオンモールはあまり芳しいうわさを聞かない。
鳴り物入りでオープンした岡山駅前店もかなり苦戦傾向にあると業界内では言われている。また先ごろオープンした大阪・堺の鉄砲町のイオンモールは、北花田のイオンモールと5キロほどしか離れていない上に背後が海なので商圏人口が著しく少ない。だから業界内ではあの立地で成功するとは思えないという人が多い。

GMSの苦戦の要因はさまざまあるが、一つには衣料品の苦戦が挙げられる。
食料品にはコンビニや百貨店と比べると価格メリットがあって利用者はそれほど減っていない。
それに人間は毎日食べなくては死んでしまうので、食料品に関していえば毎日必ず売れる。
ただし、単価は安いし、利益率も低い。

だからバブル崩壊直後くらいまでは、GMS各社は衣料品で利益を稼いでいた。

友人のOEM業者の言葉を借りれば「衣料品はGMSのドル箱」だったといえる。

しかし、今となっては、イオンモールやアリオ、アピタにテナント入店している衣料品店で買うことはあっても、わざわざイオンやイトーヨーカドー、ユニーの平場で衣料品を買う人はそれほど多くない。
せいぜい下着や靴下、寝間着類くらいではないか。
少しでもファッション要素のある商品は低価格品といえどもユニクロやしまむらで買う人がほとんどではないか。

だから今の若い人たちは信じられないかもしれないが、GMS各社の幹部は衣料品にそれなりのプライドを持っている。たとえば日経ビジネスの5月9日号の12ページにも

衣料品店からスタートしたヨーカ堂は、衣料品が圧倒的に強くかつては「衣料のヨーカ堂」と呼ばれた。

と書かれてあり、これは事実なのである。
今の40代前半より下の世代には信じられないことだろう。

ここまでのプライドではないにせよ他のGMSも実は似たり寄ったりである。

彼らの自己像と一般消費者が描くGMS像がまったく乖離してしまっているのが現状なのだが、それを各社の幹部は受け入れていない。だからイトーヨーカドーは起死回生を狙ってゴルチエや高田賢三とコラボをするのである。ゴルチエや高田賢三からすれば在庫リスクを抱えないで済むばかりか、多額の契約金がもらえるからビジネスとしては美味しい。

だが、このコラボは失敗に終わるだろう。
ゴルチエに関してはヨーカドー側は「大成功だった」という大本営発表を行っているが、実際の売り場ではやはり期末には投げ売られている。
投げ売られたことでブランドイメージの低下を招いたとみるべきだろう。

おそらく高田賢三コラボも期末には投げ売られることになるだろう。

ユニクロのルメールも同じだ。
すでにイージーパンツは1290円にまで値下がりしている。

期末に投げ売られることがわかっていれば期初にだれも定価では買わない。

GMSは本来は実用衣料を販売しているのだが、下着や靴下などの消耗品を除いて、消費者が求めている衣料品は価格の高低は関係なく、ファッション用品の要素が強まっている。
例えば白い無地Tシャツのような定番品はファッション用品でもある程度の積み上げが必要だ。

それこそ彼らの言う「品切れは機会ロス」を起こすからだ。

しかし、ゴルチエとのコラボ商品を積み上げる必要があったのだろうか。
デザインの好き嫌いはともかくとして、到底定番とは言えないデザイン性があった。
あんな商品を機会ロスを恐れるがあまり、大量の数量を生産する必要があったのだろうか。筆者はなかったと考える。

これはユニクロにも共通する病根である。

定番の無地Tシャツやら無地セーターはさておき、ルメールや+Jを積み上げる必要はまるでない。
少量生産(とは言ってもユニクロなので最低でも10万枚くらいは必要なのだが)でして定価で売り切れ御免にすべきなのである。
ヨーカドーのゴルチエも同じだ。

おそらくヨーカドーは高田賢三とのコラボでも同じ失敗を繰り返すだろう。

定番品と嗜好品で生産数量にメリハリをつけずに「機会ロスをなくすこと」を第一義にすべての商品を大量に生産するというやり方はもう通用しない。
これはユニクロにだって言えることである。

この考え方を墨守している限り、GMS各社の衣料品が復活することはありえない。
凋落は止まらないだろうし、今後も撤退と閉鎖が相次ぐだろう。

GMSの大型店が撤退した後は広大な廃墟があちこちに誕生することになる。

その再利用法を考えないと地域の治安が悪化することにもなりかねない。



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