次の新しい芽は80年代ジーンズか?
2015年5月18日 未分類 0
今春のデニム微増について、「目新しさがない」ことを指摘した。
そして90年代前半から何度か起きたジーンズブームは常に「目新しさ」があった。
93年からのレーヨン、テンセル素材によるソフトジーンズブーム
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96年ごろからのビンテージジーンズブーム
↓
99年ごろからのローライズジーンズブーム
↓
2004年からの高額インポートジーンズブーム
↓
2008年からのスキニージーンズブーム
を順番に見ると、常に「目新しさ」があった。
レーヨン・テンセルという新素材による柔らかいジーンズがあり、
その反動として綿100%のヘビーオンスデニムを使ったビンテージジーンズブーム、
股上を浅くするというシルエットの一大変化をもたらしたローライズジーンズブーム、
高額インポートジーンズブームはその延長線上だったが、スキニージーンズは貼り付くような新しいシルエットを提案した。
で、今春のデニム復調にはこれらの「目新しさ」が一つとしてない。
先日、某ブランドの展示会で「現在、もっとも目新しいジーンズは何か?」という内容でデザイナーと雑談をした。
このデザイナーによると、10代後半~20代の若い層にとって80年代のジーンズが目新しく映っているという。
そういう層は古着屋で80年代ジーンズを購入しているとも。
古着屋を取材したわけではないからこれが事実かどうかはわからない。
仮に事実だったとすると、たしかに現状もっとも目新しいのは80年代ジーンズだという意見には納得できる。
80年代ジーンズの最大の特徴は、まずハイウエストである点だ。
ハイウエストに関して言えば、ローライズが登場するまでそれが標準だった。
しかし、一昨年あたりから徐々に新シルエットとしてハイウエストが登場しているから、それを見慣れ始めた若者にとっては、80年代のハイウエストジーンズは「目新しく」映るのだろう。
そして何よりも現在のジーンズと異なるのは、その使われているデニム生地である。
現在のジーンズはビンテージジーンズブームのころの流れを受けている。
太さが一定しない綿のムラ糸を使い、それを織って表面に凹凸感のあるデニム生地に仕上げる。
製品を穿きこんでいくと、ムラ糸であるため不均一に色が落ちる。
それを通常「タテ落ち」と呼ぶ。
ところが、80年代のジーンズに使われているデニム生地はタテ落ちしない。
なぜなら、使われている綿糸は均一であり、デニム生地の表面は凹凸感が少なく滑らかだからだ。
また、現在みられるような「ヒゲ」が濃く入った洗い加工もない。
ヒゲ加工が考案されたのもビンテージジーンズブームからであり、その前にはヒゲ加工なるものは存在していなかった。
均一で滑らかな表面感のデニムを全体的に均等に色落ちさせるのが80年代の洗い加工である。
ヒゲ加工ばかり見て育ってきた若い層にそれが新鮮に映るのも当然だといえる。
手持ちの商品画像がないので、1990円7月のブルータスのページから抜粋していくつか写真を掲載する。
ヒゲ加工のないハイウエストジーンズがどんな物なのかが、幾分イメージしやすくなるだろう。
ただ、このカラーページは少し変色しているので、そのあたりは割り引いてもらわねばならないが。
90年ということで、80年代後半の商品とそう大きくは変わらない。
(ヒゲのない洗い加工)
(ヘソの真下まである股上の深さ)
しかし、この号が発売されたのはちょうど25年前である。
四半世紀前である。
筆者は当時20歳だった。
25年前の商品を今の30代前半以下の層は見たことがない。
もちろん20代後半~30代前半の層は90年の商品を見ているが、0歳~10歳という幼さであるから、ほとんど記憶には残っていない。
筆者らオッサン世代にとっては、90年の商品なんて古臭くていくら流行しようと二度と着用したくないが、30代前半以下の層にとっては、初めて見る目新しい商品だといえる。
90年ですらこうなのだから80年代の商品ならなおさらである。
80年代の商品なら30代後半でも目新しく映るだろう。
もし、ブームを起こせるほど目新しいジーンズということになると、現時点では80年代ジーンズではないだろうか。
これを現代風にシルエットや素材をアレンジしてみてはどうか。
とくに素材はストレッチ混にすべきだろう。それによって可動域が広がるからシルエットも変化させられる。
素材の表面感にしても凹凸感をなくしてみてはどうか?
およそ20年ぶりにムラ糸とタテ落ち、ヒゲ加工の呪縛から逃れてみてはどうだろうか?
上手く行くと、今後20年先までのエポックメイキングになるかもしれない。
ジーンズ専業メーカーに期待したいところだが、現状を見るとそれは無理だろう。
これに取り組む先があるとすると、それはジーンズ専業メーカーではないだろう。