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南充浩 オフィシャルブログ

減った客数はどこへ流れたのか?

2016年5月12日 考察 0

 先日「ユニクロが既存店客数を減らした分、どこがその客を吸収したのか?」という話題になったことがある。
他社の衣料品の商況を見ていても客数が爆発的に増えたところは見当たらない。
個人的に考えられることは2つである。もしほかにも思いつかれた方がおられたらご指摘いただきたい。

1、買うのをやめた
2、分散化した

である。

買うのをやめたという選択肢は相当ありそうだ。
ユニクロ都心店を見ていると、中高年客層が多いような気がする。
中高年客層は別にカジュアル服はそんなに必要ない。
スーツ勤務の企業が多いのだから、週のうち5日はスーツ、もしくはそれに類した洋服で一日の大半以上を過ごすことになる。帰宅してから着替えると言ったって、パジャマかホームウェアで十分だろう。
2組もカジュアルコーディネイトがあれば十分だ。

土日はカジュアルで過ごすとはいえ、2日間のためならそんなにたくさんのコーディネイトは必要ない。
休日用として4種類のコーディネイトがあれば十分ではないか。

となると、毎月洋服を買う必要性なんてない。
もし買ったとしても毎月1,2枚で十分に事足りる。
ユニクロが値上げしたから数か月買うのをやめてもまったく生活に支障は来さない。

もう一つの可能性として、各社に少数ずつ分散したとも考えられる。
例えば、ライトオンやアダストリアの各ブランド、しまむら、無印良品あたりに少しずつ分散したのではないか。
値段もテイストもユニクロとそう大きくは変わらない。
若年層ならジーユーやウィゴーが吸収したということもあるだろう。

このほかにネット通販に分散吸収されたという可能性も高いのではないか。

ゴールデンウィークの3連休に、ガンプラと撥水・防水リュックをネット上で探すことに明け暮れたのだが、たった数サイトまわっただけだが膨大な数のブランドと商品があることに改めて驚かされた。

撥水・防水リュックのことはまた別途書くとして、それにしても格安商品でネット上は溢れているし、見たことも聞いたこともないブランドも山のようにある。

商品スペックと値段と送料を見比べながら一番効率的な商材を選ぶ。
比較検討することに時間がかかるが、それもちょうど良い時間つぶしになった。

自分の周りを見ても、少人数で年間1億~4億円くらいのネットショップを運営している人が何人かいる。
主には衣料品を扱っており、値段も格安である場合が多い。

その商売が大きく何十億円とかに化けるようには思わないが、体調を崩さない限りは2~4人の生活費を稼ぐレベルのビジネスを長く続けることは可能だと見ている。

彼らのようなネット業者が全国にはそれこそ無数にいるのではないか。
何せ身の回りだけで数業者いるのだから。

そして好むと好まざるとにかかわらず、こういう小規模な低価格ネット販売業者と各社は競争を強いられているわけである。その競争に気付いているかどうかは別として。

以前、スナイデルの模倣で逮捕された業者があった。
しかし、このサイト自体はまだ運営を継続している。
逮捕されたときの報道では年商が約70億円だったとされている。
1枚1400円程度の服を売って70億円の年商を稼いでいたのだからある意味で大したものだといえる。

模倣するかどうかは別として、これから格安品をネットで販売してそれなりの売上高を稼ぐ企業はまだまだ出てくるだろう。
そして業界の参入障壁は限りなく低いから、異業種・他業種からの流入は後を絶たないだろう。

そんな状況だから漫然とネットショップを立ち上げただけでは完全に埋没してしまう。
ネット通販という業態は草創期ではなく、最早成熟期だととらえるべきだろう。
ネット対応に遅れていた繊維・アパレル業界のエライサンの中には、まだネット通販を草創期、創業期と捉えている人も見かけるが、状況認識が著しく甘いと言わざるを得ない。そういう企業がネット通販に乗り出したところで何の成果も得られずに撤退することになる。

消費者のタンスには収納しきれないほどの衣料品。
トレンドがそう大きく変わらないから買いなおす必要もない。

実店舗では商業施設過多であり、その商品は同質化している。
また無数に増殖したネット通販。
洋服の供給量は2013年で年間41億点と供給過剰であり、通説では10年前と比べると消費者の洋服の手持ち量は3倍に増えたといわれているから、需要は減ることはあっても増える要素はない。

ここに立脚してみると、洋服が売れる要素は非常に少ない。
ではどうやって売るか。業界の課題はそこにあるのではないか。




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