物が同質化したなら売り方で差を付けるしかない
2015年4月2日 未分類 0
先日、筆者より8歳くらい年上のベテラン企画マンに話を伺う機会があった。
この方は、大手アパレルで企画、デザインを担当し、その後独立して、何社かのデザインを外注業者として担当した。地方のアパレルではなく、東京でずっと仕事をされてきた。
OEM/ODM業者の台頭と、各社の商品の同質化をリアルタイムで見てこられたそうだ。
20数年前までは、大手アパレル各社は自社内のデザイナーが商品をデザインすることがほとんどだった。
ところが、あるときに営業担当が、「こんな商品はどうかな?」とサンプルを持ってきたという。
これは営業担当が他社の売れ筋を見て、外注業者に作らせた物だった。
自分たちの企画ラインとは別ルートで出てきた商品を見て、
「それはそれで良いのではないか」
そんな感じだったそうだ。
その後、そういう外注業者が企画したサンプルの型数がドンドンと増えてきて、そのうちに社内の企画担当者・デザイナーは外注企画商品をセレクトするという作業がメインになっていった。
これが15年ほど前のことだ。
すでに2000年前後には、「大手アパレルの企画担当者・デザイナーというのはセレクターだ」と素材メーカーが口をそろえていたことを記憶している。
さて、先ほどのベテランデザイナーの話に戻る。
外注業者の商品は、最初のうちは、他社の売れ筋をモデルにしながらも独自にアレンジを加えた物が主体だったが、2000年を越えるあたりから、他社の売れ筋そのままの商品がドンドンと増えてきた。
今では他社売れ筋の完全コピー商品が主流になっている。
見た目がほとんど同じ。
素材もほとんど同じ。まれに他社売れ筋と同じ素材まで使用している場合もある。
こうなると、行きつく先は価格競争しかありえない。
同質の物同士なら価格の安い方を人は買う。
この行為に目くじらを立てて憎悪しても仕方がない。それが自然の摂理だからだ。
例えばコカコーラの350ミリリットル缶があったとして、
一方の自動販売機では130円で売られていて、もう一方の自動販売機では100円で売られていたとする。
この2つの自動販売機の距離が近かったら、ほとんどの人は100円の自動販売機で買う。
現に食品スーパーだと500ミリリットルのペットボトルが80~100円くらいで売られている。
正規の自動販売機なら350ミリが130円だ。
近所に食品スーパーがあるならほとんどの人はそちらで買うだろう。
急いでいてレジで並べない人以外は。
某大手アパレルの役員は「ユニクロでバカ売れしたあの商品と同じ素材をくれ」というし、そのアパレルの直営店の販売員は「ユニクロでバカ売れしたあの商品と同じ素材を使ってます」と商品説明をする。
役員も販売員も何を考えているのかと呆れるが、ユニクロと同じ素材で同じようなデザインの商品を作ったのなら、価格の安いユニクロで買うにきまっている。
物が同質化すると価格競争に行きつく。
価格競争を避けるには、同質化しない物を作るか、
売る側に価値を持ってもらうか、のどちらかしかない。
洋服の場合、どうしても似たようなデザインにならざるを得ない部分がある。
ならば、売る側が価値を上げるほかない。
先ほどのコカコーラの例でいうなら、130円ででも買いたくなるような自動販売機を考えるべきだろう。
ユニクロと同じ素材を使って同じようなデザインの洋服を売っているなら、
その店で買うことに価値がある
もしくは、その店の販売員や店長から買うことに価値がある
という付加価値を与えることができればユニクロ以上の価格で販売することができる。
そしてそれがいわゆる「ブランディング」ということになる。
作る物が同質化しているなら、売り方で差を付けるしかない。
それができないアパレルは価格競争で消耗戦を強いられ続けるだけであろう